「あー、ついてねぇ」
青組さんは、ベッドに起きあがるとそんな風にぼやいたなり。今日は久々のオフ。何をしようかと、ずいぶん前から色々と考えていたなりに、体調を崩して、熱のあるオフになってしまっていたなり。
「そりゃさぁ、仕事が詰まってるときに熱があるよか、よっぽどいいけど・・・・」
にしたって、こんなオフの日じゃなくったっていいんじゃねぇ?どうしてもそう思わずにはいられない青組さんだったなり。
朝からずっとベッドの中にいて。
エアコンの風がなんだか冷たすぎる気がしたなりから、エアコンを止めて、窓を大きく開け放っていたなり。
さっきまではレースのカーテンを揺らして、気持ちのいい風が入って来ていたなりに、不意に風が止まってしまっていたなり。途端に部屋の中がむっとしてきたような気がして、青組さんはタオルケットを身体に巻き付けると、窓のそばに移動してみたなり。もちろん、窓のそばでも風は届かなくって、
「あちぃ」
そう言って座り込んだ青組さんを心配するかのように、ボニもそばにやってきて一緒に座り込んだなり。
突然、空から大粒の雨が落ちてきたなり。
「えっ?」
あっと言う間に勢いよく降り始めた雨だったなり。夕立なり。
「夕立かぁ」
ふと、青組さんはデビューしたばかりの頃のことを思いだしていたなり。
その日は、ロケでメンバー全員で外に出ていたなり。何がきっかけだったなりか、今となっては思い出せなかったなりが、赤組さんと青組さんは喧嘩になって、まだ、お互いひくことを知らなかった二人は結局掴みかからんばかりになっていたなり。そんな時の、いきなりの夕立だったなり。文字通りの水入りとなって、二人は慌てて、ひさしの下に駆け込んでいたなり。
頭のてっぺんから爪先まで、二人ともぐっしょりと濡れて、Tシャツなんて絞れそうなくらいだったなり。青組さんがちらちらと赤組さんを見ていると、赤組さんも青組さんの方を見ているようだったなり。
「んだよ」
先に口を開いたのは赤組さんだったなり。
「何でもねぇよ!!」
言いかけた青組さんは、けれども濡れ鼠状態の赤組さんに、つい笑ってしまっていたなり。むっとしたように赤組さんは青組さんを見たなりが、何故かやっぱりいつの間にか笑ってしまっていたなり。青組さんもびしょびしょでさんざんな様子だったなりから。二人してひとしきり笑って、その喧嘩は終わりになってしまっていたなり。
あの時も今日と同じに、ほこりが濡れたような、あったかい、ちょっと甘い匂いがしていたなり。
「少しは熱下がった?」
帰ってきた赤組さんは、ベッドに眠っている青組さんの額に触れたなり。
「ん・・・・」
目を覚ましたばかりでぼんやりしていた青組さんの口に、一口大に切って凍らせておいたリンゴのひとかけらを放り込んでから、
「とりあえず、何か食べられそう?」
青組さんの食事の用意を始めた赤組さんだったなり。