銀河漂流 バイファム概論  事 象 考 察

  第9回:もしも半年打ち切りが既定路線だったとしたら・・・。「半年版:バイファム」の可能性を探る

 放送終了から20年近く。当時としてもそれほどヒットした部類に入らない「バイファム」を研究し続けているわけであるが、逆に言うといろいろと示唆の富む解釈のできる「エヴァンゲリオン」などはここまでの解析の対象にはなりえない。
 そして、またしても議題が持ち上がったのである。
 そう。ケンツの発言が「もし」現実のものとなっていたら、ということである。ケンツがルチーナの誕生会の席上でぶったセリフはこうである(45)。
         『では一言。顧みますれば第一次クレアド戦役から早半年、悪辣卑劣なる敵ククトニアン政府軍は…(略)』

 放送回としては、45話に当たり、最終盤でのケンツの一言は、これまでただ単に日付がぞんざいに扱われていたのだとすればスルーされるべきところである。しかし、実質、全てのストーリーをつなぎ合わせると、「本当に半年の内容」なのである。それは「事象考察第8回」でも明らかにされている。
 さて、半年でストーリーを再構築しないといけない、と考えるときに、不要と思われる放送回が存在することは明らかである。ただ、登場人物の出現/消滅・新キャラ/新アイテムの登場などが含まれる放送回は整合性を考えると当然不要視できず、クルーが物理的に分かれて行動せざるを得なくなった30〜33話もはずすことはできない。また、ストーリー的には不要でも、わずかに「残すべき情報」が入っていれば消去は難しくなる(19話ははっきり言って埋め草なのだが、例の異星人の交信を傍受するというイベントが存在。これがククト星での偽装工作にも応用されているとの判断があり、大筋では不要でも、この工作を仕掛けたバックボーンとして重要という判断が働く。また20話も戦闘内容はたわいないのだが、22話でローデンに戦闘してきた内容を告白する必要から戦闘していないとつじつまが合わないためはずせない)。
 では薄めた46話を23話に凝縮できるのか?超難題に小生が取り組んだ。

 さて、その前提条件として、今回、いろいろな方法を考えた。
 @ストーリー上入っていた日付を生かす案
  これを取り入れてしまうと、13話以降のわずか11話でストーリーを完結しなくてはならなくなる。いくらなんでもこれは無理だし、そもそもベルウィック星で道草を食いすぎているのにそこを端折らないと半年という限られた期間内に話を終わらせられない。
 A1話そのものを独立して考える案
  たとえば37/38話は話を長く持たせるための延命策とも受け取れる。39話も本筋とは全く関係ない。半年に凝縮するには30分の内容そのままを使う必要性はないと考える。

 そして考え付いた手法はこれである。
 「早送り/ピンポイント描写手法」である。
 簡単に言うと、「46話を23話に凝縮する」そのままのやり方である。もう、放送内容は一切抜きにして、46話分/ほぼ20時間(1話は20分少々しかない/DVD9枚に収まったのが何よりの証拠)を10時間分に必要な部分を抜き出し、再編集するというやり方である。
 これをすれば、12話のまさに時間稼ぎも不要になるし、ベルウィック星での5話の大半/各個人の描写に力の入っていた17〜21話の大部分が要らなくなる。それでいて、要る場面ばかりを抜く形になるのでストーリー上の不具合は極力減少することになる。
 勿論、この構成に作り直すためには、さまざまな困難が待ち受けている。特に「12話」で日付入りのエンディングになってしまっている点はそうだ(これをやってしまうと、再編集は困難どころの騒ぎではなくなるのです...)。だが、ここもクリアするとして、作業を進めることにする。

 1話:ここでいきなりジェイナス搭乗までを書ききる。
 ぶった切ると、前半で脱出画面まで/後半は2話を凝縮、というスタイルだ。これは何とか書ききれそうだ。
 2話:大人たちを殺していかないといけないので3・4話をまとめる
 実際バンク画面も多く、この2話で前半3話/4話で後半を構成というスタイルは全く問題なさそうである。
 3話:当然5/6話を1本に。これはすんなり収まるだろう。
 4話:7/8/9話を1本に収める。
 7話のお話の核になる部分はほとんど不要。博士捜索から帰還する部分だけでも悪くない。8話は高ゲタ製作という、今後のクルーの行動にも影響するため、製作過程や試乗するところ位はともかく、フレッドの暴走部分は以後のストーリーに影響を与えていないのでカット可。9話は当然、敵機との初戦闘が含まれているので避けられないところ。ただ、かなり大胆にはしょらないとまとまらない観も。
 5話:10話は単独で扱うしか手がない。
 6話:11・12・13話は余裕でまとめられる。
 なんとなれば12話の大半は埋め草であり時間稼ぎ。ロディのバイファム初騎乗というエポックはあるが、重みはほとんどない。11/12で前半構成は余裕。13話も前半がクルーたちの館内生活を追っているのでこの部分の大幅カットは可能。初宇宙戦の部分だけでも十分だ。
 7話:14/15話を何とか一つに。
 14話はペンチの詩の絡みもあって、うまく編集できるか難しい。15話もロディとケイトの丁々発止の場面がかなりあるし、後半のテープ公開の場面は決して捨てられない。
 8話:ケイトの死を語るのに、その前提となったカチュアの心の揺れは単純に短くできるものではない。16話もそのまま。
 9話:17〜21話までは何とか一緒くたにできそう。
 必要な部分は、どのお話も少ない印象。17話の廃船爆破シーンも余り重要さは感じられない。宇宙葬のシーンもどちらかというと湿っぽいので省きたいくらいである。18話は完全に埋め草。全くなくてもいいくらいだが、20話に登場するニュートロンバズーカの出現があるため、一部シーンは使わざるを得ない。19話も異星人の交信のゲット/中継基地の存在の確認という出来事があるのでまったくいらないというわけではない。17〜19話までを前半、20話の大半を後半に当てれば問題ない。21話はまったく不要と判断した。
 10話:22/23を一つに。
 これはストーリー上簡単だ。手順を追いすぎている22話は半分が埋め草。それこそいきなりローデン登場でも問題ないくらいだ。そして後半は23話。これなら十分にストーリーを構成できる。

 11話:26/27/28で一連と見る
 26話でのちょっとしたトゥランファム訓練模様は絶対必要。そのあとの監視物体との交戦、ロディがタウト星にもぐりこむまでが前半。28話でのジェダとの会話/カチュアの闖入・脱出くらいをまとめられるといいのだが…。
 12話:29/30はギリギリまとめられる。
 タウト星での大合戦が一つのつながりになっている。29話でロディはミューラァと対峙するが、このときでないといけないという理由はない。つまり、29話は後半部分のほうに重点を置くべきで、勢い30話の大部分が利用できる形になる。
 13話:31話そのまま。
 14話:32話そのまま。 
 この2話については、登場人物が少ないこと/トゥランファム消耗という一大イベントがあること/31話ラスト付近にジェイナスのカムフラージュ作戦が行なわれていること/32話ラストでクルーと合流していること/31・32話にまたがって、カチュアとロディに愛情の芽生えが描かれていることなどがあり、多少のカット可能部分があるにせよ、1話短縮するにふさわしい量が取れないと判断、そのままとした。
 15話:33話/34話でひとまとめ
 33話はクルーのククト星での準備がメイン。34話は前半のジェイナスへのミューラァ乗り込みがあって、バーツの身の上話もちょっぴりポイント高い。ここら編は実にゆっくりと時間が流れている印象。
 16話:35/36話で1話。
 ククトニアンの子供たちが闖入してくる回。35話で前半/36話で後半で十分に構成可能。
 17話:37/38話も勿論まとめる。
 収容所に夜襲をかける37話、輸送機を奪いロディの釘付けをといた38話。前・後半できれいにまとまりそうである。
 18話:39/40話で1話構成。
 39話のほとんどは人間ドラマに傾注。よって削除可。但しミューラァが捕虜になるくだりは必要。40話もミューラァとロディの対峙/サライダによるミューラァの過去の説明は当然カットできない。大半は40話がメインとなりそうである。
 19話:41話
 ミューラァがまんまと逃げ切るためには、カットできる部分はほとんどない。しいてあげればフレッドの無茶出撃くらいで、時間的にもカットの意味がほとんどない。
 20話:42/43話 
 42話でミューラァが休職を言い渡されるなど、出来事は多い。42話の前半のクルーたちの狂喜乱舞振りは勿論カット。後半の収容所援護も少し薄めに描写。43話は、ミューラァ基地への襲撃メインで描けば、特に問題なく推移しそう。
 21話:44話    ここから3話はカットのしようがない。
 44話はミューラァVSロディの最後の戦いがどうしてもメインであり、またこれなくして謎は解けない部分でもある。
 22話:45話    ラスト前。カット/まとめられる部分全くなし。
 そう!私のここまでの編集能力によって、ケンツの演説は、ここにはじめて効力を発揮するのである。
 23話:46話    当然である。

 始めた当初は難しいかな、と思っていたが、「その放送回の要る部分だけを抜き出す」という手法は、ストーリーに矛盾を与えなくさせ、それでいて薄まっていたり、無駄な描写にこだわっていた本体のストーリーが、厚みと深みを増しているようにも感じられる。
 とは言うものの、実際に映像をいじって、再編集したわけではなく、この青写真通りにことが運ぶとは到底考えられない。しかし、たとえば35/36や37/38などのように、連続ものとして考えられる放送回群もあり、また完全な埋め草と断じられる回があることも事実だ。もし再編集しなくてはならないとして、23話化が叫ばれるのなら、当方の考えたストーリー立てはそれほど本筋とずれていないと思う。