「うっそぉ」
青組さんのスケジュールと自分のスケジュールとを付き合わせていた赤組さんは思わず声をあげていたなり。確かに、青組さんがドラマに入ってしまえば、オフは少なくなるだろうとは思っていたなりが、代わりに自分の方のドラマも終わることだし、そうすればわりと自由もきくなりから、どうにか調整もつくだろうと思われたなりに・・・・。まず、ここ2ヶ月中に二人のオフが重なると言うことはなかったなり。
「って言うか、労働基準監督庁に訴えるぞってかんじ?」
赤組さんのそのつぶやきが、実は半ば本気であるところがちょっと悲しかったなり。
今さら労働者の権利がどうの、ってことを人気商売の芸能人の身で言う気もなかったなりが、青組さんのスケジュールはとんでもないことになっていて、オフらしいオフがまるでないままに組まれていたなり。確かに、平常でもレギュラー番組を多く持っている青組さんのスケジュールは、赤組さんから見れば結構タイトなものだったなりから、これにドラマが入れば仕方ないのかもしれないなりけど。
青組さんのドラマがすめばすぐに夏のコンサート!どう考えても二人のオフの重なる日、つまりホワイトデーでげんまんしたデートの日は、半年以上先になってしまいそうな状態だったなり。
「まぁ、すぐに実現するとは思ってなかったけど」
実現しそうになければ、実現させる。赤組さん、誰もが認める日本一の男は、実行力も日本一であったなり。
三月×日木曜日。
その日のスマスマの収録は何故かいつもよりもスムーズに進んでいたなり。残りの収録は「カトリックス」と「上京物語」と言うことなので、お兄ちゃんズはそこでスタジオから解放されることになったなり。いつもだったら、この後にも雑誌のインタビューが入っていたりということなりに、全くスケジュール帳は真っ白で。
「中居、今日はどうやって来た?」
赤組さんにに訊かれて、青組さんは帰りの支度をしながら答えたなり。
「ん?マネージャーの車だけど」
「だったらさ、俺、自分の車で来てるし、一緒に帰ろ?」
「ねぇ、帰り、ちょっとデートしない?」
赤組さんはさり気なさを装って尋ねたなりが、青組さんはその一言で赤組さんのたくらみに気付いてしまったなり。後半に下3人のコント等ばかりが固まりすぎだとは思ったなりが・・・・道理で今日のあがりが不自然に早いはずだったなり。
「何か変だ、変だって思ったら、おまえ・・・・裏で手をまわしやがったな」
「裏で手って・・・・だって、まともに待ってたらデートできそうなのって、あと半年以上先なんだよ?」
不服そうな顔で、赤組さんは青組さんをちょっと上目遣いに見つめたなり。
「ホワイトデーの約束の分・・・・しよ?」
「・・・・わかった。これで、約束分はチャラだかんな。やり直しはなしだぞ?」
言いながらも、でもきっとまた本当にオフが重なったときには色々と理由を付けて付き合わされることになるんだろう・・・・青組さんは確信にも似た予感を覚えたなり(笑)
「で、どこいくの?こんな時間だけど」
確かに収録が早めに終わったといっても、彼らにとって早めと言うだけで、一般的にはもうそんなに早い時間ではなかったなり。青組さんは赤組さんに尋ねたなり。
「ん、夜景でも見に行こうと思って・・・・」
「夜景・・・・?こんな時間に?明日も仕事あるし、そんな遠くには行けねぇだろ?」
「だからちゃんと都内にしました」
「都内?」
展望台なんかはとうにしまっているその時間帯、赤組さんと青組さんを乗せた自動車は都内も都内、某所に立地する高層ホテルへと辿り着いたなり。
「おいっ、いきなりそれはねぇんじゃないの?やっぱりデートには、順序ってもんがあるんじゃねぇ?」
悪戯っ子のようににやりと笑って言った青組さんに、赤組さんも調子を合わせたなり。
「順序って言うと・・・・?」
「例えば公園とかに行ってさぁ・・・・」
「えーっ、公園なのっ?中居ってばだいたーん!!そういうとこでするのが好き?」
「大胆って・・・・?・・・・。おまえ何考えてんの?そう言うことしか考えていないわけ?」
「あれ?なんのことかなぁ?中居くんのH〜!」
そこで空とぼける赤組さんに青組さんはあからさまな溜息をついたなり。ここで、色々言ったところで、赤組さんのペースに引きずり込まれるのは明白だったなり。だから、ここは赤組さんの話をなかったことにして、助手席の背もたれに身を預けた青組さんなり。
先に赤組さんがフロントで部屋をとり、部屋を確認した後駐車場で待つ青組さんを迎えにもう一度降りたなり。馬鹿馬鹿しい手間をかけている、という気がしないでもなかったなりが、二人揃うと何故か「あのSMAPの」としての認識度が上がるようで、そんな二人が揃ってホテルに現れたなどとなれば、下手をすれば大騒ぎになりかねなかったなり。
「何だか、密会!!って感じ」
青組さんがぽつりと言い、
「あ、でもデートなんだから、全くはずれじゃないかも?」
赤組さんは笑ったなり。
最上階に近いその部屋の、壁の一面すべてを使った大きな窓からは、不夜の街東京の夜景を眼下にすることが出来たなり。部屋の灯りを落として、もっともっとよく見えるようにすると
「うわ・・・・」
それまで減らず口ばかり叩いていた青組さんは、息を呑んで、夜景に見入っていたなり。それを満足そうに赤組さんは見つめたなり。
「どう?」
「すっげぇ」
青組さんは言うと、
「何か吸い込まれそう」
と呟いたなり。
しばらく夜景に見入っていた青組さんは、疲れていたのかそのままベッドに倒れ込むようにして眠ってしまったなり。その寝顔を見つめながら、
「ホワイトデーの約束は、お互いのオフが重なったらだから・・・・」
と、次回、オフの重なる日の予定を今から立てようとする赤組さんだったなり。
ホテルは下宿屋よりもずっと青組さんのドラマの現場に近くて。青組さんはいつもよりゆっくり眠れるはずだったなり。
・・・・ おまけ ・・・・
「なぁ、木村、おまえ女の子口説くとき、あぁいう処に連れてくわけ?」
ある日、好奇心で目をきらきらと輝かせて青組さんが訊いたなり。その様子に軽い頭痛を覚えながら、
「違う」
赤組さんは答えたなり。
「都内で綺麗な夜景を見られる処、って吾郎に訊いたら、1番に教えてくれたのがあのホテルの客室だったの!!」
「・・・・吾郎ってば・・・・」
そして、その日桃組さん伝説に新たな1ページが書き加えられたなり(笑)