1.頼る思い
彼は語つた。もしそれが僕の運命だとしても諦めることはできない。私は訊いた。6000万円もだして。アメリカへだつて?彼は私の冷淡な心を感じて私に言うた。心配かけてすみません。立ち上がった。私は彼の肩を叩き「力になるよ」彼は思わず涙をこぼした。 2.街頭募金 多くの老人や中年の人たちは無関心だつた。余所行きの顔をした男やアイシヤドウした女も同じだつた。子育てを終えた女性が立ち止まりそして戻って来て募金した。手の悪い男がやつてきて足の悪い学生の持つ箱に募金した。イヤリングを付け髪を茶色に染めたカツプルがやつて来て恥ずかしそうに募金した。「それはなんだ。移植だと?」老人は言うた。僕は心臓が弱いんだ。そして彼は財布を開いた。ヨツパライがやつて来て皺くちやの千円札を募金して叫んだ。「機密費をもらえ!」財布を開いた女学生募金して言うた「明日も立つわ」母親の多くが時間を見つけ毎日募金活動に参加した。私は国中の見知らぬ人々の暖かい励ましの言葉とご寄付を知つた。 3.不安と喜び 僕は金を借りて赤ん坊をアメリカへ連れていくぞ。僕は待てない。彼のコンデシヨンは日一日と悪くなっている。すごい!父親は鉄の意思を持つている。我々はもつと真剣にならなければならない。名古屋市在住のカヌー仲間の一人から彼らの出発をテレビで見たと知らせてきた。 インフオメーシヨンが届いた。オパレーシヨン成功! 私達の子どもはドーナから命を与えられた。2週間後に父親はアメリカから帰国した。彼の顔は義務を果たした父親の顔だつた。 4.彼は語る。 ドウナーの心臓が空輸される時時計を見ながら心臓のパイフプを切除する手ジユツが始まつた。もしヘリコプターがクラツシユしたら。綱渡りに似ていた。サージカル的には一秒を争うユニークな世界である。今シンプリーに言えることは彼の命は心臓が到着するまで持つか保しようできないと医師団に言われた。しかしそこは長野県立こども病院である。彼らは二人の医師と看護婦一人を派遣した。飛行機内の一隅が治療室になった。他の病院なら出来ない。僕らの赤ちやんは四月九日にドウナーの心臓を貰った。この日を僕らの赤ちやんのバースデイと決めた。 5.もし何かしようと思えばそれをなすことができる。6000万円目標額に近い。友人の一人が語つた。この国もまんざら捨てたもんじやない。上の文章はたくまくんを救うために街頭募金活動のチーフとして立ち上がった伊藤鉄郎の手記であります。 2024/09/29(Sun) 22:42:22 [ No.10146 ] |