窓
正確には翌日と呼ぶようになる時間はとうにまわっていて、俺は 疲れ切って家路を辿っていた。 あいつ、もう、帰ってるんだ。 ふと顔を上げると、俺らの部屋に灯りがともっているのがカーテン越しに見えた。それはまるで、暗い道を戻ってくるための道しるべみたいだと思った。 俺は 「あったかいな」 って、しあわせな気分でそう思う。 ずっとこんなあったかい灯りが欲しかった。 一人で暮らしていた頃は、真っ暗な部屋に帰っていた。それが 淋しかったから、出かける前に灯りをつけたままにしていたり、 なんてことをしたりもしていた。でも、そんなことをしても、誰もいない部屋は、「お帰り」とは答えてくれなくって。 こうやって、灯りのともった部屋に帰って、誰かに「お帰り」って言ってもらえるって、とっても幸せなことなんだって、俺はつくづく そう思う。
そして。 たとえ、真っ暗な部屋に帰っても、今じゃ俺は淋しくなんてない。 誰かのために窓に灯りをともすことができる。 「お帰り」って誰かを迎えることができる。 俺にも誰かをあったかくすることができるってこと。 それが、灯りのともった部屋に帰るのと同じくらい幸せだって、 最近、そんなことにも気付いたから。 |