冷たい空の銀の星

冷たい空の銀の星
　

良くも悪くも俺は感情が表に出やすいタイプだと言われている。

反論はしない。楽しければ、やっぱり思いっきり楽しみたいと思うし、面白くないときに、無理してまで笑いたくはないと思うから。（まぁ、俺がそんなだから、中居は逆にこれまで感情を殺さなくちゃならないことが、何度もあったんじゃないかって気もするし、それに関しては中居に申し訳なかったって思うけれど）

　

だから、実際、こんなのはダメなんだ。

長かったコンサートツアーのラスト。

メンバーが順にあいさつをしていって。ほら、吾郎のヤツなんてもうかなりきちゃってるし、慎吾もそろそろやばそう。そう言う俺だって人のことは言えねえよな、って思う。っていうか、まわりがそんなだと気付いちゃったら、ますますやばい感じ････。

しかもさぁ、ここにきて歌う曲が、「ＢＥＳＴ　ＦＲＩＥＮＤ」だぜ？なんか････もう。

中居が最初のパートを歌い出す。

････いや、歌い出そうとして、できなくなった。声が掠れ、そして声にならなくなって、中居は汗を拭くために肩にかけてあったバスタオルをうつむいた顔に押し当てた。

中居が泣いてる。

　

なんか一瞬、俺の頭の中、真っ白になっていた。

　

いつだったっけ、中居のいないところで慎吾と剛が、「なんだか中居くんって、時々、僕たちのお父さんとか、お母さんとかって感じがする」なんて言ってたことがあった。そりゃまぁ、あいつらにしたらガキのころ色々世話されてきてるから、そう言う気持ちになっても仕方ねぇかもしれない、とも思ったけれど。それにしても慎吾は五歳下、剛にしたら二歳しか離れてねぇって言うのに、そりゃねぇんじゃねぇ？ってことも、俺は思っていた。

だけど、俺もしんつよと大して違わねぇんだなぁ、なんてことに気付かされた一瞬。

ちっちゃな子が、「僕が泣くみたいにママは泣かない。ママは僕とは違うんだ」って何の根拠があるわけでもないのに、信じ込んでいる感覚ってあるじゃない？結構歳がいくと、親だって自分と同じ人間なんだから、悲しいときには泣くし、むかつくことだってある、ってわかってくるもんだけど。中居の泣くのを見て、軽くパニクってる感覚って言うのは････ガキの頃のそれに近かったと思う。

俺は中居とは同級生だから、ってそう言いながら、さ。

　

中居が静かに泣く。時々、肩にかけたバスタオルに顔を埋めるようにして。

見つめていると、どんどん胸が苦しくなるから、視線をそらすように空を見た。冷たい夜空に銀の星が一つ見えた。もちろん気のせいかもしれないけど。

　

「ごめんな」は違うと思った。だけど、ステージの裏に戻ったら、「お疲れさま」ってそう一言伝えたかった。