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「とりあえずさ、そんな感じでどう?」 木村は、ネットについてのある意味大雑把な説明をそんな言葉でまとめた。 「ん、まぁ・・・・」 中居は、幾分考え込みながら、とりあえずと言った様子でそんな風に答える。そしてそのまま、あぁでもないこうでもないと設定を考えはじめた。 「つまり、趣味で訪れたサイトのチャットの常連になってから・・・・趣味は何にするかな。ギャンブル関係、スポーツ関係・・・・なんかマニアックな趣味っていうのもいいかもなぁ」 言いながら手元の紙に色々と書き連ね、ところどころに下線を引いたり、上から線を引いて消したりという行為を繰り返す。そして、 「なぁ、木村、チャットのことなんだけど・・・・これって喋ってるみたいな感覚なわけ?」 顔を上げて、手持ち無沙汰にしていた木村にそう尋ねた。 「感覚って・・・・説明結構難しいんだよな。いっそ、今度一度、参加してみる?ミステリー関係のとこで、お前のファンサイトなんかもあるぜ?どう?新刊についてのチャットに参加とか?」 「・・・・それはちょっと悪趣味なんじゃねぇ?」 微かに眉をひそめた中居に 「まぁ、それ以外でもお前も興味ありそうなサイトもあるし、その辺で参加してみりゃいいと思うぜ」 木村は笑って見せた。そして、 「俺のアイディア使ってもらえるみたいだし、だったら、俺の方のお願いもきいてくれるよな」 と、当初の訪問の目的を中居に思い出させた。 「・・・・なんだよ」 忘れてくれればよかったのに、と言うのはあまりに勝手だとは思いつつも、中居は仕方なしに口を開いた。 「だからぁ、俺の仕事も手伝ってって」 「・・・・俺、すっごく時間がないんだけど?」 「だからって、約束破っていいことにはならないよな?」 木村にそう言われてしまえば中居は何も言えなくなってしまう。仕方なしに 「で、一体何があったわけ?」 中居は木村の話を聞く体制に入った。 「実は、昨日のことなんだけどさ」 木村はそういいながら、中居の目を見て話し始めた。 「隣の県のわりと田舎の方らしいんだけど、S学園高校ってあるの中居知ってる?」 「いや、知らねぇ」 すでに高校を卒業してずいぶん経っているし、しかも隣の県でもあるし、知らないのは当たり前だろうと思いつつも中居は答える。 「だよなぁ。・・・・まぁ、とにかくあるわけだよ。新設の全寮制の中高一貫の進学校らしいんだけどさ」 「新設・・・・?珍しいな。最近子どもの数が減ってきてて、どこの学校も大変だって言うのに」 「うん・・・・その辺はまぁ、俺もよく知らないんだけどね。その高校の校長が俺んとこの事務所に来たんだよね」 「わざわざ?」 「わざわざって、それ、ちょっと失礼じゃねぇ?」 わざとらしく傷ついた顔をしてみせる木村に、けれども中居はそれを無視してもう一度言った。 「何でまたわざわざ木村のところに」 「・・・・心に思ってても敢えて言葉にしない優しさって、あっていいとか思わねぇ?」 「木村以外だったらな。で、何で木村のとこに来たわけ?」 そんな風に言いながらも、木村だってそんなところからわざわざ木村の事務所にやってきたことは気になっただろうから、きっとそれについては訊いているだろうと中居は尋ねる。 「うん、何でも知り合いにうちの事務所のことを聞いたって言ってたけどね」 「知り合い?」 「ほら・・・・前さぁ、迷子の猫探ししたじゃん?」 「あぁ、あれ・・・・」 その時も何故か木村に頼まれて、木村の手伝いをしたことを中居は思い出していた。単純に迷子の猫探しだったはずが、気付いた時にはそれだけでは済まなくなっていて、とにかくそのことについてはあまり詳しくは思い出したくもない、と言うのが中居の正直な気持ちだった。依頼主には大々的に感謝される結末を迎えはしたのだけれど、あんな目にはもう遭いたくなんてなかった。 「あのうちと何でも親戚なんだって。でも、俺が思うに、それだけじゃないみたい」 「それだけじゃないって?」 「多分・・・・あまり身近なところに頼んでスキャンダルになったら困るって、そう思ったんじゃねぇかな?」 「スキャンダル??」 またしても何か嫌な予感を感じた中居だった。 85000人突破記念に続く・・・・ |