××下宿屋木村番外編 この世で一番優しい音××

 

ボニは小さい頃からずっと、ぱぱがボニを呼ぶ声が好きでした。公園におさんぽに行って、帰るよってボニを呼ぶとき、お風呂に一緒に入ろうって、ボニを呼ぶとき、ボニをいい子だって言って頭をなでてくれるとき、ぱぱはとっても優しくボニを呼びます。その声だけでボニは幸せな気持ちになります。きっと、この世の中で一番優しい音は、ぱぱがボニを呼ぶ声なんだって思っていました。その頃、ボニの世の中は、ボニとぱぱで出来ていました。

ボニがすこーし大きくなると、世の中には、ボニとぱぱの他にも人がいるってことがわかりました。その中には中居くんもいます。

中居くんは、最初はボニのことが苦手みたいで、ボニも中居くんが苦手だったけど、だんだんお互いに仲良しになりました。そして、ボニは、ボニの世の中がすーこし広がったのを知りました。ボニとボニのぱぱが仲良しなのと同じように、ぱぱと中居くんが仲良しなんだというのもわかってきました。

だけど、ぱぱは、ぱぱがボニを呼ぶときみたいに中居くんのことは呼びません。中居くんも、ぱぱがボニを呼ぶときみたいにはぱぱのことを呼びません。時々は、喧嘩をして、とっても強い呼び方で呼んだりもします。お互いに目も合わせないで、名前を呼ばないこともあります。

だけど、ぱぱが「中居」って呼ぶとき、中居くんが「木村」って呼ぶとき、ボニは、胸の辺が何だかほんわりとします。短い簡単な呼び方なのに、すっごくたくさんの気持ちが入っているような気がします。二人が話しているときの声は、それだけで特別なもののような気がします。

 

世の中って言うのは、ボニが知っているのよりもずっとずっと広いんだって、ボニも最近わかってきました。だけど、ボニはやっぱりこの世の中で一番優しい音は、ぱぱと中居くんが二人で話すときの声なんだって、思っています。