歌仙「薔薇胸に」の巻
衆議判 起首 2000.06.30 満尾 2000.07.07
発句 薔薇胸にラクリモーサ(*1)の和声かな 鶴鳴 初夏
脇 涼風の園満つる永遠 無耶 三夏
第三 一つがひ田鶴の餌を掘る小流れに 海砂
四 鍬を洗うて帰る草の家 耶
五 軒に干す地下足袋月を蹴上げたり 砂 三秋/月
六 文化の日まで衣装合せを 耶 晩秋
ウ
七 好きな詩もトランクに詰め秋の旅 みど 三秋
八 エアーポケット抜けて雲海 砂
九 五十年北と南が一堂に 宗海
十 水饅頭にも好みそれぞれ 耶
十一 歌舞伎町あたりの夢は夜ひらく 砂
十二 毛深ハーフが湯冷めする月 海 三冬/月
十三 名は無くも知恵はありますかじけ猫 耶 三冬
十四 魚屋を呼ぶ尼寺の裏 砂
十五 リストラの愚痴南無般若波羅密陀 真由
十六 押しつけられし会長の役 海
十七 引連れていざお花見の杖と杖 耶 晩春/花
十八 風船ガムがパンと弾ける 砂 三春
ナオ
十九 住替へし寄居虫(*2)どこぞ所在無げ 海 三春
廿 三代経って瘠せる票田 耶
廿一 末つ子にあぐりと名づけ天あふぐ 砂
廿二 見れば見るほど律儀者なり 海
廿三 梅雨といふ字義の講義もめんめんと 耶 仲夏
廿四 バッカス神と語る短夜 砂 三夏
廿五 指先にニコチンの色染み付きし 海
廿六 玉の井上りのおかみさんなる 耶
廿七 隠れ棲む裏屋に紅絹の長襦袢 砂
廿八 女形役者の拗ねる有明 海 三秋/月
廿九 手触りも匂ひも味もちがふ梨 由 三秋
卅 むし歯に沁みる雨冷えの風 耶 仲秋
ナウ
卅一 碁仲間の待つたは三度限りとし 砂
卅二 去年の旅の首尾を尋ねる 海
卅三 新築の祝ひと熊の剥製を 由 三冬
卅四 謎解きをする爺の得意げ 耶
卅五 灰撒けば万朶の花のまつ盛り 砂 晩春/花
挙句 お伽噺のさそふ春眠 由 三春
(*1) ラクリモーサ・・・レクイエム
(*2) 寄居虫・・・やどかり
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