久々に二人一緒のオフ。赤組さんと青組さんはキッチンに並んで立っていたなり。

「どうしてまた急に特訓なんてする気になったんだよ?」

赤組さんは不思議そうに訊ねたなり。

「ん、今度のスマスマに必要だからさ」

「あ、ビストロ特集?」

「うん、出来ないネタはもうやっちゃったじゃん、次は手際よくして、驚かせる番だろ?」

あくまでネタ第一の青組さんに、少しため息をついて赤組さんは聞いたなり。

「で、メニューは何にする予定?」

「うん、炒飯とぉ・・・・」

「炒飯と」

「・・・・豚汁と・・・・」

「豚汁と?」

「・・・・それだけ」

「・・・・それだけ?二品勝負?」

赤組さんの問いに、青組さんは少し照れくさそうに笑って、上目遣いに答えたなり。

「うん、二品勝負」

「少なくねぇ?それ」

「でも、完璧勝負で行きたいんだよねぇ」

そう言って、ちょっとうつむいて「にっ!」と笑った青組さんの何かを企んだような笑顔には気付かなかった赤組さんだったなり。

 

取り敢えず、二人は材料を切ることから始めたなり。まずは豚バラ肉、ベーコンを切ったなり。

「豚の方は・・・・そう、そのくらいのサイズで・・・・ベーコンはもう少し小さめ、あ、左手、ネコね」

「ネコ?」

赤組さんは左手を軽く丸めてみせるなり。

「これ、ネコの手。こうしとくと危なくねぇから」

「あ、そっか」

赤組さんの真似をして、青組さんもネコの手で材料を刻んだなり。

「次、ネギの小口切りね」

赤組さんはリズミカルにネギを切って見せたなり。

「すっげー」

感心して見とれていた青組さんの頭を軽く叩いて、

「すっげーじゃなくって、おまえがやんなきゃなんねぇんだけどぉ?」

赤組さんは笑ったなり。

「はい、次はゴボウのささがき。まず、たわしで洗って、これで皮がとれるから・・・・次に縦に十字に切り込んで・・・・はい、そうそう」

赤組さんの指示通りにすすめる青組さんだったなり。最初は危なっかしい手つきだったなりが、一本分ささがきにしてしまう頃には、誰も文句のつけようのない、見事な腕前になっていた青組さんだったなり。

「中居、おまえ、ささがきの才能あるよ」

「ささがきだけかよぉ」

「・・・・」

それには答えず、

「じゃ、ささがきゴボウは水にさらしといて。次にジャガイモだけど、火が通りにくいものは心持ち小さめに切っておいた方がいいから」

赤組さんは次々と材料を切る指示をしたなり。

「じゃ、鍋に油入れて」

豚バラ肉から順に入れて、青組さんは炒め始めたなり。

「よく炒めてから・・・・さっきとっといた出汁入れて・・・・。あとはよく煮て火を通す」

出汁を入れてふたをした青組さんに赤組さんは言ったなり。

「火が通るまで炒飯やってたら時間も無駄にならないから・・・・」

そこで二人は炒飯に取りかかったなり。

 

まず、ベーコンを炒めたあとで、卵を割ったなり。

「あ、おまえって卵割れたの?」

「・・・・あのな、いくら何でも10年以上一人暮らししてりゃ、それくらい普通出来るって。前回割れなかったのはネタ・・・・知ってたくせに」

「知って・・・・たわ、確かに。でもおまえ最近ずっと出来ないネタで通してたから、半分くらい忘れてた」

「失っ礼〜!!」

中華鍋を熱して油を温め、そこに溶いた卵を流し込む青組さんの手元を赤組さんはじっと見つめたなり。

「・・・・んだよ、あんまり見んな、緊張すっだろ!」

「何言ってんの、完璧目指すんでしょ?だったら、細かいとこから見とかなきゃ」

中華鍋の卵を手際よくかき混ぜ始めた青組さんに

「あ、それ半熟のちょっと手前くらいでご飯入れて」

「ベーコンから塩味出るから、塩は少し控えめにして・・・・」

などという赤組さんの指示が適宜入り、塩、コショー、ネギを入れて・・・・。青組さんは中華鍋の炒飯を煽ろうとしたなり。

ばららっ。中身がこぼれたなり。

「待てっ!」

慌てて赤組さんは青組さんの背中から手を伸ばし、青組さんの手を取ると一緒に中華鍋を動かしてみせたなり。

「こう、腕っていうよりか、腰っていうか身体全部で動かす感じで・・・・」

何度か繰り返したあとで、

「後で、濡れ布巾でも使って練習するといいと思う」

「ん」

そうしてほぼ出来上がった炒飯の味見をする青組さんだったなり。

「ん・・・・、もう少し炒めた方がいいか?」

ぱくっと食べて、青組さんは炒め続けたなり。そして、

「ん・・・・塩たんねぇ」

ぱくっ、もう一度塩をぱらっ。

「ん・・・・も少し塩かなぁ?」

またしても、ぱくっ、塩をぱらっ。

「ん・・・・なんか味薄い・・・・」

ぱくっ、コショー追加。

「ん・・・・こんなもんかなぁ、ちょっと喰ってみて」

もう一度ぱくっと食べた後で、青組さんは赤組さんに味見用に炒飯を差し出しながら、

「でもなんか腹一杯になってきた・・・・」

「・・・・っていうか、おまえそれ味見しすぎ」

赤組さんはあきれたように呟いたなり。

 

とりあえず、出来上がった二品は赤組さんをして、

「うん、合格」

と言わしめた出来だったなり。

「俺もまんざらでもねーじゃん」

青組さんは嬉しそうに笑ったなり。

「じゃ、明日は木村の指示なしで作るから、試食よろしく!」

「え?明日もそれ食うの?」

「ったりめぇだろ?」

ちょっと自分が可哀想な気もする赤組さんだったなり。