銀河漂流 バイファム 概論
 
  放送回解説 その1  1話〜6話
 
   第一話   「異星人来襲!!  開拓星より全員脱出せよ」

 初回のスタートは、どんなアニメーションにおいても、重要な位置を示している。これから見続けてもらうための、いろいろな「秘策」をこの回にぶつけてくるからである。
 このアニメーション−−バイファムで言えば、まず、クレアド星にあった、遺跡様の建造物の発見から始まる。当然の事ながら、この回よりしばらく、この遺跡自体の登場も、効能もはっきりしない時期があったのもやむを得ないところだろうか?
 「第二の地球」と称して、開発を進めようとする地球側に対して、「以前に地球外生命体がこの星に手を加えていたのだから、やめるべき」と真っ向から対立したのが、クレーク博士と、助手のケイトであった。もちろん、そんな学者の意見に耳を貸す軍人などいない。しかし、ここで事態は急転直下する。
 異星人の攻撃である。衛星ステーションは一撃で宇宙の藻屑と化し、シャトルは格好の標的にされた。幾百の機動兵器をひっさげ迫りくる大軍団...クレアド星、危機一髪である。
 そんなさなか、ようやく、主人公たちが顔をのぞかせる。ロディとフレッドの兄弟である。初回から、この二人の位置づけがきっちりなされている。フレッドは読書家の、結構おっとり派。一方のロディは、活発な感じのする、普通の中学生といった趣である。ここで、3人目となる、ペンチも登場する。彼女も読書家の、文学少女と言った雰囲気を十分に醸し出している。
 そして、敵襲のサイレン。軍司令部も右往左往の有様。敵機数のあまりの多さに、軍司令部は本土決戦を決意、民間人たちを全員避難させるよう指示を出す。もちろんロディをはじめとする子供たちもそうである。
 開拓民として新天地に腰を落ち着けたばかりの彼らを襲った、異星人の襲来。以後、彼らの「ユニフォーム」がこの時点から決定づけられていく。一応、ロディの父親は、声だけとはいえ、存在が確認されているが、ペンチについては、それがなかった。主役と脇役の扱われ方の違いであろうか?
 基地に着いた彼らを待っていたのは、敵機からの容赦ない砲弾の雨霰であった。ついさっきまで乗り込んでいたバスにも被弾、あげく真後ろのシャトルにも。爆発と噴煙、阿鼻叫喚の地獄絵図の中で、ロディが見たものはいったいなんだったのだろうか?
 格納庫に一時避難するロディたち。ペンチの姿を見つけてほっとするも、シャトルに乗り込むのに手間取る。元はといえばフレッドの意気地のなさなのだろうが、このあたり子供であるという雰囲気の演出が光る。
 そうこうするうちに博士たちも合流、遺跡も積み込んだシャトルはスクランブル発進し、何とかクレアドからの脱出に成功できたわけである。
 実は、子供たちの教育センター的教官からの召集で集まった子供たちは10数名いたはずである。しかし、シャトルに乗り、次のステージまで駒を進められたのは、ロディ、フレッド、ペンチの3名だけ。ということは・・。この、恐るべき、淘汰と「運」を勝ち取った、登場人物ならではの特典と、それに倍する犠牲の多さを浮き彫りにしている。
 かくして、物語はそのページを開き始めたわけだが、あの遺跡の役割は?登場人物たちのこれからは?など、連続ものによくある、材料を「寝かせた」ままで終わらせてしまう手法を取った。今後の展開に期待せよ、といったところだろうか?

   第二話   「緊急発進!!  傷だらけの練習艦ジェイナス」

 連続ものとして、スタートしたアニメーションの宿命は、何度もこれから言うことになるだろうが、「いかに飽きさせないか」という一点に絞られる。そのために、様々な細工や仕掛けが必要になってくる。
 既に犠牲者を多数だしている地球側であるはずなのに、いざ司令部をのぞいてみると「まだ着いていないのか?」と緊張感のない受け答え。民間人を送り届ける重要な任務を負っているはずの艦長ですら、冗談混じりの口調でしゃべっている。実はこのことが後々響いていく。
 一方、民間人の方は、ジェイナスへの乗り込みを次々に済ませていた。そして、10人の子供たちが、まさに運命の出会いを果たす。実は、ロディたちはどこからやってきて、云々という事は、ほぼ知っているわけだが、マルロやルチーナたちがどうやってここまでたどり着いたのか、という、細かいところは全く明かされていない(ロディら3人をのぞく全員。クレアド星にいたと思われるのだが、やはり詳しく知りたいところ。実は、続編に当たるバイファム13では、このあたりの記述もなされているのだが、ここでは、謎解きの題材がないものとして、「考察」にて解析を試みている)。さらに、ケンツの暴走振りには目を疑う。
 確かに、軍人一家の出らしいコメントは説得力があるが、知識が偏りすぎている。極めつけは、「無重力バリアの存在を知らなかった」ということだろう。結局、軍や軍艦、装備のことなど、知っている奴を解説者に回したかった、裏打ちマシン的な役割でしかなかった、ということだろう。しかし、以後、ケンツの役割は良しに付け悪しきに付け、急進していくのである。
 多数の犠牲者を又生み出しながら、ジェイナスは、一路、ベルウィック星に向かっていく。
 最後に艦長代行となった、中尉の声明文で、この回は幕を閉じる。
 『報告致します。本艦は、正常に、ベルウィック星へ向かうべく、航行中であります。本艦は、過大なる損害を受けましたが、現在、応急修理中であります。又、今回の戦闘で、多数でた、尊い犠牲者に対し、深く哀悼の意を表するものであります。尚、本艦の乗員総数は32名、うち、未成年者10名...。以上であります。』
 
  第三話   「生存確率 0.29% 絶望への挑戦」

 既に三回目にして、前途悲観的な結末しか見えてこない、ジェイナス号の旅路。乗員は、戦闘可能人員数が30名以下になるなど、まさしく、危急存亡の状況に達していた。
 しかも、この限られた人員で、ベルウィック星までたどり着かなくてはいけない。もう一度敵に遭遇したら・・。前話でロディが口走った言葉が現実のものとなるのも時間の問題だった。
 窮余の一策として、全大人たちが戦闘部署に着くことになる。もっとも、このシーン、若干の問題をはらんでいた。詳しくは、「重箱の隅」を参照いただきたい。
 さて、前話でも、トラブルメーカーぶりを如何なく発揮したケンツであったが、この回でも、子供たちの先頭を切って、発言をした。志願である。しかし10歳という年齢も災いして、一笑に付されてしまう。もちろん、子供たちはキッチンに閉じこめられたような状態になってしまう。
 そして、いよいよこの回から、子供たちの交流が始まる。最初のきっかけは、やはり食事だった。ちなみに、中継ステーション出発から、既に2日あまりが経過しているはずで、食事のシーンがでてきていてもおかしくはない。そして、そろそろと、感情のぶつかり合いが起きてくる。マキとケンツという、きわめて珍しい組み合わせの言い合いが険悪なムードを醸し出す。止めに入ったスコットだったが、逆に志願しなかったことをつっこまれてしまう。そして、その、平和な言い争いで済んでいたジェイナスを、執拗な敵はやはり追いかけてきた。
 なれない砲座に座る民間人たち。しかし、敵戦力の圧倒差は比類がなかった。出撃した機動兵器も次々消滅させられていく。もちろん、戦闘に加わった、民間人たちも凶弾に倒れていく。
 一部の子供たちは、艦のオペレートを担当していた。
 「だめです」スコットの声がブリッジに響く。30分後には、誰もいなくなると言うのだ。「馬鹿なことを」つぶやきながら、博士はシミュレートする。
 「生存確率 0.29%..」。まさにタイトルそのままである。そして、艦を途中まで任された中尉は、「特攻」する事でその確率から逃れようとするのである...。

 「機械に人間の意志など、量れるものではないだろう」博士は沈み行く、敵母船を見ながら、こう嘆息する。未だに、ファジーだ、なんだといってはいるが、このアニメーションが登場した時点から現在に至るまで、コンピュータ自体はそれほど進化していないのではないか、と思ってしまう。
 さて、主役の子供たちなのであるが、食堂から全員、どういう訳か「脱出」、ブリッジに集合していたため、難を逃れている。この部分、かなり説明不足だし、「生き残す」為に、わざわざブリッジに集めたとしか考えられない。ともあれ、戦闘が終わってみると、軍人2名、博士とその助手、そして10人の子供たち、計14名しか残らないことになってしまった。話の流れから言って、もう、軍人も死ぬことが予想されるわけで、ますます窮地に追い込まれる子供たちの運命やいかに?!というところで、終わってしまう。

  第四話  「ベルウィック軌道へ!  地上基地応答なし」

 とにかく、何とか、ここまでやってこれた平均年齢25歳程度のわずか14名の一団とジェイナス号。しかし、今までの展開から言って、素直に父母がいると思われるベルウィックへ着けるとは想像もしていないだろう。
 前半では第二ステーションへの誘導と、そこで見つかった、これ又子供の避難民の発見という、「次」を予感させるストーリーとなった。実はこの部分、さほど書くべきところはない。というのも、すすみ具合があまりに事務的、手順をおいすぎなのである。
 しかし、この部分を見ている限り、マキのオペレート能力はかなりのものがあると、推察できる。又、相変わらず、ケンツはトラブルメーカーだが、怪我の功名というか、無茶な発砲が、カチュアたちを見つける手助けになったようなものだ。

 さて、4話目にして、以後のストーリーのキーパーソンとなるべき人物が、ジェイナスに乗り込んできた。笠原氏のデビュー作(よく、こんな、準主役の地位を勝ち取れたものだ。ランク的にも8番目ながら、ストーリー上では、彼女はなくてはならない存在である)ともなったこの作品での彼女の第一声は、あまりにへたくそで、書きたいとも思わない。
 そして、子供たちは12人になったわけだが、増えた人数分、ちゃっかり、返しがあった。ベルウィックに偵察にでた軍人2名が消息を絶つのである。留守を預かる博士は、アゾレック基地への強行着陸を試みる。これには、敵にその存在を知られることなく無事に終えたが、彼らを出迎えたのは、ぼろぼろの基地周辺の建物である。唖然とする一同。ケンツの驚きぶりがもっとも目を引く。と、そこへ弾着。残存部隊の、肉弾戦に出くわす一行。見ているだけしかなかった彼らだが、片足を悪くしたディルファムによって、窮地を逃れる。
 そして、その足の悪いメカに乗っていたのが、これ又14歳の少年なのである。これで、子供たちは全員そろったことになる。
 
 この回は、正直なところ、最後の顔合わせがメインで、「いよいよ本格的にスタート」という感じのする回という印象が強い。そのかわり、やや、演出に凝った部分が多く見受けられた。
  
  第五話  「憧れの操縦席 ラウンドバーニアン 始動」

 既に、幾百もの犠牲者の上に、生かされている、13人の子供たち。実際のところ、そういった悲壮感が全く感じられないのは、「明日には何とかなるさ」的な、子供的発想があるからだろうか?アゾレック基地に到達してから、1乃至2日はたっていると想像される。いってみれば、焦燥感がないからこういった態度になるのだと思いたい。
 しかし、子供たちの動きは、なぜか好戦的である。軍オタクのケンツがそうであるのはまぁ、ともかくとして、ベルウィック星の唯一の民間人生存者でもある、バーツまでが戦闘兵器を操縦していこうと提案する。結果として、以後、ロディとバーツという名コンビが誕生することになるのだが、やはり、あまりに状況の進み方が性急すぎる感も否めない。
 一方、事態打開をはかったクレーク博士は、単身、ジワイメルゥ基地に乗り込む。しかし、実はここも、クレークの見込み違いであり、結果的に又、子供たちは生かされることとなるのである。
 うまく基地とコンタクトのとれた博士ではあったが、敵襲を受けてしまう。輸送機は、右エンジンに被弾、岩場に激突し、一命を落としている(はずである。実は、その次の回で「死体は一体もなかった」という下りがあり、ひょっとするとの観測もあり得る。しかし、たかっていたハゲタカの群が、乗員全員死亡を想起もさせる)。
 そうとは知らない、子供たちは、各自めいめいの行動をとる。特に、ロディ・バーツの両名は、シミュレータで機動兵器のオペレーションをマスター、ロディに至っては、射撃訓練まで始めたいという始末。まぁ、子供のほんの遊び的な部分もあってのことだろうが、まるで以後の自分たちの運命を知っているかのようである。
 博士からの最初の通信で、地球にいけることがわかり、大喜びする一同。しかし、その直後、あまりにも悲しい悲報が彼らを襲うとは、予想だにしていなかったことだろう。バーツのアップ「地球か..」で締めとなったが、実際、ここに登場している全員が地球を知らないと予想され、バーツの一言にも重みが感じられる。いずれにせよ、何とかなった、という安堵感からでた一言だろう。

  第六話  「博士をさがせ! 異星人との遭遇」

 ジワイメルゥからアゾレック基地に向かっていたクレーク博士の遭難。前回で、その断片的な部分は既に紹介されていた。右エンジンに被弾した輸送機は、岩場に激突、爆発炎上した。
 そうとは知らない子供たちは、第一報で「地球にいける」との連絡を受け、小躍りしていた。もちろん、司令室にも、喜色満面で入ってくる。しかし、影を落とすケイトの顔色が、状況の変化を物語っていた。ここで、ロディのアップ。さすがは主役だ、といいたい。
 博士の捜索を提案するロディたち。ジープ一台で砂漠越えを敢行、遭難地点である、バルチカンを目指すことになった。子供たちの間にも、博士に異変が起こったことはこの彼らの行動で筒抜けとなってしまった。不安を打ち消そうとするクレア。苦しいいいわけである。顔の表情がつらい。
 その途上、バーツの身の上話がなされる。実のところ、初回にでてきた3人以外は、どういう状況下で脱出したのかという事が不明である。ここで、バーツがかなりのカーマニアであることがわかるのであるが、この片鱗を見せてくれるのが第10話で用意されている。とはいえ、これだけの要素で、ディルファムが操縦できるという、決定的な証左にはならないのだが・・。
 オアシスでキャンプする3人。ここは、実は、以後に製作された、番外編「ケイトの記憶 涙の奪回大作戦」の、重大な伏線になっているという、きわめて重要なシーンである。ロディとバーツが、まさに裸のつきあいを通じて、友情を深め合う、といういいシーンでもある。
 翌朝。バルチカンの廃墟にたつ3人。程なく、ぼろぼろになった輸送機が発見される。たかるハゲタカが、死者がいることを暗示する。敵機が状況を確認にくるが、ロディたちは、彼らに所在を知られてしまう。逃げる彼らを執拗に追いかける敵機。主役の弱みか、ロディは敵機に追いかけられてしまう。あわや、というときに地球軍の援軍に、九死に一生を得る。
 しかし、彼らを待っていたのは、地球軍の冷たい対応だった。事故機の前にたたずむケイト。クレークの遺品になってしまった、バックを見つけたケイトに声もない、ロディ。遺跡を前にした写真をケイトの前に置き、立ち去るロディ。おいしいシーンである。
 この回で、バーツがはいた、「基地にはまだ仲間もいるんだゼ」は、このストーリー中、始めてでた『仲間』という言葉である。非常に重いキーワードでもある。