たっくんとひろちゃん一年生編

ふたりだけのひみつ

 

たくちゃんとひろちゃんが いちねんせいになって、にしゅうかんがすぎました。ふたりとも、あたらしともだちもたくさんできて、ようちえんのおにわよりも ずっとひろいうんどうじょうで まいにちげんきにあそんでいました。

あしたは いちねんせいのおむかえの えんそくです。

「なぁ、たっくん、あしたのえんそくのとき、いっしょにおべんとうたべようぜ?」

ひろちゃんがさそうと、たっくんはさみしそうなかおをしました。

「ごめんね、ひろちゃん」

「えっ?」

「1くみは、1くみみんなで あつまってたべるんだって。だから おれ、ひろちゃんといっしょにたべられない」

「なんで・・・・。おれ、たっくんといっしょが いいのに」

ひろちゃんは がっかりしました。なんだか とっても おもしろくありません。これまで ひろちゃんは、いつだって たっくんといっしょだったのに。

「やだよ、おいら」

ひろちゃんは、すねたように そういいました。

「おれだって やだよ」

たっくんも、なきそうになりながら いいました。

いちねんせいになるのって、たのしいことも いっぱいあるけど、おもしろくないことも あるなんて、おもってもいませんでした。あたらしい なかよしのおともだちが ふえるのはうれしいけれど、たっくんも ひろちゃんも なんだか ときどき、おもしろくなくなるときが ありました。

「なぁ、たっくん、おべんとうのあとは いっしょにあそべる?」

ひろちゃんが ききました。

「うん、もしかしたら 1くみのやつらも いっしょになるかもしれないけど、いい?」

「・・・・うん」

ひろちゃんも 1くみの たっくんのおともだちと なかよしです。なのに どうしてこんなに おもしろくないのかなぁ、ひろちゃんは おもいました。

 

がっこうのおべんきょうが おわって、おうちにかえってから、めずらしくそのひは たっくんとひろちゃんは ふたりっきりで あそんでいました。

「なぁ、ひろちゃん、うらやまのたんけんしようぜ?」

「うん」

たつくんのていあんで、ふたりは すいとうとおやつをもって、うらやまのたんけんにでかけました。

いつもはとおらないみちを どんどんやまおくにむかっていって ふたりは ちいさなほらあなをみつけました。おくゆきはそんなにないけれど、だから おくのほうもそんなにくらくなくて、ふたりとも そこが とってもきにいってしまいました。

「なぁ、たっくん」

ひろちゃんが いいました。

「ここ、おいらたちの ひみつきちにしようぜ?」

ひろちゃんが いいました。

「うん、ここで げーむしたり、おやつたべたりしよう?」

たっくんも わくわくしてきました。

ふたりはさっそく、ひみつきちのなかで もってきたおやつをたべて、すいとうのみずをのみました。

「ねぇ、ひろちゃん」

たっくんが いいました。

「ここ、おれとひろちゃんの ふたりだけのひみつにしよう?だれにもいわないでさ」

「あたりまえじゃん、ひみつきちだもん。たっくんも、1くみのやつらにも ないしょだぜ?」

「うん、ひろちゃんもな。ここには ふたりだけで あそびにこような」

ふたりは ゆびきりをしました。

「おれさぁ、だれにもないしょって はじめて」

「おれも」

それは、ふたりにとって はじめての「ひみつ」でした。

「でも、おれ、たっくんには ひみつなんてなしにする」

「うん。おれたちのあいだには ひみつなんてつくらないようにしよう」

ふたりは、ひみつきちで「ちかい」ました。

そうして、なんだか ちょっとおとなになったきぶんで かおをみあわせてわらいました。