「風の又三郎」とは・・・

まとめ


●単なる幻想的世界ではない、現実世界とその裏にひそむ世界との虚実二相の境界を背景に、人間の生き方についての指針をではなく、人間の生きるこの世界自体のありよう、あるいはありようの捕まえ方について理解するための独特の示唆を与えようとするもの 鑑賞の手引き(1)

●子供たちと三郎とがそれと知らずに共同で進めてきた壮大な規模の「コックリさん」 鑑賞の手引き(1)

●一人の転校生を稀有の契機として風の精霊が子供達と戯れた12日間の奇妙な交歓ものがたり 鑑賞の手引き(2)

●メディア「又三郎」を中心として両者がぐるぐる回転しながら果たされた際どい接近遭遇のものがたり 鑑賞の手引き(2)

●土着の存在が外的世界の精を思わせる者と出遭って引きおこされた興奮、緊張、融合、反発――まるで神話に語られた人間くさい神々のドラマのようなものがたり――土地土地に神々が宿っていたそんな最後に近い時代の神話 鑑賞の手引き(2)

三郎の気団と子供たちの気団との前線に吹いたカオスの曲線 風の又三郎を吹く風

●つかの間この世に存在を許され、自然の摂理に従って程なく消え去りゆくもろもろの自然現象たちの、この世に対する限りない愛惜の念と、悲しみと言えば悲しみと言えるそれらの存在のしかたそのもの 風の又三郎を吹く風

●異形の転校生との出会いに触発され掻き乱された少年達の心のいっときの喘ぎの声々 風の又三郎を吹く風

少年期の心にふいに現れてさまざまに惑わし、時には命の危険にまで誘い込み、そしていつしか拒否されて、あるいは憑き物が落ちたように去って行く、成長の重大局面の一部始終 風の又三郎を吹く風

●(作者)自らの作品群世界における空想と現実の融合という儀式 風野又三郎から風の又三郎へ

●この世界ははたしてどう出来上がっているのか、その正体を私たちはどう知ることができるのか、できないのか。 このことについての作者の晩年の思索の反映 風野又三郎から風の又三郎へ

●(作者の)世界に対する賛美の歌、自然という神への最後の信仰表明 風野又三郎から風の又三郎へ

●あの禁欲の塊だった作者が「結婚」とまで言って吐露した風との親密な関係について、最晩年、ついに最後の、総括し切れない総括を示した作品 おしまいに

作者宮沢賢治がイーハトーブの野に一人立ってつぶやくモノローグ。

 風よ、私に近しい風よ。お前は誰なのか。そしてなぜそんなにも私を掻き乱し、急き立てるのか。
 風よ、私に一体どうせよというのか。私は一体どうしたらいいのか。
 風よ、近しい風よ。私を一人置いてお前はどこへ行ってしまうのか・・・ おしまいに



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