たっくんとひろちゃん2

 たっくんのもうふ

 

 たっくんには、とっても だいじなものがあります。

 それは たっくんがあかちゃんのころからずっとつかっている もうふです。ふちは もう、ほつれかけているけれど、さわるとすべすべで あったかくて それだけでたっくんは ほっとします。だから、たっくんは どこへいくときも もうふといっしょです。いつも もうふを「ぎゅっ」って しているのです。

 たっくんのママが

「らいねんから、ほいくえんにいくんでしょう?ほいくえんにいく おにいちゃんは もうふは もっていかないのよ?」

って いうけれど、たっくんは

「だったら、おにいちゃんでなくても いい。ほいくえんにも いかない」

と おもいます。いつだったか ママが ふかふかにしましょう って いって、クリーニングに出してくれたときは、もうふがかえってくるまで、くすんくすんと ないてしまいました。ママが ほかのもうふをだしてくれたけど、たっくんのもうふじゃないと だめなんです。

 

 あるひ、たっくんのおうちのおとなりに、ひろちゃんという おとこのこが ひっこしてきました。ひろちゃんはめがおっきくて、元気で、たっくんよりも ちっちゃいけれど、たっくんよりも 3かげつだけ おにいちゃんでした。

 たっくんは すぐにひろちゃんが すきになりました。ひろちゃんは すぐにたっくんが すきになりました。ふたりは いっしょにあそぶように なりました。そんなときでも たっくんは もうふといっしょでした。

 

 そのひも たっくんは ひろちゃんといっしょに あそんでいました。とってもおてんきがよくって、ぽかぽかとしたひ でした。

 あったかくなった たっくんは こうえんのべんちに もうふをおいておきました。

 ところが。

かえるときに たいへんなことがおこりました。たっくんのもうふが ないのです。なんで ちょっとのあいだでも こんなところに もうふを おいておいたのでしょう。たっくんは なきそうになりました。それをみた ひろちゃんも なきそうになりました。けど、なくわけには いきません。ひろちゃんは、ぎゅっと こぶしをにぎりしめると、たっくんをみて いいました。

「だいじょうぶだって!おいら、さがしてくるから!ぜってぇ、みつける!」

ひろちゃんは かけだしました。

 

 やがて、どろだらけの すりきずだらけになって ひろちゃんは もどってきました。

「あったべ。あったんだけど・・・・」

ひろちゃんは、なきそうになって いいました。

「のらいぬが、もってるんだ」

 ひろちゃんは、そこへ たっくんをつれていきました。

 そこに もうふはありました。おかあさんいぬと あかちゃんいぬが もうふのうえに すわっていました。おかあさんいぬも あかちゃんいぬも あったかそうです。

 おかあさんいぬは ふたりに きづいて うなりごえをあげました。ひろちゃんは びっくりして たっくんのうしろにかくれました。だけど、たっくんは おかあさんいぬと、おかあさんいぬに ぴったりとくっついた あかちゃんいぬを じっと みていました。ふたりが なにもしないようすだったので あんしんしたのか やがて おかあさんいぬはうなるのを やめました。

「どうする?おとなのひと、よんでこようか?」

 ひろちゃんは おそるおそるいいました。

「うん・・・・、もう いい」

たっくんは いぬにむかってわらいながらいいました。

「いいよ。もう、これ あげるね」

「いいの?」

ひろちゃんは しんぱいそうに たっくんをみました。

「うん。ひろちゃん、ありがとう」

 たっくんも、ひろちゃんをみました。ひろちゃんのかおは どろだらけで、あちこちに すりきずがありました。ひろちゃんは、こんなに いっしょうけんめい さがしてくれたんだ・・・・。ひろちゃんのても どろだらけでした。たっくんは もうふのかわりに ひろちゃんのてを ぎゅっとにぎって おうちにむかいました。