野猿さん、健悟さんとメールで巻いた三吟歌仙が、このほど 満尾いたしました。新鮮な付け句がたくさん出て、面白い巻に なったと思います。どうぞご覧くださいませ。 歌仙「熱砂ゆく」 起首 H.9.7. 5 満尾 H.9.9.17 発句 傀儡女の白き腕や熱砂ゆく 野猿 脇 蟾の従者の清げなる声 健悟 第三 夏畳波と見る間に広がりて 無耶 四 耳朶を擽る風がくすぐる 猿 五 地下街に満月の夜のドラミング 悟 六 グラスの底のオリーブの種 耶 ウ 七 秋惜む生命線の途切れをり 猿 八 聖書講義に出てはけがれる 悟 九 軽やかに扉を叩く姪の午後 耶 十 水を湛へし猫足の風呂 猿 十一 大殿のために揃へし地黄丸 悟 十二 今川焼を買ひに行かされ 耶 十三 月冴ゆる伊勢屋稲荷に犬の糞 猿 十四 捜査一課の腕こきを見ず 悟 十五 ポラロイド写せば今も過去となり 耶 十六 あっかんべえが薄らいでいく 猿 十七 肩車して花を折る金と陳 悟 十八 英国育ち蝶のネクタイ 耶 ナオ 十九 うららかに農学校の訛真似 悟 廿 蛙も「下ノ畠ニヲリマス」 猿 廿一 大空のヤコブの梯子よじ登り 耶 廿二 獄舎の壁に沁みる吐息は 悟 廿三 父おやは船乗りなりやと問はれし日 猿 廿四 少年探すバンコクの街 耶 廿五 ロケットを揺らして決めるけふの宿 悟 廿六 水羊羹の漆黒を吸う 猿 廿七 愉しみは義歯の遊ぶ老いの床 耶 廿八 枯れた台詞のその裏のヨミ 悟 廿九 月光に市長の椅子の影巨き 耶 三十 湖底に沈む村も魂待つ 猿 ナウ 三一 振り向けば又とんぼうの追ってきて 悟 三二 遥か ツイゴイネルワイゼン を聴く 耶 三三 微笑みて眠りに眠る娘たち 猿 三四 大講堂の墨を摺り終へ 悟 三五 花ふぶき糸の緩みし葉隠書 耶 三六 ゆらりと地軸まわる春昼 猿
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