搾取されるベビーブーマーJr. ー「我が世代」の主張
 70年代前半に生まれた、第2次ベビーブームの頂点に位置する我が世代は、受験、就職と常に過頭競争を強いられてきた不運な世代である。しかし、苦労とは裏腹に、その見返りどころか、将来にはさらなる暗雲がたちこめている。若さゆえに権力を持たない我が世代は、“癒着の五角形”と縁がない上に、カネにならないがためにその主張がマスコミで流れることもない。「朝生」や「サンプロ」でも20代のパネリストはいない。我が「ベビーブーマージュニア世代」は、為すがままに搾取されていて良いのか?未来の我が世代に負担ばかり強いる権力に対しては断固としてノーを突き付けるべきであり、記者クラブを通して情報統制が進むマスメディアに期待できない現状では、ネットで我が世代の利害を共有する必要があろう。少なくとも、旧新聞を月極で定期購読するといった失態だけは避けて欲しいのだ。既存の権力構造を支えることで、結果的に自分で自分の首を絞めていることに気付いて欲しい。


【年金 ーボるのもいい加減にしてくれ 厚生省の改革大綱によると、厚生年金の報酬比例部分は、支給水準を現行より5%削減される。基礎年金を含めた全体で、月々の支給額は2%減るという(夫婦ともに65歳のモデル世帯の受給額は2%減少し、99年度価格で現行の24万2千円から23万7千円になる)。

 これだけならまだ許容範囲としても、基礎年金を含めた全体の支給開始年齢が5年も遅れて65歳からになるというのは、とても理解し難い。単純計算すると、24万円×12カ月×5年=1440万円!!もの大金を、我々の親父世代の人間は受け取れて、我々若者は受け取れない、というのだ。その上で、65才から貰える額まで2%減らされる訳である。要するに、ボられるのである。いったい、これをどうやって正当化できようか。理解不能だ。

 今現在、支給されている老人たちの年金額には手を付けず、若者にだけ負担を強いる。明らかな世代間差別である。男性の場合、99年4月1日時点で37歳以下の人は、報酬比例部分の年金を65歳にならないと支給されない。政策決定者は中年以上だから、どうせ自分らに関係ないこと、と考えるのだろうか。こうなることがわかっていながら改革を先送りした政府、厚生省を許すわけにはいかない。

 国民年金の保険料は99年現在、年収に関係なく月1万3千3百円の定額だ。サラリーマンの給与から天引きされる厚生年金の保険料は現在、月収の17.35%(これを労使で折半)で、国民年金分も含まれている。つまり、サラリーマンはこの愚かなシステムから逃れられない。しかし、いまや自営業者や学生の3人に1人は、国民年金の保険料を払っていない。彼等は「払わない」という選択肢を持っている。払わないから当然、貰えないのだが、払っても今の老人を利するだけで自分は将来、払った分を貰えないのであるから、極めて合理的な選択と言える。そもそも、65歳まで生きているかもわからない。 

 こんな世代間差別を平気でやる政府を、信じるほうがおかしい。私が自営業者だったら、絶対に国民年金など払わない。サラリーマンにも、自己納付制度を作って欲しい。そして、自己責任で納付させてもらいたい。少なくとも私は、国には任せず、自分で運用する道を選ぶ。

 国には年金を運用する能力はない。厚生年金と国民年金の積立金の一部を運用してきた年金福祉事業団は、自主運用(資金確保事業勘定など)と称した財テクで、バブル崩壊とともに約1兆円の評価損を出した。(経緯は「日本国の研究」/猪瀬直樹に詳しい)このツケは、いずれ国民が支払うことになる。国民自身が運用して失敗したなら仕方がないが、国の失敗で責任を取る者はいない。納得できるわけがない。

 国民年金を税方式に切り替えた上でなら、ナショナルミニマムとしての全国民一律の基礎的な年金は必要だろう。しかし、それに上乗せする部分については、自己責任に任せるべきである。401kにしても、選択枝が狭すぎる。

 現在、選挙に行くかどうかは自己判断に任されている。同様に、上乗せ分の年金も完全に自己判断に任せるべきだ。逆に、年金の支払いが義務であって罰則を設けるなどというならば、同時に、選挙の投票も同様に義務として罰則を設けるべきだ。これは孫正義氏が言っていることであるが、私も大賛成である。投票率が上がると敗北が決定的になる自民党政権には絶対にできないことだから、「我が世代」は、非自民政権への政権交代を実現させなければならない。

 


【国債の乱発 ー勝手に連帯保証人にするな 「若い世代に負の遺産を残すな」。民主党の菅政調会長と鳩山代表は自民党の『バラ撒き政治』を批判する。極めて妥当である。国と地方を合わせた政府債務の残高は、九九年度末で約6百兆円となる。2000年度の概算要求をもとに計算すると、2000年度末にはさらに40兆円も増える。納税者一人あたり6百万円以上だ。現在の米国債の市中残高は約4百兆円だから、1人あたりの借金は米国人の3倍もある。

 99年9月1日付の米「ニューヨーク・タイムズ」は、「タンザニア並みに債務が膨らみ、先進国で例のないほどの債務悪化国」と日本の財政事情を伝えている。ヨーロッパ各国は、通貨統合に加盟できる条件としてGDPに占める一般政府(国・地方)の債務残高が60%以下と決めているが、日本は120%(日本のGDPは98年度で約5百兆円)にもなり大失格だ。単年度の財政赤字額も、目安と言われる対GDP比で、EU各国が2%台に下がってきているのに対し、日本は7.8%(99年度)にもなる見通しである。

 米国でさえ、あの財政赤字から回復したんだから、という考えは甘い。米国の財政赤字は、ブッシュ前大統領最終年の92年度に最悪の二千九百四億ドルに達していたものの、99会計年度(98年10月―99年9月)では財政黒字転換の見通しとなった。景気回復による税収増などで、当初予定より3年も早く黒字転換した。日米の違いは、米国が規制撤廃でベンチャー企業が順調に育ち構造転換が進んだのに対し、日本では規制の「緩和」さえ進まず、いまだに開業率が廃業率を下回っており、新産業が育つ気配が乏しいことだ。逆に、金融、ゼネコン、中小企業などへのバラ撒きは強化され、政府への依存体質は強まっている。

 恐ろしいことに、これだけの借金をしていながら、国民には危機意識がない。自民党党首選直前の世論調査(テレ朝)でも、バラまき推進派の小渕のほうが、それを批判する加藤よりも、管理職を除くすべての層から支持率が高かった。特に主婦の小渕支持率は、加藤の三倍もあった。「首相にしたい人」でも、小渕のほうが鳩山よりも高い結果が出たのだから驚くほかない。マトモに考えれば、カンフル剤に過ぎない『バラ撒き』を続けても経済は回復しないし、将来に禍根を残す。加藤や民主党が言う通りである。

 問題は、メディアの報道の仕方にもある。米国については財政と貿易の「双児の赤字」などと書き立ててきたくせに、日本については、「赤字」や「借金」といったわかり易い言葉を使わない。国債はイコール借金であり、国債の元利償還に充てる「国債費」が借金返済分だから、(景気の変動や税制改革などを除けば)この両者の差が財政赤字である。赤字だからこそ、国債という名の借金をして、補填しているのだ。99年度の財政赤字は約40兆円(GDPの7.8%)にもなる見通しで、これは最悪期の米国(30兆円強)よりも3割も多い。国民1人あたりが1年で作った借金額で計算すると、2.5倍にもなる。

 しかし、大新聞はなぜか、「GDPに対する比率」などという難しい表現で、しかも具体的な金額は伝えない(例えば「98年度末の国と地方の財政赤字、GDP比9.8%に上昇」1998年12/3日経朝刊)から、具体的にイメージできない。これでは、大マスコミが自民党とグルになって国民を騙しているようなものだ。国債といわれても、毎日の買い物の価格にしか興味がない大方の主婦には、理解できない。勿論、若者もわからない。政府の財政赤字額を聞かれて答えられる人がどれだけいるだろうか?知らないから、その深刻さを理解できずに、小渕を支持してしまう。そして理解できている管理職のみが、加藤や民主党を支持する。しかし、管理職も主婦も同じ一票だ。主婦は全有権者の三割強も占めると推定されるが、その無知度はいわゆる先進国のなかでトップに違いなく、日本民主主義の最大の敵と言える。

 とにかく、はっきりと「借金」「赤字」という言葉を使って金額を公開しないと有権者に適格な情報は伝わらない。ただでさえ「人間は小さな事柄には敏感だが、大きな事柄には無感覚である」(パスカル)という。大蔵省は、米国のように、単月ごとに財政赤字を発表して危機的な現状をアピールすべきである。また大新聞が理解不能な独りよがりの紙面を作る原因は、つきつめれば、紙面の内容ではなく販売店の販売力や独占的地位(日経の場合)で販売部数が決まる現在のシステムにあるため、再販制という規制を緩和し、読者ニーズにマッチした新聞(本来は当たり前のことだが)になる環境を整えるべきである。

 さらに言えば、情報の伝達云々より以前に、そもそも国民の政府への依存体質が強まっているとの理解も有力だ。国が破たんすることはないから、どんどんバラ撒いて助けてくれ、銀行だけでなく自分達にも税金で助けてくれ、という訳だ。これは自民党政治の本質だが、税収が伸び続ける右肩上がりのマクロ経済でしか通用しないやり方であることは明白で、だからこそバブル崩壊後、その穴埋めとして借金(国債)が増え続けている。このまま続けられることはあり得ない。鳩山民主党代表が「自立」や「利権政治からの脱却」をキーワードに挙げるのは極めて理屈にかなっている。国民の精神に変革をもたらすには、強力なリーダーシップが重要である。鳩山氏には頑張ってもらうしかない。

 この膨大な借金を返すためには、米国のような景気の「超」回復による税収増か、インフレにしてチャラにするか、大増税か、の3種類しかない。小渕は10年前の米国のような構造改革は進めていないから、景気の「超」回復はあり得ない。インフレは日銀が意地でも阻止するだろう。つまり、もはや増税しかないのは目に見えている。それも、直間比率是正の流れから間接税(消費税)しかない。間違いなく、選挙後に上げてくる。しかし、来年はまだ景気回復の地歩は固まっていないだろうから、さらに借金を増やして問題を先送りするだろう。

 結局、誰がその穴埋めをするのかと言えば、我々20代の若者、「ベビーブーマージュニア世代」なのである。米国は日独にキャッチアップされた60年代後半に赤字体質となり、財政黒字化まで30年かかった。日本は、最悪期の米国よりひどい状態だから、倍かかるとして60年。まるで、住宅ローンを組んで定年退職まで働かないと返済が終わらないサラリーマンのように、重苦しい借金人生を歩むしかないようなのだ。商工ローンに例えれば、我々は既に、返済能力のない借り主(自民政府)の連体保証人の立場である。ひたすら働いて、返すのみだ。少なくとも、これ以上の借金を増やさないために、我々の世代は、小渕退陣を追求しなければならない。戦後の「お上依存体質」に染まったオヤジ世代に追随するメリットは、我々には全くないという意識だけは共有したい。