××下宿屋木村 クランクアップ××

 

「ただいま」

下宿屋に帰ってきた赤組さんを迎えたのは、ボニータだけだったなり。赤組さんが帰ってきたのも、そう早いとは言えない時間だったなりが、青組さんの仕事もどうやら長引いているようだったなり。

ボニの頭を撫でてやりながら、赤組さんはリビングへと荷物を運んだなり。

「長かったなぁ・・・・四年越しだしなぁ」

赤組さんは伸びをしたなり。確かに撮影再開から言うのなら、密度は濃いものの、一ヶ月足らずという短期間だったなりが、それ以前の撮影と合わせれば四年間。一時期はライブ毎にMCで取り上げられ、そしてついには、そのMCで取り上げられることさえなくなるほどに長い撮影期間の、赤組さんの出演分の撮影が終了したのだったなり。

「これで、こいつともお別れか」

赤組さんは鼻の下に手をやったなり。

赤組さん自身もあまり似合っているとは思えなかったそれは、監督サイドからの要請で伸ばしていたものだったなり。さっさと剃ってすっきりしたい、と思いつつ、青組さんの帰りを待つ赤組さんだったなり。

自分は今年前半、周囲の非難(もちろん赤組さんも、その「周囲」の中に含まれていたなりが)などどこ吹く風とばかりに、あまり似合っているとは言い難いひげ面を、意地のように続けていたくせに、青組さんは赤組さんの髭には否定的だったなり。さすがに、監督の要請という仕事がらみであっただけに、文句も尻すぼみになりつつあっなりが。

「あのときの俺の気持ち、わかった?」

そんな風に言って笑っていた赤組さんだったなりが、何となく、せっかくなりから青組さんのいるところで剃ってみるなりかなぁ、そんな気持ちになっていたなり。

「ただいま」

それほど待つこともなく、青組さんが帰ってきたなり。灯りがついているなりから、赤組さんが帰ってきていると気付いたらしく、青組さんは勢いよく部屋に入ってきたなり。

「お帰り、お疲れ様!」

言いながら青組さんは、赤組さんが手にしていたカミソリに気付いたなり。

「何でそんなもん持ってんの?」

「え?そりゃ、髭剃るからに決まってるでしょ?!」

にやにやしながら答えた赤組さんに、青組さんはハッとしたように声を上げていたなり。

「終わったんだ!」

そしてそれまでの疲れた表情だったのがウソのような、綺麗な笑顔を赤組さんに向けたなり。

「お疲れ様、よかったなぁ」

 

あぁ、やっと終わったんだなぁ。

青組さんの笑顔に、赤組さんは改めてそれを実感していたなり。