へんなの

 

例えばさ

不意に何かを思いついたようにあいつが言った。

 俺もおまえもいつかはさ

 可愛い子見つけて結婚するじゃん?

そりゃするだろうな

俺は答えた。

 

 そしたらさ、いつか子供も生まれてさ

 その子がだんだん大きくなって

 女の子だったら

 眠れないほど心配な夜もあったりして

 それでも

 きっと何時かいい人見つけて結婚してさ

 いつの間にか孫なんて生まれてさ

 いい爺さんになっちゃって、

 ゲートボール場で見つけた可愛い婆さん巡って

 どっかの爺さんと火花散らしたりしてさ

 でもさ、

 不思議なんだよな

 そのどの場面を考えても

 隣にはおまえがいんの

 

聞きようでは口説いているかのような台詞を

口にして、あいつはにっこりと笑った。

ばっかじゃねーの

俺は冷たく答えた。

 そっかな?

そうだよ

 

だけど、確かに考えてみると、

俺にしたってどの場面でも隣にいるのはあいつで。

長い人生、あいつが隣にいたのなんてたった

十年ちょっとなのに。

 

へんなの。

つぶやいた俺をあいつが不思議そうな顔で

見ていた。