×× 下宿屋木村 ♪きょうの料理♪ 〜リゾット〜 ××

 

「今夜はリゾットにする?」赤組さんが青組さんにそう訊いたのは、ビストロでその話題が出た翌日のことだったなり。

「えっ?何で?」

「リゾットの作り方、気になってんでしょ?教えてやるよ」

「・・・・」

喜ぶかと思っていた青組さんの反応の鈍さに赤組さんは首を傾げたなり。

「どうした?」

「ん・・・・なんか悔しいなぁっておもってさ」

青組さんは言ったなり。

「えっ?」

「だって、こうやって木村が親切に教えてくれるのって、結局俺のことまだライバルだと思ってねぇからだろ?」

青組さんも5年もの経験の差があれば、それは仕方がないとも思っていたなり。けれども、それでもやっぱり悔しい気がしたなり。もちろん教えてくれようとしている赤組さんの気持ちはとても嬉しかったなりけれど。

複雑な気持ちを隠しきれない様子で答える青組さんが、赤組さんは嬉しかったなり。そうやって悔しがると言うことは、青組さんが料理に真剣に取り組んでいこうとしているということでもあったなり。赤組さんはにっこり微笑んで言ったなり。

「じゃ、やめる?」

「いや、せっかくだし・・・・やり方教えて?」

青組さんは慌てて答えていたなり。

 

  ●本日のメニュー●チーズのリゾット

 2人前の材料

米 1カップ

パルメザンチーズ 大さじ5〜6

玉ねぎ 1/6個

洋風スープの素 1個

白ワイン 大さじ2

オリーブ油 大さじ1 1/3

バター 大さじ1弱

塩、粗挽き黒コショウ 各少々

 

「まず、玉ねぎをみじん切り・・・・にする前にお湯を2カップ強沸かしとこう」

赤組さんが言ったなり。

「こういうとこで、時間を無駄にしないようにすんだぜ?」

鍋に水を測り入れ火にかけてから、お湯を沸かしている間に、青組さんは玉ねぎを細かくみじん切りにしたなり。

「次に厚手の鍋を用意して・・・・中火にして、バターとオリーブオイルを入れる。バターが溶けたら、玉ねぎを入れて炒める」

青組さんが玉ねぎを入れると、ジャーという派手な音が響いたなり。

「そこで玉ねぎが透けてきたら、次に洗っていない米を入れて・・・・あ、そろそろお湯沸いたな、お湯の方にスープの素入れて溶かして、弱火にしとく。そしてその間に木べらを使って・・・・ほらそれだよ、米を炒める。米もやっぱり透き通るまでいためる」

青組さんは必死に木べらでかき混ぜていたなり。

「透き通ってきたぞ、次は?」

「じゃ、一旦その鍋は火から下ろしてワインを加えて、また火にかけてアルコールをとばす」

「火の強さは?」

ちょっと専門的なことを尋ねてきた青組さんに内心驚かされながら、

「中火で。ちゃんと混ぜて」

赤組さんは答えたなり。

「で、そこにさっき作ったスープの半分を入れて時々混ぜながら煮詰める」

「うん・・・・」

一心に混ぜようとする青組さんに、

「焦げない程度でいいから。ここであまり混ぜすぎると粘りが出てきちゃうし」

赤組さんは注意をし、

「こういう時に、デザートの方に取りかかるようにするわけ」

と、ビストロの際の流れを説明したなり。

「ま、今回はデザートは作んないから・・・・とりあえずチーズおろしておくか」

赤組さんはチーズの固まりとチーズおろしを青組さんに渡したなり。

「しっかし、考えたらすっげーよな、普通の家にチーズおろしなんて置いてあるか?」

青組さんは言ったなりが、

「えっ、置いてない?」

赤組さんに尋ね返されて、考え込んでしまったなり。それでもとりあえず、青組さんは大さじ6杯分のチーズをおろしたなり。続けて説明をしながら、赤組さんはお米が焦げないように鍋に気を配ったなり。

「で、汁気がなくなったら、残りのスープの1/2を入れて同じように煮詰めて、もう一度汁気がなくなったら、残りのスープ全部を入れて煮詰める」

やがて鍋の中からスープが少なくなり、いい匂いが漂いはじめたなり。

「じゃ、少し芯が残ってる辺りで火から下ろして、チーズを入れる」

そして青組さんが全体にチーズを混ぜると、もう一度鍋を弱火にかけたなり。

「はい、チーズが溶けてきたら・・・・できあがり!」

「じゃ・・・・出来たーーーっ!」

嬉しそうに青組さんが言ったなり。

 

出来上がったリゾットを器に盛りつけて、二人は食卓についたなり。

「いっただきまーーーす!!」

「えっ、なんか味・・・・」

一口食べて青組さんが言ったなり。

「あ・・・・そういえば」

赤組さんは青組さんに教えるのに一生懸命で、塩もこしょうも入れていなかったなり。大慌てで、塩、こしょうで味を調えたリゾットは、それはそれは美味しくて、密かに青組さんがライバルになる日が近いことを確信した赤組さんだったなり。