××下宿屋木村 鬼は外××
何だか、気になってしかたなかったなり。何かを忘れているような・・・・。
楽屋に差し入れとして届けられた、大豆入りの袋菓子を見たとき、ようやく気付いたなり。
「そうか、明日って、節分だったんだ!」
「そっかぁ!」
赤組さんが言い、青組さんが頷いたなり。それで、ふたりとも、ずっと、同じことが引っかかっていたと気付いたなり。
「やっぱ、気になってた?」
「気になってるっていうか、何か、すっきりしなかったんだよな」
二人して、盛り上がるお兄ちゃんSだったなり。
その日の収録は、どう考えてもその日のうちには終わりそうになかったけれど、
「どうせ、明日は忙しいんだろ?だったら、今日帰ってからなら、日付も変わってるだろうし?家帰ってから、やってもいいと思わねぇ?」
赤組さんが言ったなり。
「おまえ、イベント好きだよなぁ」
青組さんはちょっと苦笑して見せたなりが、
「やりたくねぇ?」
赤組さんに尋ねられて、
「いや、やろうぜ!」
と、即答していたなり。こういう、どこかガキ臭いことになると、あの人たちって変に盛り上がるんだよねぇ・・・・という、弟組からの秘かな声にも気付かずに、お兄ちゃんSは、家に帰ってからの豆まきに向けて突き進んだなり。
このふたりが、すっ飛ばしていると、現場にも妙な緊張感が生まれるなり。
そのおかげで、収録は確かに日付が変わっても続けられたなりが、最初に予想していたよりは、ずっと早い時間に終了したなり。ふたりとも、荷物を手にすると、さっさと楽屋を後にしたなり。
帰りは、二人で、赤組さんの車だったなり。
「ところでさぁ」
青組さんが言ったなり。
「うち、大豆なんてあったっけ?」
「大豆ねぇ・・・・。なかった気がする。大豆以外の豆で、代わりって駄目かな?」
「大豆以外って、何があるの?」
「・・・・ねぇわ。そもそも、豆らしいものって冷蔵庫の納豆くらい?」
「・・・・俺、納豆まきは遠慮しとくから」
「あのなぁ、本気の訳ねぇだろ?あ、あとピスタチオ、が戸棚にあったよな、あれ代わりに出来ねぇかな?」
「ピスタチオ?やばいんじゃねぇ?どっかの県で発ガン性、とか言ってたじゃん?さっさと処分しとけよ」
「だから、処分もかねてさ、まずいかなぁ」
「んなもん撒いて、もしも下にいた人に当たったらどうすんの?怪我するよ?あれ」
「こんな時間帯に下にいるヤツなんて、せいぜい写真誌くらいなもんだって」
「って、わけにゃいかねーべ」
青組さんは、気付いて、赤組さんをつついたなり。青組さんの指さした先には、明るいコンビニがあったなり。
「多分あるだろ?」
「だな」
コンビニで豆まき用の豆を買って、きちんとした豆で豆まきを実行したなり。そして、お互いに27個ずつ豆を食べた二人だったなり。