××下宿屋木村 大つごもりの温もりを××

 

 

「なんてゆーのかな、ま、俺たちくらいにもなれば、大トリだって有りだよな」

 と、さすがにまわりにいる他の歌手達には聞こえないように、それでももう何度目になるのか数え切れない程繰り返し、青組さんは呟いていたなり。

「少しは落ち着いたらー?」

そう言う緑組さんの頭を平手でぺしりとはたき、けれどやっぱり落ち着かな気に溜め息をつく青組さんだったなり。

「何で、てめーらはそう落ち着いていられるんだよ!!」

「何て言うのかなぁ、ほら、飲んでる時なんかでも、そばに滅茶苦茶悪酔いしてる人がいたら、自分はそれほど酔わないじゃない?それと同じかなぁ・・・・」

なんてことをしれっと言ってしまえるのは、やっぱり黄組さん、大物なりか?とメンバーは思いつつも、・・・・何にも考えてないという可能性も捨てきれずにいたのだったなり。

「誰が悪酔いだよっ!!」

今度はさっきよりも幾分強めに、べしっ!!と平手が決まったなり。そして、もう一度溜め息をつき、

「ま、さすがに俺たちくらいだったら・・・・」

青組さんは、壊れたレコードのように(って、この表現、わからない世代ももういるでしょうなりね?)繰り返していたのだったなり。

 SMAPのことをあまり知らない人間にしたら、意外なことかも知れないなりが、青組さんは結構プレッシャーに弱かったなり。あれだけ大口を叩いて余裕を見せているようで、それはある意味青組さんの自己防衛とも言ってよかったなり。結局、その実SMAP内で一番プレッシャーを感じやすいのが青組さんだったなり。

「大丈夫だって、紅白の司会に比べたら、大トリなんて大したことないって」

赤組さんがそばに行って囁くと、青組さんは恨みがましい目で見上げたなり。

「司会はな、しゃべってればいいだけだけどさ・・・・」

それだけでもすごいのではないなりか?とまわりのメンバー全員が思っていたなりが、青組さんはまた大きな溜め息をついたなり。

「大丈夫、ほら見てみ」

赤組さんは、誰が持ち込んでいたのか、控え室に置いたままになっていた新聞の星占いの獅子座の部分を指さしたなり。

「創作活動に冴え、だってさ」

「だから?」

「歌だって、みんなで作り上げるんだもん、立派に創作活動でしょ?だからね、きっと上手くいくって」

「・・・・下手な詐欺師みてぇな説明」

そう言って、それでも青組さんはにっと笑って見せたなり。

「信じるものは救われるんだぜ?・・・・だから、信じなさい」

「そだな」

今度は目を閉じて深く深く深呼吸。そして、青組さんは目を開けると、

「さ、着替えるとすっか」

伸びをして、真っ白なスーツに手を伸ばしたなり。

 そして、そのついでみたいに赤組さんの耳元に囁いたなり。

「おまえの占いもちゃんと見た?“除夜の鐘を数えて煩悩を払うこと”だってよ?払わなきゃならない煩悩あるってことだろ?ちゃんと払っとけよ」

けれど、赤組さんは負けていなかったなり。

「除夜の鐘数えたくらいで消えるようじゃ、煩悩なんて言わねぇんじゃねぇ?」

そう言って笑えば、青組さんだけではない下三人も合わせた溜め息が返ってきたのだったなり。

 今夜の戦闘衣装は真っ白なスーツ。

 出番が近づき、5人は真剣な顔でステージに向かったなり。

「さ、気合い入れて、さいこーの気分で新年迎えようぜ!!」

ざわめきが近づいていたなり。