最近の作品より

《和訳賦「単軌線」の巻》

(F4「わかば」にて興行)

★「和訳賦」は、それぞれの句に漢字で表記される外来語を用いて付合いを行う試みで、歌仙の形式に従って巻き進められました。使用された和訳外来語は、末尾の【和訳辞書】に一覧表示してあります。




賦物歌仙 和訳賦「単軌線」の巻 

  勝手付 
起首 1999.10.24 
満尾 2000.01.01 

 発句 穂芒や開通ちかき単軌線       海砂 晩秋
 脇   昼月淡く午後の珈琲        みど 三秋/月
 第三 芋煮会赤毛倶楽部のさざめきて    宗海 晩秋
  四  鳴れ手風琴語れ浪漫       唐辛子
  五 墜道を出れば玻璃の城のあり     無耶
  六  露台を飾る双頭の鷲        海砂 三夏
 ウ
  七 短夜に萎え莫大小の襯衣に萎え    縄文 三夏
  八  星安出寿と地麦酒を飲む      次郎 三夏
  九 乾酪に奈翁の后懐かしみ       無耶
 十   鉄葉の箱に眠る恋文        みど
 十一 麺麭のみに生くるに非ず鳥さかる   海砂 三春
 十二  薫りは重き暹羅の春蘭       宗海 仲春
 十三 月おぼろ襦袢で帰る歌留多とり    次郎 三春/月
 十四  天鵞絨敷いて素裸で寝る     唐辛子 三夏
 十五 海豹になって目覚める夢の中     無耶
 十六  外套の釦かけ違える        次郎 三冬
 十七 花嫁の父珍陀酒の苦きこと      縄文   /花
 十八  金剛石と愛しみし日よ       無耶     
ナオ
 十九 再見を加比丹の鸚哥連発す      含胡
 廿   摩擦起電機髪も逆立ち       無耶  
 廿一 風琴の夢の維納の円舞曲       次郎
 廿二  感冒ぎみの君のささやき      海砂 三冬
 廿三 襟巻がやさしく包む親嘴の痕     宗海 三冬
 廿四  子守熊自然と猫背に育つ      みど
 廿五 越南の哀歌を流す驟雨かな      次郎
 廿六  小舟に鬻ぐ鳳梨甘蕉        海砂 晩夏
 廿七 寝台の代はり網床揺らしをり     無耶
 廿八  微風が運ぶ蓄音機の音       含胡
 廿九 青銅の基督祝う聖誕祭        次郎 仲冬
 卅   七面鳥が月に祈りし        海砂 仲冬/月
ナウ
 卅一 燐寸売りの少女に涙せし昔      無耶
 卅二  蘭訳源氏にお転婆のかげ      含胡
 卅三 沖つ浪明石の瀬戸の素描かな     次郎
 卅四  造園術に長けし長老        無耶
 卅五 花守の背広着込んだ晴れ姿      海砂 晩春/花
 挙句  滑空傘舞う春はうららか      含胡 三春

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【和訳辞書】
 単軌線(モノレール)珈琲(コーヒー)倶楽部(クラブ)
 手風琴(アコーディオン)浪漫(ロウマン/ロマン)墜道(トンネル)
 玻璃(ガラス)露台(バルコニー)莫大小(メリヤス)襯衣(シャツ)
 麦酒(ビール)乾酪(チーズ)奈翁(ナポレオン)鉄葉(ブリキ)
 麺麭(パン)暹羅(シャム)襦袢(ジュバン)歌留多(カルタ)
 天鵞絨(ビロード)海豹(シール)外套(オーバーコート)釦(ボタン)
 珍陀酒(赤ワイン)金剛石(ダイヤ)加比丹(キャプテン)
 再見(ツァイチェン)摩擦起電機(エレキテル)風琴(オルガン)
 維納(ウィーン)円舞曲(ワルツ)感冒(カンバゥ[葡])親嘴(キス)
 子守熊(コアラ)越南(ベトナム)哀歌(エレジー)驟雨(スコール)
 鳳梨(パイナップル)甘蕉(バナナ)寝台(ベッド)網床(ハンモック)
 蓄音機(レコードプレイヤー)青銅(ブロンズ)基督(キリスト)
 聖誕祭(クリスマス)七面鳥(ターキー)燐寸(マッチ)
 お転婆(ontembaar[蘭])素描(デッサン)造園術(ガーデニング)
 背広(シビルクローゼス)滑空傘(パラグライダー)



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