「なぁ、ドライブ行かねぇ?」
「はぁ?」
赤組さんの突然の提案に、青組さんは胡散くさげに顔を上げたなり。時刻は深夜の一時。決して早いとは言える時間ではなかったなり。
「明日さぁ、スタッフの手違いがあって、俺、撮影休みになったの。おまえもさっき、明日の撮影昼過ぎからって言ってたじゃん?だから、さ」
確かに、下宿屋に戻ってきてすぐに青組さんはちょっと嬉しくて、そんなことを言っていたなり。けれどそれは、遊びに行けるから、と言うからではなかったなり。明日の朝は久しぶりにゆっくり出来るなぁ、と、それが嬉しかったなり。
「嫌だ。俺は、酒呑んでさっさと寝てぇの」
「えーっ」
赤組さんは言うと、ボニータの首を抱いて上目遣いに青組さんを見つめたなり。
───なんて顔してんだよ。
青組さんは思ったなり。どこかまだ少年じみた表情だったなり。こんな顔を計算でなくやれる赤組さんには、何だか敵わねぇなぁ、と思ってしまう青組さんだったなり。
「・・・・あんまり、遅くまで付き合えねぇよ?」
青組さんが小さくそう言うと、赤組さんは嬉しそうに目を輝かせたなり。
準備をすませて、2人は赤組さんの運転する車で出かけたなり。まずコンビニに寄って、部屋に戻ってから呑むビールや、そのつまみを買い込んで、もう一度車に乗り込んだなり。
「で、どこ行くの?」
青組さんが訊いたなり。
「ん、特に・・・・この辺適当に流そうかな、って思うんだけど・・・・、そう言うのってよくない?」
「そんなことでわざわざ人を外に出しやがったのか!」
赤組さんの答えに、青組さんは頭を抱えてそう言いそうになったなり。
そんな青組さんの視界に、突然ビルの間から明るい月が飛び込んできたなり。満月に近いのか、それはほとんど丸と言ってもいい形で、しろっぽい光を下界に投げかけていたなり。
別に最近月を見なかったわけではないけれど、こんな風にゆとりのある気持ちで見たのは、久しぶりという気がした青組さんだったなり。そして何だか、「まっ、いっか」という気分になって膝を抱えた青組さんだったなり。
赤信号で車を停めた赤組さんに、青組さんは言ったなり。
「なぁ・・・・今夜、月、綺麗だぜ?」
「あ、本当」
赤組さんも空を見上げたなり。
月の明かりに照らされて、2人の乗った車は夜の道を走っていったなり。