××下宿屋木村 獅子座流星群の夜××

「何だっつーの、一体?」

深夜12時を軽く過ぎた仕事上がりに、まるで攫われるようにして赤組さんの車に乗せられて、青組さんは非常に機嫌が悪かったなり。運転席で楽しげにハンドルを握っている赤組さんを睨むようにして、低い声でそれだけを口にしたなり。

「今日さ、獅子座流星群が、すっげーよく見えるんだって、知ってた?」

そんな青組さんの様子に気付いているのかいないのか、赤組さんは上機嫌なままでそう言ったなり。

「だから?よく見えるのって、2時だか3時だかだろ?明日も仕事が入ってるし、俺はそんなもの見るくらいなら、さっさと眠っちまいたいんだけど?」

「寝てていいよ?着いたらちゃんと起こしてやるから」

どうやら、このまま下宿屋には戻ってくれそうもない赤組さんに、青組さんは溜め息をつくと、備え付けにしてあった専用のブランケットを後ろの座席から引きずり出したなり。そして助手席を少し倒して、そのまま肩からすっぽりとブランケットを掛けて目を閉じたなり。

赤組さんの呼ぶ声に、青組さんが目を覚ましたのはそれからしばらくたってからのことだったなり。

都内から少し離れた(のだろうと思われる)海岸に、二人はやって来ていたなり。

「この辺あんまり家とかもねーからさ、ほら」

赤組さんに言われて一緒に空を見上げた青組さんは息を呑んだなり。すでに月は西の空に沈んでしまって、ただただ星の光ばかりが空一面に広がっていたなり。

「流星群って、どれ・・・・?」

言いかけた青組さんの目の前で、ついーっと明るく光の尾を引いて星が一つ流れたなり。続けて、また一つ、あちらでも一つ。くり返される光の流れに青組さんは思わず声を挙げていたなり。

「なに?すげぇ!!」

「想像以上!」

赤組さんも言ったなり。

「何だよ、知らないで誘ってきたわけ?」

「だって、俺もまだ見たことなかったし。こんなに明るくて、その上こんなに沢山だなんて思っても見なかった」

そう言っている二人の頭上をどんどん星は流れ続けたなり。

「あ、今のすっげー明るかった!」

「いや、今のはあっちに流れたヤツの方が明るかったって!!」

最初はそんな風に言っていた二人だったなりが、やがて言葉も忘れてずっと空を見つめ続けていたなり。

随分と身体が冷たくなってしまって、ようやく二人は時間を思いだしたなり。

「なぁ、こんなに沢山の流れ星なんだからさ、何かお願いしたら叶うかな?」

そう言ったのは青組さんだったなり。

「どうせ、SMAPのことでしょ?」

「わりぃかよ?」

「いいや、悪くねぇよ。だって俺もSMAPのこと思ってたもん」

沢山の流れ星と赤組さん青組さん2人分の願い事。叶わないはずなんてないと、思わずにはいられない、そんな夜のことだったなり。