型が出来上がりました。次にFRP製品の作り方の概要を説明いたします。実際に製作する際の大まかな作業の流れをご説明致します。
1・
離形剤の塗布・・・・・・・・・型から製品を外すためです。
2・
ゲルコートの塗布・・・・・・製品の表面になります。
3・
ガラス繊維の積層・・・・・・製品の肉の部分です。
4・
トリミング・・・・・・必要な寸法にカットします。
5・
完成・・・・・・・・・・製品を取付けてみます。
FRP製品を作るに限らず、作業に入る場合はそれなりの身支度が必要です。腕や足が露出しない服装や、樹脂を扱う際はゴム手袋、木材の切削や仕上げの際は軍手、塗装をしたり埃の出る作業の際は防塵、防毒マスクを使用してください。
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作成した型を用意します。 型の仕上げ時に確認済みとは思いますが、製品になる部分とフランジ部分の境目のかどあたりが収縮して、アゴの状態になっているとアンダーカットとなり、
型から製品が抜けません。充分確認してください。
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1・
離形剤の塗布・・・・・・・・・型から製品を外すためです。
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製品は型を反転させた形状の物です。
製品の製作は型にガラス繊維を樹脂で塗り固めて製作します。その為、後で型と製品がうまく剥がれるように離形剤を塗布しておきます。
型の離形剤は本職の場合ミラーグレーズワックスを使用しますが、
一般には入手が困難ですので市販の車用ワックスを使用する事も可能です。
その際注意することは研磨剤を含んでいないものを使用することです。
白い車に使用するワックスは大抵研磨剤を含んでいます。
メタリックカラーの車に使用するワックスには、ほとんどの場合、研磨剤は含んでいませんので、
それを使用しましょう。
特にお勧めするのは、天然カルナバ蝋配合のものです。FRP専用ワックスとしては"ミラーグレーズ"があまりにも有名ですが、カーワックスで代用する場合は"シュアラスター"系がベストです。
型仕上げの際、ワックスを塗布し拭きあげる作業を5回以上繰返したと思います。個人でおこなう場合型製作から日にちが経っている場合も有りますので、もう一度5回繰返しましょう。
「え〜また〜!」とおっしゃるでしょうが、私も駆け出しのころ型と製品が癒着してしまい泣きを見た覚えが有ります。だまされたと思ってワックス掛けしてください。
ともかく初めて製品を作る型(ヴァージンモールド)は気を遣います。最後にごく薄く全体にワックスを塗布した状態にしておきます。これは始めの1回だけです。
その為に最初は製品表面が良くなくても型慣れといって、型から製品が抜ける癖を付けるために行ないます。最初の製品が脱型できれば、あとはワックスを塗布して拭取る作業を一回すればOKです。
製品表面に後で塗装をするような場合はPVAでもかまいません。PVAがある方はここで塗布します。ウエスを小さく丸めた"たんぽ"を作って
、それに湿らせて薄くむらなく塗ります。
最低2時間は放置して乾燥させます。暖かい場所で乾燥させれば効果的です。弱めの熱でドライヤー等を使用しても効果が有ります。その際ドライヤーを30cm以上放して行ってください。
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2・
ゲルコートの塗布・・・・・・製品の表面になります。
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FRP製品には製品表面の仕上げ方法から2種類に分けられます。
型から製品を脱形した後、製品の表面をサンドペーパーで下処理して、塗料(ラッカー等)を塗布するもの(塗装物)。
ゲルコートを塗布する際、あらかじめゲルコートの中に製品色のトナー(顔料)を混ぜて着色したゲルコートを塗布するもの。(ゲルコート物)。
後者の場合は脱型後、トリミングすれば製品の完成となります。しかし、製品成形時に注意しないと製品表面にワレやフクレ(ピンホール)等の不良が発生した場合"おしゃか"になってしまう場合が有りますので、初心者の場合は前者の後で表面塗装する方が良いと思います。
型用ゲルコート樹脂と言う専用の表面材を塗布します。
コンプレッサーを使用した塗装が望ましいですが刷毛塗りでもかまいません。
刷毛塗りの場合はむらなく均一に塗布しましょう。
最低2時間は放置して乾燥させます。暖かい場所で乾燥させれば効果的です。弱めの熱でドライヤー等を使用しても効果が有ります。その際ドライヤーを30cm以上放して行ってください。
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3・
ガラス繊維の積層・・・・・・製品の肉の部分です。グラスファイバーを塗り固めます。
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表面材が乾燥しましたら、ガラス繊維を樹脂で塗り固めます。
まず樹脂に硬化剤を添加して良く混ぜます。そして、ゲルコートを塗布してある型の表面に下塗りします。
ガラス繊維を使い易い大きさにちぎりながら型の上に置き、ローラー、または刷毛で塗ります。ガラス繊維は樹脂を塗る前は白色ですが樹脂を塗ると半透明になり、直線状の繊維がウエーヴ状になります。
ガラス繊維に樹脂を含ませて浸透させるのでこの作業のことを含侵(がんしん)作業と言います。この際、樹脂をあまり塗り過ぎないようにします。
刷毛等で樹脂を少しずつ塗りながら刷毛等で良く撫でて樹脂をなじませます。樹脂がなじんだら刷毛の先でたたくようにして、樹脂の中に混入している空気の泡(気泡)を潰すようにします。本職は専用の脱泡ローラーを使用します。
これは気泡を抜く作業なので、脱泡(だっぽう)作業と言います。脱法作業が終了したら1時間ほど放置して硬化させます。暖かい場所で乾燥させれば効果的です。弱めの熱でドライヤー等を使用しても効果が有ります。その際ドライヤーを30cm以上放して行ってください。
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3−3ガラス繊維の積層・・・・・・・グラスファイバーを塗り固めます。
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ガラス繊維を塗り固めた表面が乾燥しましたら、上記の作業を、その製品の求める耐久性に応じて繰り返し行います。
通常、ガラス繊維はガラスマットと呼ばれるガラス繊維を適当な長さに切ってあるものをのりで固めた不繊布状の物とガラスクロスと呼ばれるガラス繊維の紐を格子状に織り込んだものがあります。
カバー類の積層にはガラスマットのみで良いでしょう。ガラスマットには#300、#450、#600と番手が有り、数字が高くなるほど厚くなります。
厚いガラスマットを使えば少ない積層回数ですむと思うかもしれませんが、厚いガラスマットは気泡を含み易いので不良を起こし易いです。
手間はかかっても薄いガラスマットを使用しましょう。目安として#300のガラスマットで積層した場合、2回で製品厚み1mmです。積層作業が終了しましたら丸一日放置します。
ちょっと触ってみると固まったように見えても樹脂の芯まで固めるために最低一日おこなってください。
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3−4脱型・・・・型から製品を外します。
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硬化乾燥した製品の周りには、ガラス繊維の"バリ"が出ています。鋭く尖った部分も有りますから、トゲが刺さらないよう充分注意して、必ず軍手等を使用して脱形作業をおこなってください。
型のフランジ部分からはみ出した製品のバリを少しめくるようにして力を入れます。
すると型のフランジ部分と製品のフランジ部分の縁が切れて隙間が出来ます。そこに西洋(食用)ナイフやへらのような物
(刃物やカッターナイフ、先の鋭い物は型を痛めますし、けがの元ですから使用しないでください。本職も使用しません。)
を差し込んで、フランジ部分を一周まわして、型と製品を外す準備をします。
最後にバールのような物でテコにするようにしながら、ぐっと力を入れ引き抜きます。
型偏でイメージとして例にあげたプリンを器から出す時も周りを指で押して器から放しますよね。そして器とプリンが密着して真空状態になっていますから「えいっ」と振ればプリンが出てきます。
"プッチンプリン"のように器に穴を空ければ真空状態が解除されプリンがするりと出てきますよね。FRPの型でも同じように後で製品に穴を空けるような部分のところに穴を空けておいて、そこにエアーを入れて抜くようにもします。
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4・
トリミング・・・・・・必要な寸法にカットします。
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型から製品がうまく外れましたか?
型の仕上げが悪かったり、離形剤の処理がテキトーだと型と製品が癒着してしまって、"おしゃか"になってしまうこともあります。
私自身も駆け出しのころは何度か失敗を繰返しガックリきたものです。そうならないように特に離形剤の処理には気を付けてください。
また、アンダーカットと言って巾着のように奥にいくほど広い形の物は抜くにも抜けません。ほんの少しでも有ると失敗するので型を良く確認しましょう。
製品はディスクサンダーを使用して必要な寸法にカットします。
電動工具を扱う際は普通、軍手等は使用しません。衣類や軍手がディスクサンダーの回転部に巻き込まれない様充分注意しましょう。
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5・
完成・・・・・・・・・・製品を取付けてみます。
ちょっと一服その前に!
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いや〜、やっと製品の完成です。 一般の方が作られても、本職が作ったとしても手間暇のかかる仕事です。
表面塗装をする場合は、ここからサンドペーパーで表面を研磨して脱脂(油分を取り除く事)してから塗料を塗布します。ゲルコート品は表面をきれいに掃除して、ワックスでつや出し等行なって完成です。
とりあえずここで一服というところですね。ただし!、
FRP製品の製造材料は引火性が強い物が多いので後始末をきちんとして作業場とは別の場所で一服してください。本当にお願いしますよ、火事は恐いですから。
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簡単ではありますが、FRP製品を作る際の手順についてご説明致しました。
FRP製品製作とはとはどんなものなのかお分かりいただけましたか?
次は実際のFRP製品の製造風景(写真)を掲載しています。
FRP製品の作り方(実写版)
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