××下宿屋木村番外編 遠くに行きたい××

 

 こんばんばーん、木村ボニータです。なんて言うか、えっと・・・・本当にお久しぶりになってしまいました。

 んと、お久しぶりのあいだのことをお話しすると、ボニは元気でした。

 えっと、ぱぱはお久しぶりのあいだに、どらま?・・・・で、いつもよりもいそがしくなって、だけどそれもおわって、今ではいつもどおりになりました。ぱぱのドラマは、なかいくんに言わせると、とっても人気で「しちょうりつ」も、とってもよかったそうです。「しちょうりつ」って何かなぁ?ボニはよくわかりません。でも、ボニもなかいくんと一緒に、ぱぱが別の人のお名まえでよばれているテレビをなんかいも見ました。ぱぱはけっこうかっこよかったと思います。

 なかいくんはとっても忙しそうです。でも、これはいつもと同じってことに、になるのかな?で、あとね、あごにおひげをはやしてるの。ボニは、あんまり好きじゃないです。なかいくんにはにあわないと思うし、なかいくんのお顔ぺろぺろってしたときに、なんかざらざらした感じになるのがいや。ぱぱもいやなんだと思います。時々なかいくんとけんかするみたいにして、そのことを言ってることがあるからです。でも、なかいくんのあごのおひげはあのまんまです。ぱぱは

「恋人が言ったって、きかねーよ、あれは」

と、言っていました。恋人さんがだめだったら、だれが言ったらきれいにしてくれるのかなぁ?ボニに人間のことばが言えたら、ボニも言ってみたいけど、ボニでもだめかしら?

 

 あのね、ついさいきん、ボニはなかいくんに叱られました。いつもより、なかいくんが早く帰ってきた夜に、

「ボニ!」

って、呼ばれて

「あぶないことしてんじゃねぇよ」

って、なかいくんに言われたの。さいしょ、ボニは何のことだかわからなくって、きょとん、ってしちゃったんだけど、それを見てなかいくんボニに言ったの。

「ひとりでどんどん沖に泳いでいっただろ?おまえ」

・・・・ほんとのことだから、ボニはどきっとしました。

 ぱぱのどらまのさつえいが終わって、ぱぱがボニも海につれて行ってくれたとき、ボニ、海で泳いでいたの。とっても気持ちよくって、いくらでも泳げるから、どんどん泳いでいったら、岸の方がぜんぜん見えないようなところまで来てて。でもね、ボニ、こわくなかったよ。それよりも、この先に何があるのかなぁ?って、そっちのほうが気になったの。何かとっても、いいことがあるような気がしたの。だから、もっともっとって泳いでいたら、「かいじょうほあんちょう」ってところのおじさんの船にすくい上げられたの。

「こんなところまで泳いで、あぶないよ」

って、おじさんに言われてはじめて、ボニはまわりがぜんぶ海になってたのに気がついたの。でもね、本当にこわいなんて少しも思わなかったんだよ、もっとむこうまで泳いでいけないのがざんねんなくらい。ただ、ぱぱが「かいじょうほあんちょう」のおじさんにあやまってるのを見て、

「あ、ボニ、ぱぱに迷惑かけちゃったんだなぁ」

って、悪いことしたなって思ったの。

 ぱぱは、帰りに

「なかいに心配させたらわるいから、これは俺とボニとのひみつ、な?」

って言ってたのに、どうしてなかいくんにわかったのかなぁ?ボニがふしぎに思っていると、

「雑誌で見て、俺がどれだけ驚いたと思ってんだ!?」

なかいくんが言いました。・・・・ぱぱのうそつき〜〜!!それとも、ぱぱのまぬけ〜〜?

「おまえがいなくなったら、残された俺たちがどんなにさみしいかわかってんのかよ!」

 なかいくんのおせっきょうはつづいていて、ボニはなかいくんにも悪かったなぁ、って思って、そしてね少しだけ。・・・・なかいくんにはないしょにしてね。

 ボニは少しだけうれしかったの。

 ぱぱはなかいくんと時々けんかみたいに言いあらそうことがあるけど、ボニに

「だけど、それだけ中居がこっちのこと、本気で思ってるからなんだ」

ってよく言います。なかいくんは、どうでもいい人には何も言わないんだって。だから、こうしてボニを叱ってくれるのって、なかいくんにとって、ボニがだいじだからだよね?そう思ったら、なぜかむねのおくがきゅんってして、「くぅん」って、何だかこいぬみたいな声が出てしまいました。なかいくんは、そんなボニのあたまを、ぽんぽんって軽くなでてくれました。

 ボニは遠くに行ってしまわなくてよかったなと思いました。だって、ボニがいちばん幸せでいられるのは、ぱぱとなかいくんのいるこのおうちだからです。