第4回「ファンタジーを科学する」
 
 
  そもそも、このタイトル、漠然とし過ぎていて何も言っていないに等しいので、
ここで語る具体的な話題について最初に明示しておきましょう。
それは、「一般的ファンタジー世界における魔法と機械文明との関係」です。
  最近のRPG(あえて特定はしません)では「魔法」と「機械文明」が平然と共存しているゲームが
非常に多いですが、はたしてこれはリアリティがある世界観と言えるのでしょうか?
  この議論は、私がこういう世界に足を踏み入れる以前から行なわれている議論らしいので、
私も一言言わせてもらおうと思って筆を執りました。

  ちなみに、「一般的ファンタジー世界」についての定義が
人によって異なると思いますが、ここでは、「一般的ファンタジー世界」とは、
小説の中で描かれているものとしてはJ・R・R・トールキン氏の「指輪物語」
水野良氏の「ロードス島戦記・クリスタニア・ソードワールド等のいわゆる『フォーセリア・サーガ』」
ゲームでは「ウィザードリィ」等の古典的なファンタジー世界のことを指します。

  ちなみに、これらの世界では基本的に「魔法使い」と呼ばれる人種はせいぜい身にまとうのは
「ローブ」と呼ばれるすその長い服……性質的にはただの服に毛が生えた程度のシロモノです……
ぐらいで、「魔法使い」は、物理的攻撃(剣で斬ったり、棍棒で殴ったり等)に対する防御力はほぼ皆無、
さらに、「ローブ」は非常にかさばる服なので、素早い動作も事実上不可能です。

  さらにテーマを絞りましょう。
「魔法が当たり前のように使われている世界に『銃』という機械文明の生み出した
  最強の武器が出現したら?」
  「機械文明」の世界に生きる我々なら知っていることではありますが、
「銃」というものは人間がお手軽に携帯できる武器の中では抜群の威力と使い勝手を誇ります。
(もちろん、お手軽には携帯できない「銃」もありますが、そういった例外はここでは無視します)

  その威力は歴戦の戦士や熟達した老魔術師であろうとも一撃で殺すことが出来るでしょう。
  その圧倒的な破壊力を防ぐ術は恐らくファンタジー世界には存在しないでしょう。
しかも、ただ相手に銃口を向け、引き金を引くだけで、その破壊力は発揮できます。
  手慣れていれば子供にだって扱えます。
凶悪無比な破壊力がごくごく簡単に使える、それが「銃」という武器の利点であり、存在価値です。
  こんな物がもしもファンタジー世界に出現すれば、一体どういうことに
なるか……戦士の剣は無用の長物と化し、魔術師は魔法を唱える間もなく殺されるでしょう。
  いわゆる通常の戦闘ではもはや剣も魔法も役に立たなくなるでしょう。

  こうなると、剣はその存在価値を殆ど失いますが(超近接戦闘では剣の方が役に立つでしょうが、
銃を持っている相手にそこまで接近することは事実上不可能に近いでしょう)、
「魔法」の方はどうでしょう?面と向かっての戦闘において、
魔法使いは「魔法」を使うために必要な呪文を唱える間もなく射殺されてしまうので、
(中には呪文無しに発動できる魔法もあるでしょうが、そういう魔法があったとしても
  魔法を使用するのには意識を集中する時間が必要なはずですから……集中も呪文も
  必要ないような魔法は、術者本人にも制御不可能な魔法になっちゃいますから、
  非常に危険です……その一瞬が大きな隙になります)
やはり殆ど役立たずでしょう。

 「面と向かっての戦闘」においては確かに役立たずになるかもしれませんが、
「魔法」は偉大な力です。何も火の玉や魔法の矢を飛ばすばかりが「魔法」ではありません。
自分から遥か遠くの場所にいる敵を呪い殺したり、別の世界から人間とは全く異質の
怪物を呼び寄せることも出来ます。
  それに、一瞬にして別の場所に移動したり、手を触れずに物を動かしたり、
一瞬で怪我人の傷を癒したり(場合によっては死者を蘇らせることも)、と、
戦い以外にも「魔法」は非常に便利な力を発揮します。
  ……「魔法」は、単なる戦いの道具ではありません。
  「銃」にこんな力がありますか?
「銃」に代表される機械文明には不可能なことも「魔法」ならば
いともたやすくやってのけることが出来ます。

  結論を言ってしまうと、「恐らく『魔法』と『銃』は共存可能」ということです。
もちろん、「魔法」の出番は多少は少なくなってしまうでしょうが、
「銃」の出現によって完全に世界から「魔法」が失われてしまう、
ということはありえないと思います。

  ただ、それ以前の問題として、「『魔法』が当たり前のように存在している世界に
果たして『銃』が出現する必然性があるのか?」という問題はありますが。
人間という生き物は、自分に必要ない物をわざわざ発明したりしないものです。
「魔法」で事足りることなのに、わざわざ「銃」に代表される機械等を
作ったりする必要があるのでしょうか?
  これについて話し出すと、また長くなってしまうのでこれについては
別の機会にお話することにしましょう。

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