××下宿屋木村 本日は晴天なり!××
「本当にいいの?」
少し緊張した面もちで赤組さんはきいたなり。
「ん、いいよ。おまえに任せるから」
閉じていた目を開けて赤組さんを見つめると、青組さんは静かに言ったなり。
「ほんとに?」
「いつまでも、しつけぇんだよ!!さっさとしねぇんだったら、やめるぞ」
青組さんは赤組さんの顔をじっと見据えたなり。
「わかった」
赤組さんは覚悟を決めたように言って、大きく息を吸うと青組さんの頭にゆっくりと手を伸ばしたなり。
じゃきっ!
髪の毛が一束下に散ったなり。
その日、赤組さんは青組さんに言ったなり。
「髪の毛切らせて。もう、50人以上切って勘もつかめたし、そろそろいいでしょ?」
「大丈夫なのかよ?」
「今のところ苦情は一件もないし!」
そういう赤組さんに、青組さんもうなずき、ベランダに新聞紙をひいて椅子を置くと、そこで赤組さんによる青組さんのカットが始められたなり。
春めいた日差しの、暖かい午後のことだったなり。
しゃき、しゃき、しゃき。
リズミカルにハサミの音が繰り返され、青組さんの髪の毛が新聞紙の上に散っていったなり。
そんな時、不意に突風が吹いたなり。
切っていた髪の毛が舞い上がり、二人は慌てて部屋の中に戻ったなり。
「なに〜、最っ低〜!!」
青組さんは文句を言ったなり。実はベランダで切ろうと言い出したのは青組さんだったなりが、とりあえずそれには触れなかった赤組さんだったなり。
「仕上げ、風呂場でするから、先に行ってて」
赤組さんは、手早くベランダを片付けて、風呂場へ向かったなり。
細かいところの微妙なニュアンスを整えた後、シャンプーをして、赤組さんは青組さんの頭をドライヤーで乾かすと、鏡を渡したなり。
「どう?」
「ふうん、まぁまぁじゃねぇ?」
「また、ご指名いただけますか?」
ちょっとふざけた感じで言う赤組さんに、青組さんは髪の毛を一つまみ摘んで光に透かしてみたりしていたなりが、やがてにっこりと笑って言ったなり。
「ん。何だったら、専属になる?」
顔を見合わせて笑い出した赤組さん青組さんだったなり。