××下宿屋木村番外編 七夕の夜××

こんばんは。だんだん暑くなってきましたが、如何お過ごしでしょうか?ボニです。

この間ね、ボニがおうちでお留守番してたら、玄関の方から、ざざっざざっって変な音がしたの。うん、パパが帰ってきたのはわかったんだけど。何なんだろうって思って、お迎えに行ったら、パパは変な木の枝を持っていました。木の枝?ちょっと違うかもしれないけれど、ボニにはそれが何なのか判りませんでした。なので、そばに行ってあちこちからそれを見た後、くんくんって匂ってみたりしていたら、パパが、これは笹って言うんだって教えてくれました。

その「笹」をベランダに置くとパパは次に、色々な色の紙を持ってきました。

パパがそれを何回か折ってハサミでちょきちょきってして、広げると、蜘蛛の巣みたいになったり、網みたいになったりしました。ハサミを使わずに折るだけの時には色々な形が出来上がりました。

それから、やっぱり色々な色の細長い紙にパパは何か字を書きました。

ボニの足の裏にもパパは何かを塗って、その紙にぽんって押しました。ちょっとくすぐったかったです。その塗ったのをとるためにごしごし拭かれたときは、もっとくすぐったかったです。

そうやって作った網とか、色々な形とか、細長い紙とかをパパは「笹」に沢山つけました。「笹」が段々綺麗になって、ボニは嬉しくなりました。

「今日は七夕なんだぜ」

パパは言いました。七夕って言うのは、織り姫と彦星という恋人同士が一年に1度だけ会える日なんだそうです。恋人同士が逢えるのと、「笹」に色々と飾りを付けるのがどういう関係があるのか、ボニにはよくわかりません。だけど、パパは楽しそうで、だからボニもなんだか楽しくなりました。

「七夕」だというのに中居くんは忙しいみたいで、今日も帰ってくるのはそんなに早くありませんでした。

ベランダの「笹」を見て中居くんは驚いたようでした。

「どうしたの、これ?」

「友達の知り合いがくれるって言うから、もらってきた」

「で、これ、おまえが飾り付けしたの?」

「そう!」

「・・・・おまえってば暇だねぇ」

中居くんに言われてパパはがっかりしたような顔をしました。

でも、ボニは気が付いています。そんなことを言ってるくせに、中居くんはじっと「笹」を見ているし、目が何か悪戯をしている時みたいにきらきらしています。

中居くんは、パパの前にぽんっと手を差し出しました。

「え?何?」

「短冊。俺には願い事させねぇ気?」

中居くんがにこにこ笑ってるので、パパも気が付いたみたいです。

「何?おまえも暇人の仲間入りするの?」

「いいじゃん。俺の分は?」

それから中居くんも細長い紙に何か書いていました。ボニは字を読めないので何て書いてるのか判らなかったけど、後で、パパが教えてくれました。

「ずっとSMAPでいられますように」