「空がまっ白に光」るのは、目が刺激に耐えられなくなりそうなのです。「ぐるぐる廻」るのは脳の血流がぐるぐるしているのです。
 「雲が、速く速く走」るのは動悸と呼吸の速さの反映です。「カンカン鳴」るのは血流が聴神経を叩いているのです。

 「すてきに背の高い薊」。夢中の嘉助のそばで素敵なアザミ。泣きそうな嘉助と素敵なアザミ。嘉助がいてもいなくても素敵なアザミ。
 あしたもあさっても、ずっと限りまで咲く素敵なアザミ。

 「まわりがぼうっと霞んで来」た中で「眼の前をぐんぐん通り過ぎて行」く雲や霧はただひたすら無情です。
 一切の希望とは無縁に、こちらとの交渉を拒否するかのように「通り過ぎて行きま」す。

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