ダイビングコーナーコラム   その4 発想の転換
 
 (1)カード至上主義にとらわれている業界
  ダイビングを始めるためには、基本的に、OW(オープンウォーター/一応の免許皆伝の証)資格が必要とされる。
  しかし「コレだけではできることが限られますよ」といわれて、AD(アドバンス/指導団体によっては名称はいろいろ)まで取らせようとするショップは意外と多い。
  実際、私がそうであった。とは言うものの、もし仮に、そのとき断って、あとでADを取ろうと思っていたかどうかは正直わからない。
  「面倒だし、限定解除的な上の資格は持っていてもいいな」と言う認識があったことは想像できる。
  しかし、まだまともに自分のことも出来ていない状態でカードばかりを取らせるというやり方は、果たして有用かどうかは難しいところだ。
  そもそも、『Cカードが安価で取れる』と言う釣り文句で誘っておいて、重器材のセールスにはや代わりしてしまう店ばかりでは、業界のパイが広がるわけがない。

  また、いろいろな資格がダイビングには存在する。ダイブマスター/レスキューダイバー/スペシャリティーなどなど。
  さまざまな資格所得には、ダイビングそのものもしなくてはならないし、教材も買わないといけない。『カードが資金源』になっている部分は否めない。
  その一方、カード集め/資格所得が目的になっているという人もいるだろうし、そのことを責めたり断罪する気は無い。
  ただ、上の資格をやたら取るように勧めるショップは要注意である。

 (2)体験ダイビングがこう変わったら?
  入り口としての体験ダイビングは、実は非常に重要な意味を持っている。
  「ダイビングが自分の身の丈にあっている趣味かどうか」を見極めることが出来るからである。
  ところが、日本での体験ダイビングの場合、「個人で何でも出来ないとだめですよ」とばかりに、一定のスキルを要求する。
  当然中性浮力なんかできるはずも無く、どちらかというと「入れた」レベルであり、「楽しくない」と感じてしまう人も少なくないといえる。
  実は、ここが今重要なのではないか、と思えるようになってきた。

  水中写真家の赤木正和氏のブログで、トルコでの体験ダイビングの模様が詳報されている。→こちらがその記事
  面白いことに、体験者の背後に回って浮力調整を行い、水中遊泳感を満喫させる、というものなのだ。
  そもそも、今までの日本のやり方は、「ダイビングの入り口を体験する」だけに終わっている。しかしこのトルコの場合だと
  「ダイビングの楽しさを体験している」事に間違いない。同じ体験でも全然違う。
  この違いが、もしかすると、玄関口まで来てくれた、興味を持った人を引き込めるか帰してしまうかの分かれ目のような気がする。

 (3)セルフダイビングは是か非か?
  ダイビングという趣味は、必ず、2名以上がチームを組んで行わないといけない。野球が9人/サッカーが11人という人数制限はないものの、
  「シングル」でのダイビングはご法度とされている。
  昨今、自分の知っている海況であれば、ガイドを伴わずに海中散歩が出来るという「セルフダイビング」が脚光を浴びている。
  もちろん、ガイド代が軽減されるため、お安く潜ることはできる。しかし、その反面、完全自己責任となり、不慮の事故が起こった場合の責任の所在などは
  非常に判断が難しくなる。
  
  さてタイトルにした「是か非か」という部分で言えば、僕は「非」のほうである。
  理由は簡単である。「水中という非日常の世界だから」である。何が起こっても不思議ではないと感じているから、経験豊富なガイド氏と一緒に行動を共にするのである。
  もちろん、自身のレベルが上がってなおかつ組むペアの人がそこそこであるのならばそういう選択も無きにしも非ずであるが、それでも「万が一」を気にするものだ。
  金魚の糞状態でやっていても上達は難しい(特にナビゲーションなど)のも承知の上だが、そのレベルに達していないものがセルフなどというのはおこがましい。
  最終的な到達点はそこであっても、今はその位置にいないことを認識しているから、この件に関しては「否定的」なのである。
  もっとも、セルフダイビングそのものを否定しているわけではないので念のため。

 (4)冬をどう生かす?
  海水に触れる趣味といえば、ダイビングのほかにサーフィンやジェットスキーなどがある。
  しかし、そのいずれも、海水温/気温が下がる晩秋〜初夏までは事実上趣味として開店休業状態になる。
  猛者は、冬場の荒れた海でも波を捕まえようとしておられるようだが、ダイビングでも冬場の客足は激減する。
  陸上のスポーツと違い、季節限定の趣味にならざるを得ない。それが、また、趣味として成立しにくくさせている部分でもある。
  もちろん、ドライスーツという、体のぬれない装備もあるにはあるが、いかんせん、かなりの高額である。
  しかし、ここで「レンタルで潜ってみる」という選択をするということもありなのである。
  また、一部のショップでは、冬場での活動を前提に、ドライスーツを機材購入の際に推奨しているところもあるようである。
  冬場だからこそ見られる景観/魚類もいるはずで、また、本来趣味としてやり続けるのなら季節は気にしないでできるほうがいいに決まっている。
  冬「だから」潜る。暇なときだから行ったことのないポイントにチャレンジする。
  冬場を体験した筆者が言うのだから間違いない。今まで素通りしてきた数年分の冬がもったいなく思えるに違いない。

 (5)失敗しにくいショップ選び
  このコラムの最終項目として、またしても「ショップ」を選んだ。今回は、すでにカードも所得しおえて、ファンダイビングをするにあたり、選ぶ現地サービスと言う視点である。
  世の中にあまたとあるダイビングショップ。とくに著名ポイントとなるとそれこそ「石を投げれば」レベルで店が林立しているところすらある。
  実はそういう地域でこそ、競争=客の奪い合いが発生し、勢い、勝者/敗者が鮮明に色分けされてしまう。
  勿論われわれが選ぶべきは「勝者」側なのだが、勝者には特徴がある。
  普通にお客さんが多く、それに対応できるスタッフも十分に配置されていると言う点である。また、「数でこなせる」ため、すべての料金がやや安価であればなお間違いない。
  たとえば、2ボートレンタルなしで1万円を切っているショップは「勝ち組」側の可能性が高い。勿論、HPが充実しており、最低でも週一クラスでの更新がある/スタッフブログがある
  と言った、活気の感じられるショップであれば、ほぼ「店選びを間違った」と言うようなことはないと思ってもらっていい。
  それでも所詮は「人」の問題。海況と同じで当たり外れは世の常である。「失敗しにくさ」を習得すれば、そうそう「外れ」を選ぶことはないだろう。
  客観的な指標として、ダイビング雑誌の人気ショップランキングも、あながち間違っているともいえない。イコール来客が多くプラス評価をしている人が多いから票が集まるのだ。
  
  ←コラム5「海外器材を採用すべきか否か」を論じてみました。