NATURE

side−K  風

 

波乗りに向かう途中、車の窓を開けた。

だんだんと街を離れていくにつれて、風が生き生きと感じられるようになる。

今の季節の風は湿り気が少なくって、

風を受けている俺にその命を分けてくれているような気がした。

あいつ、どうしてるかな?

こんな時思い出すのは、多分今もスタジオの中、風も感じずに

働いているあいつの顔。

今はドラマの撮りも入ってて、時間もとれないだろうけれど、

ドラマが終わったら・・・・

連れだそうかな?

あいつにも、風はきっと命を分けてくれるはずだから。

 

風の匂いに海の匂いが混ざりはじめて、俺は大きくハンドルを切った。

side−N  臥待ち月

 

ドラマの収録を終えて、スタジオを出た。

ふっと空を見上げると東の空に月が引っかかっていた。

満月の頃よりは、もう大分欠けていたんだけどとっても明るく見える。

あいつも見てるのかな?

こういうのを見たら、俺なんかよりもよっぽど感動するだろう

そんなあいつの顔が、ふと頭に浮かんだ。

あいつだったら、俺なんかよりずっとこの月のことを上手く言えるのになぁ。

心の中まで綺麗にしてくれそうだとか、何とか。

あいつ、まだ起きてるだろうか?

 

俺は、待たせていた移動車に乗り込むと深く息を吐いた。

 

and   ・・・・

 

♪♪♪・・・・

携帯の着メロの音に半分眠り書けていた意識を引き戻された。

「はい・・・・」

「あ、俺。あのさ・・・・」