ダイビングコーナーコラム 2 −マイギアに関しての考察−

 (1)マイギアは持つべきか?コスト編
 いまだに、ライセンス−−Cカードという。詳細は下項を参照のこと。−−を所得しようとする際に、器材といわれる7つ道具をそろえるよう強制するショップが点在する。
 ライセンスだけのつもりが、高い(かどうかも定かでないが、少なくとも自分の思っているより多めの出費になっているはず)ローンを組まされる。
 下手をすると、はんこを押すまで返さない、といった、悪徳商法まがいのショップすらあったと聞く。
 そこで、ランニングコストなどいろいろな面を考えて、マイギア(自己所有器材)は持つべきかどうかについて考えていく。
 まずは初期投資。激安セットなどが量販店で売られたりもしているが、ここでは一般的な価格として、重器材 25万円 軽器材 5万円とざっくり見積もる。
 因みに重器材には、BCD/レギュレーター/ウエットスーツが、軽器材にはマスク/フィン/ブーツ/メッシュバックを含む。
 そして、自己購入したレギュレータやオクトパスには1年に一度の点検が必要。これがほぼ1万円前後。これは使っていなくても発生する。
 もちろんダイビングに行くための費用も忘れてはならない。一回2本で足代込みで3万弱はかかると見ていい(いわゆる「ガイド付きファンダイビング」の料金を含む。)
 ということは、1年10本(1月1回)潜るとして100本潜るまでにかかる費用は、すべて自前でそろえると
          (25+5)+(3×100/2)+(1×10)= 190万 !!(10年間の総額ですからお間違えなく)
 もし、器材すべてをレンタルでまかなうとすると、フルレンタルでは5000円〜10000円程度のところが多いので、中を取って7500円とすると
          0.75×100/2 +(3×100/2)  = 187.5万
 これを軽器材は自己所有とすると、重器材のみのレンタルだと少し値段が下がる。大雑把に5000円として、
          5+0.5×100/2+(3×100/2)  = 180万

 僅差となり、余り費用の差額が現れない結果になったが、それは当然である。つまり「10年趣味が続いている」という特殊事情だからである。
 実は10年も続いているなら年間10本(5回だけ)で終わるわけがない。私が会った人は初年度に80本近く潜っていった人もいる。
 もしこの人が10年同じペースで潜り続けていたとしたら800本!総額は順に、1240万、1500万、1405万となる。逆に1年目で終わってしまった場合、
 当然器材購入組が割高になる(順に45万、18.75万、22.5万)。
 
 趣味としてはじめるときに多大な出費が必要になる、というのはどう考えても本末転倒である。まして、カードも所得し、超アクティブなダイバーになるというのなら
 話は別だが、そういう縛りを初心者にするのはいただけない。
 結論から言えば、マイギアを「持ちたくなる」まではレンタルなどでしのいでいくほうが得策である。初期投資が少なく、面倒なオーバーホールもしなくて済む。
 「重器材買ってね」とばかり言うショップとはお付き合いしないほうが得策である。
 
 
 (2)マイギアは持つべきか?メンタル編
 ダイビングは、道具に依存する部分が多い趣味である。水着さえあればできる水泳とはちょっと違う。
 しかし、趣味としてはじめた以上、『道具をレンタルばかりでやり続ける』ことには限界があるように思う。
 なんとなれば、「常に同じ状況が作られるわけではない」からである。レンタルの一種不安材料は、必ずしも慣れているメーカー/器材で潜れるとは限らないことだ。
 このことは、陸上のスポーツと違い、下手をすると致命的な事象を起こしてしまう可能性すら秘めている。
 そこで考えて欲しいのは、上記の3本の式である。
 10年続ける/100本は潜ると仮定した式だが、すべてレンタルでこなした2番目と購入してメンテナンスをした1番目の式では、その差はわずか2万5千円!
 ということは、1年間で差額は2500円・・・。この差額を保険と見ることは出来ないだろうか?つまり器材の不慣れによる操作ミスをなくす「保険」である。
 そう考えると、未来の事は分からないにしても、「しばらく趣味として捉えてみよう」と思うのなら、この出費はそれほど高くないとも言える。
 しかし、そう思えるようになるのか、はやはりその人の趣味に対する考え方もあると思う。
 
 結局器材に関しては、「買いたいなぁ」と思ったときが買い時であり、それはおそらく「レンタルばかりでやってもなんか物足りない」と思ったときだと思う。
 そう思えるのは、講習が済んでしばらくしてから。つまり、ファンダイビングを数本こなしたころだと思う。ここで「欲しい」と思えるのならおそらく趣味として長続きするはずである。
 購入する初期投資がないというのなら、ネットオークションでとりあえずのBCをゲット、そしてそれに見合うオクトパスも中古でゲットし、ウエットなど小物はちょっと貯金でもして
 自己所有すべきである。軽器材は、向き不向き/マスクのレンズの度付き度なしもあるので、自己所有を薦めるショップも多いのはそのためである。
 
 (3)マイギアはいつ買うべきか? 重器材編
 再掲になるが、重器材と呼ばれるBC/ダイブコンピュータ/レギュレータ等は「始めてすぐに買ってはいけない」といってきた。
 理由は簡単。「買うことによるリスク(長年する気がないなら高い買い物になる)」を説明したかったからである。
 たとえば30万円もの器材を買っても10本しか潜らないなら、1本あたりの器材費用は3万円。ちなみに10本は講習/カード所得までに
 かかる本数とほぼ同数である(ADVANCEまでの場合。いわゆるオープンウォーターレベルなら4本で十分)。
 もしダイビングに対する熱意がカード所得とほぼ同時に潰えたとしたら…。購入した器材はただの無用の長物になりかねない。
 何度も言うようだが、ダイビングショップの門をたたいたと同時に「器材を買って講習スタート」という流れは危険極まりないのである。
 ではどのタイミングで買うべきか?
 答えは「買いたくなったとき」である。
 では買いたくなるタイミングは存在するのか?それはいつなのか?その答えはユーザー自らが出すしかない。
 正直言って、メンテナンスも面倒なのでレンタルでやり続けるという手もなくはない。しかし、マイギアを持っている私からすれば、
 「そのマイギアたちが、海へいざなおうとしている」ように感じることもしばしばあるのだ。
 特にメンテナンスの必要なレギュレーターは海に行かなくても毎年目にするはずである。これを引っ張り出すだけでも十分意味がある。
 持っていると行きたくなる。当然本数もこなすから面白みも増してくる。これこそがいい趣味の循環なのである。
 この循環が生み出されようとするときに重器材は買うべきである。

 (4)マイギアはいつ買うべきか? 軽器材編
 重器材は確かに大枚はたいて購入せねばならず、買い時は正直迷うところである。
 しかし、軽器材となると話は別である。なぜか?たとえばマスクの場合。コンタクトを常時していない矯正の必要な人は(要するに常にメガネ派)、
 度入りレンズの入ったマスクを購入しなくてはならない。これはさすがにレンタルで扱いがあるかどうかは微妙だ。
 グローブやブーツなどは、どこの誰が使ったか分からないようなものを装着するというのに抵抗ある人もいるとおもう。
 極めつけはウエットスーツ。レンタル品は既成サイズがほとんどなので、どこかがゆるかったりきつかったりするはずである。
 つまり、重器材は直接肌に触れるものではない(レギュのマウスピースは例外)し、レンタルでも悪くはないが、
 身につけるもの…言ってみればユニフォームまでまったくの借り物ではカッコがつかないと思うのだ。
 また、軽器材は講習の時に買うことを勧めるショップが大半である。特に視力を矯正している人はかなりの確率でマイ軽器材を持つように
 言われるはずである。それはショップが対応できないこととも関連する。度つきは無用の在庫になるからだ。
 私の考え方を言うなら、マスク/フィン/ブーツ/グローブは講習の時に買うべきだと思うし、ウエットスーツにしても、
 フルオーダーといわないまでもマイウエットは安くてもいいから一着は持っておきたい。それだけでも海に対する心構えが変わってくる。
 趣味にはお金は必要である。使うべきところを見極めて出費することが肝要である。

 (5)「上」の資格は必要か? 
 ダイビングには、いわゆるライセンス−−−公的免許ではなく認定団体の認定証。「Cカード」の「C」は技能認定(Certification)の意味−−−が必要である。
 ちなみにNAUIという指導団体では、最上位に当たる「DIVEMASTER」に至るまで、このようなシステムを採用している→こちらを参照のこと
 ここで言う「TRY SCUBA DIVING(体験)」と「PASSPORT DIVER」は本格的なCカードではない。Cカードはその次の「SCUBA DIVER」からの発行になる。
 そこで、よく話題になるのは、「これから先の資格は必要なのかどうか」ということである。
 私の場合、店の言いなりとはいえ、いきなり次のステップ「ADVANCED SCUBA DIVER」までの講習をチョイス。もちろん所得した。
 しかし、ここでの店側のアプローチはあながち間違いとはいえない。私をはまらせようという意思が見えたからである。
 もちろんADVANCEを取っていないとできないことがいろいろあった。今ではこの強引ともいえる店側のやり方には感謝している。
 
 結論から言うと、「ADVANCEは努力目標だがCカードを取る気なら遅滞無く所得するべき」である。もっとも呼称はそれぞれの団体によって違うのでご注意を。
 ではこのADVANCEはあるのと無いのとではどう違うのか?ある場合の利点を述べると、以下が挙げられる。
 ・深度30m前後までのダイビングが可能になる(SCUBA DIVERでは厳密には18mまで)
 ・ボートダイビングが出来る(SCUBA DIVERではすべてビーチエントリー)
 ・スキルアップが図れる
 
 そして私が「遅滞無くとるように」勧めた理由は、今までの延長線上にADVANCEもあるという風に理解したほうが飲み込みが早いと思ったからである。
 運転免許と同じで、勘所がつかめたところで次のステップ、は道理にかなっている。勿論できることが増えるのだからやらない手はない。
 ではそこから上はどうなのか?ここから先は本当にこの業界で生きていこうと思っている、コアな人にしか必要ない資格ともいえる。
 ぶっちゃけたはなし、Cカードだけで世界中をまたにかけている凄腕水中写真家もいるし、ADVANCEがあっても活用していないなら取らないほうがましである。
 あとは以後の趣味のはまり具合と財布の中身との相談ということになる。

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