『ローマ字表記の歴史』
★意外に深いぞ、日本におけるローマ字表記の歴史
●年表
<1500年代>
外国人宣教師によるキリスト教の布教活動により
日本にローマ字(ラテン文字)が導入される。
『諸聖徒の御作業の内抜書』[Sanctos no Gosagvoeo no uchi Naqigaqi](1591)
『平家物語』[Feiqe no Monogatari](1592)
以上はいずれもポルトガル語式ローマ字(タ行 ta
chi tcu te to)
<1613年(慶長一八)>
キリシタン弾圧が始まり、一旦ローマ字本は姿を消す。
<1720年〜幕末>
八代将軍吉宗「洋書解禁」により、蘭学の研究がすすみ、
学者がオランダ式ローマ字(タ行 ta ti toe te to)
<明治期〜太正期>
ドイツ式ローマ字(タ行 ta tsi tsu te to)、
フランス式ローマ字(タ行 ta tsi tsou te to)が試みられるが
アメリカ人の医師・宣教師ジェイムズ・カーティス・ヘッバーン(ヘボン)の
英語式ローマ字(タ行 ta chi tsu te to)が普及するようになった。
これに対して物理学者・田中館愛橘(たなかだて あいきつ)が
日本式ローマ字(タ行 ta ti tu te to)を提唱し、
二派は激しく対立した。
その後、
ヘボン式 →(改良)→ 標準式
田中館 →(改良)→ 日本式
と、それぞれに改良を加えたが、結局日本では
二派は両立し、使われることになった。
これは単に伝統的・慣習的な理由だけではなく、
各々に捨てがたい音韻論的長所をもっていたためで、
これは後に双方の良いところを組み合わせた「訓令式」が
登場しても結果的には改善しなかったのである。
<昭和>
1930(昭和5)臨時ローマ字審議会により
ローマ字のつづり方について「訓令」が出され、
第二次世界大戦後、英語の表現に都合のよい標準式つづりをも
許容する内閣告示第1号が出され、「訓令新表」が発表された。
現在、使われているローマ字の方式は
方式名 | 使用する文字 | 使用しない文字 |
「標準式(ヘボン式)」 | アルファベット23/26文字使用 | Q,V,X |
「日本式」 | アルファベット20/26文字使用 | C,F,J,Q,V,X |
「訓令式」 | アルファベット20/26文字使用 | C,F,J,Q,V,X |
の3つである。
■参考文献
服部四郎『新版 音韻論と正書法』大修院書店
田丸卓郎『ローマ字國字論』岩波書店
『日本大百科全書』小学館