×× 下宿屋木村 私をドームに連れてって!××

 

「あれ、本気じゃねぇだろ?」

ビストロの収録後、赤組さんは青組さんをつかまえると、にやりと笑って言ったなり。収録中、バックネット裏のとてもいいポジションで野球観戦をしたという赤組さんに、

「今度行こうぜ?」

と青組さんは言ったなり。それに対しての言葉だったなり。

「なんで、んなこと言うんだよ?」

「だって、おまえ、野球はじっくり見たいんでしょ?二人でいったんじゃ、落ち着いて観戦もできないだろ?」

悲しいけれど、それは事実だったなり。一人だけでも認識度の高い彼らが、二人揃ってドームに現れたとなれば、目立つことこの上なしであろうと思われたなり。しかも、本番中には客席が暗くなるコンサートとは違い、試合中でもずっと明るいのが野球場だったなり。

「けど、野球ファンと俺らのファンって重なんないんじゃねぇ?」

「甘いね!!」

そう言う赤組さんがあまりにも自信たっぷりだったなりから、つい青組さんは意地になってしまったなり。

「行きます!!絶対に二人で行くんです〜!二人で行って、ぜってぇ巨人戦見ようなっ!」

 

そしていつの間に手を回したものか、青組さんはバックネット裏の席のチケットを二枚用意していたなり。(それは、赤組さんが見たという席より、ちょっとだけいい席だったなり・笑)日程も、マネージャーと折衝の上、赤組さん、青組さんともにオフという絶好の日だったなり。

「さぁ行くべ!」

やる気満々の青組さんに、赤組さんは思わず微笑んでしまっていたなり。

とりあえず二人とも深めに帽子を被って、青組さんは眼鏡をかけたなり。(これはどちらかというと、試合をよく見るためだったようなりが)あまり目立たないようにおとなしめにして、二人はポップコーンと缶ビールを手に席に着いたなり。途中、二人に気付いた人も何人かいたようだったなりが、目立つまいとしている二人に、特に騒ぎ立てると言うこともなかったなり。

 

試合は両チームのピッチャーの不調もあって乱打戦になっていたなり。

「やっぱりここは、エンドランだろっ!」

「えっ?それよりは送っといた方がよくねぇ?」

「そろそろ、ピッチャー替え時だよな?」

「ん・・・・でも、この後の流れを考えたら、やっぱりここは、もう一踏ん張りして押さえてもらわないとさ・・・・」

「無理だって、もう完全にバッターの方が優位だもん。ほら!」

「あっ、馬鹿!何でここで素直に投げんだよ?ここは、一球はずして様子を見ないと・・・・」

二人で一つのポップコーンをつまみ、小声であぁでもない、こうでもないと言い合いながら、試合を追いかけていたなり。喉をおちていく冷たいビールがいつも以上に美味しく感じられていたなり。

 

点の取り合いは、最終回まで続いたなり。

「いっけぇ〜!」

裏の攻撃が始まって、青組さんは思わず声をあげて立ち上がっていたなり。

「えっ?あの声?!」

不意に二人に注目が集まったなり。

「ねぇ、もしかして?」

「ちょっと、あれって・・・・?」

ざわめきが広がり始めたなり。青組さんも赤組さんもそれに気付いたなり。今は、ざわめきですんでいるなりが、試合が終わったらどうなるだろう?という、ざわめきの広がり具合だったなり。

「残念だけど、そろそろ出た方がいいんじゃねぇ?」

赤組さんが言い、青組さんも頷いたなり。

「そうみてぇ、悪かったな、俺のせいで」

「いいって、最後まで見られなくって残念なのは中居の方が強いんだから」

まず、赤組さんが席を立ったなり。

「じゃ、駐車場で待ってるから」

そう言って、何もなかったようにゆっくりと赤組さんは歩き始めたなり。赤組さんが席を立ってしばらくしてから、青組さんも立ち上がったなり。そして、静かに駐車場へと向かったなり。

駐車場では赤組さんが車のエンジンをかけて、青組さんが乗りさえすれば、いつでも出られるようにして待っていたなり。青組さんが助手席に乗り込むと、赤組さんが付けていてくれたのだろうカーラジオから、試合の中継が、聞こえてきたなり。

「やりました、逆転サヨナラ〜!!」

アナウンサーが叫び、青組さんはにっこりと笑ったなり。