「構音障害」とは言語障害の一種で、内的言語能力は(狭義には喉頭の発声運動も)正常にも拘わらず正しく聴き取れる発音ができないことを言います。

その原因によっていくつかに分類されます。

1.器質性構音障害 - 音声器官における形態上の異常により引き起こされる発音上の障害。
2.運動障害性構音障害 - 音声器官の運動機能障害による発話の障害。
3.聴覚性構音障害 - 聴覚の障害による二次的な発音上の障害。
4.機能性構音障害 - 上記のような医学的原因の認められない本態性の発音の障害。

ここでは最近急増していると言われる4.の機能性構音障害について詳しく説明します。

「機能性構音障害」とは、医学的な原因病変がなく一部の発音の音価が歪むことです。病気や麻痺、口の中の異状・けがなどと関係なく、幼少の頃より発現する発音異常です。異常音発生のメカニズムは明らかですが、真の原因ははっきりしません。
発話全般が異常となるわけではないので幼児語の一種と思われたり見過ごされたりすることが多く、短期間のうちに自然に治ってしまうこともありますが、小学校に入る頃になっても治らないものが問題視されることになります。その後小学校高学年頃までに治らなかったものは放置すればそのまま成人に達するのが普通です。
問題音は個人によって特定の音に限られ、他の音は正常です。ふつう問題音は丁寧に発音しても正しい発音になりません。
最近著しい増加傾向にあり、今や小学校高学年でも一クラスに3〜4人見られることがあります。急増の原因には近年の食生活の変化も関係しているようです。
従来、矯正を要すると見られる我が国の人口はごく少なく見て4万、多く見れば80万とされてきましたが、現在では若年層を中心に優にその数倍の人口を想定できます。
典型的なものを以下に挙げます。

イ段の音(イ、キ、ギ、シ、ジ、チ、ニ、ヒ、リ、など)が正しく言えない。
カ行、ガ行がタ行、ア行、ダ行、ラ行のようになる。
キが正しく言えない。チやティのようになる。
ギが正しく言えない。ジのようになる。
ケ、キ、ゲ、ギが正しく言えない。
サ行がシャ行やヒャ行のようになる。
サ行がハ行やファ行のようになる。

サ行、ツ、ザ行が鼻を鳴らすような音になる。
サ行、ツ、ザ行がはっきりしない。
シが正しく言えない。ヒのようになる。
タテト、ダデドが変だ。カケコ、アエオ、ガゲゴのようになる。
ジ、ヂが正しく言えない。ギのようになる。
チが正しく言えない。キのようになる。
ツが言えない。変な息が混じる。鼻へ抜ける。
ツがチュ、キュ、クのようになる。
ツとズがはっきりしない。
ナ行が変だ。ガ行のようになる。
ニが変だ。ギのようになる。
パ行がア行のようになる。
ヒが正しく言えない。
ヤ行が正しく言えない。
ラ、ル、レ、ロがあいまいになる。
リが正しく言えない。ギのようになる。

拗音(キャ、シャ、チャ、・・・ など)が正しく言えない。

参考:機能性構音障害の自己鑑別法

 声が出なかったり詰まったりすることが問題ですか?
    YES → 機能性構音障害ではなく、他の障害です。

    NO, それが問題ではない。
   ↓
 全体的に発音が正しくない・あいまいですか?

    YES → 他の構音障害です。
    
NO, 決まった音だけが正しくなく、他は正常である。
   ↓
 日によって、場面によって、あるいは薬物の影響などによって言えるときと言えないときがありますか?

    YES → 他の障害の可能性があります。

    NO, いつも言えない。
   ↓
 緊張や早口が原因で発音が悪くなっていると思いますか?

    YES → 構音障害(狭義)ではありません。他の障害または正常の範囲内の可能性があります。

    NO, そうは思わない。
   ↓
 周囲の人の多くも同じ発音をしますか?

    YES → 構音障害ではありません。方言音と思われます。

    NO, しない。
   ↓
 問題音は一つずつ丁寧に発音すれば正しく言えますか?

    YES → 他の障害または正常の範囲内の可能性があります。(1)

    NO, 一つずつ丁寧に発音しても正しくならない。
   ↓
 問題の発音は何かのきっかけで、あるいはある時期から始まりましたか?

    YES → 他の構音障害の可能性があります。

    NO, 思い当たるきっかけがなく、ほぼ最初からすでに悪い発音であった。
   ↓
 口腔内の病気や異状
(※2)、舌の麻痺、その他の麻痺、難聴、言語発達遅滞(※3)が原因だと診断されたことがありますか?
    YES → 
他の構音障害の可能性があります。
    
NO, そのようなことはない。
   ↓
 (舌の長さ、舌小体(帯)、歯並び、噛み合せに異状があっても次に進んで下さい。(4))
   ↓
 目を閉じて耳だけで他人の「カ、サ、シャ、タ、チャ、ハ、パ」が完全に聴き分けられますか?

    NO, できない。 → 他の構音障害です。
    
YES. 聴き分けられる。
   ↓
 口を軽く開け(上下の前歯に指1本挟む程度)、舌先を上の歯茎に当てることができますか?

    NO, できない。 → 他の構音障害です。
    
YES. できる。
   ↓
 「ア、エ、オ、ハ、ヘ、ホ、マ、メ、モ、ワ、バ、ベ、ボ」を正しく言うことができますか?

    NO, できない。 → 他の構音障害です。
    
YES. 正しく言うことができる。
   ↓
    機能性構音障害の可能性が大です。

音の異常の程度は甚だしいものから軽いものまでいろいろです。
基本的に舌の形と位置が間違っているために正しい呼気の流れが阻害されたり間違った位置で音が発生して起こるもので、発音が正しくないと同時に、唇やアゴ、の動きが不自然に見えます。また、口の中の息の流れ方がおかしいと自覚することもあります。
多くのものは十分な自然治癒は期待できず、また家庭でも学校でも見過ごされたり諦められたりして正しい矯正の機会が得られずにそのまま成人まで持ち越されるケースが大部分です。コミュニケーションに重大な(全般的な)齟齬をきたすことは少ないのですが、よく聞き返されたり聞き間違えられたりし、丁寧に言い直しても改善されません。また本人に自覚があり自分で治そうと工夫しても、自己
聴覚モニターの歪みのために正しい目標音の設定と評価ができず、自身だけでの改善は困難を伴います。
この障害には医学的原因はありませんから医療や歯科医療で治すことができません。またコ・メディカルの言語訓練を行っても他の種類の障害向けに一般的な基礎機能訓練や聴き取り訓練、繰り返し発音訓練などでは改善しません。小学校の「ことばの教室」でもこの種類のものは指導が難しいとされ、指導期間も長期に亘りながら殆んど実効が上がっていないのが実情です。
これらのことから一般にまた関係者の間にさえ、この障害は大人になってしまうと一生治らないという誤解が根強く存在します。刊行本やウェブサイトの中にも、早いうちに治すべきで大人になると治しにくいという記述が多く見られます。

しかし近年、成人に対する正しい構音指導の効果が認識されるようになってきました。適切な音声学的構音指導によって音節はほぼ例外なくごく短期のうちにひずみ度#0(まれに#1)、構音評価レベル[70〜100](正常)に達し、会話も多くは比較的短期のうちに実用レベルに達することが分かってきたのです。経験ある指導専門家は最近では成人に達してからの矯正は容易で非常に効果的であると言っています。(逆に低年齢の場合は成果が上がりにくいことがあり、指導は高学年になるまで待った方が効率が良いと言われます。)

結局これらの正しくない発音は正しく治してしまえることが明らかとなったため、最近ではこの種の機能性構音障害を「障害」という名で呼ぶのはふさわしくなく、単なる「発音の習慣的誤り」・「発音の学習の失敗」ととらえる方がより実態を表していると言われるようになりました。つまり誤った習慣の取り除きと正しい方法の学習こそがこの場合の発音矯正の要であり、また習熟期間についても、外国語の発音習得とは異なって乳児期からの正しい音聴取の積み重ねがあるために、極めて短期間で済むことも分かってきたのです。
「成人の機能性構音障害」は一生治らないという誤解は早急に解かれる必要があります。

   このページの情報の引用元:機能性構音障害とは 構音矯正科 (音調研東京発音教室)