3月24日。土。曇り後雨。本部(もとぶ)。191/58キロ。
出発して初めて、50キロ以上走った。明日はどうせ船で一昼夜寝るだけだ。軽い気持ちで走れた。
民宿の食堂で、豆腐チャンブラーというメニューがあった。
私は、豆腐と葱さえあれば一年でも暮らせる。早速注文する。これは美味い。三センチ角、厚さ5ミリ程の薄めに切った豆腐が二十個程。たっぷり入った豚肉が、それともやしに程よくしみとおり、やはりたっぷり入っているキャベツやにんじんが、どこに入っているか分からないように控えめに大皿に盛り上げられている。軽い塩味のどこが美味いと言われても困る。大体主役の豆腐自体が、「これはご馳走ではありません」と、遠慮がちに主張している。その飾りの無さが、良い。要するに沖縄の家庭料理なのだ。
大皿に一つだけ豆腐を残し、泡盛をちびりちびり舐めるように呑んでいたら、店員が「お下げしましょうか?」という。冗談では無い。「名残を惜しんでいます」と両手で大皿を押さえるようにしたら、その仕草がよほどおかしかったのか、笑いながら残してくれた。
豆腐と言えば、アーサ汁の豆腐が好い。5ミリ角ほどに小さく刻んだ豆腐の煮頃は一瞬しかない。豆腐の生煮えと、煮過ぎは頂けないから。それに主役のアーサ(青い海草)も、この風味と色合いを出すには、タイミングは一瞬しかない。料理人の愛情が、その一瞬に籠められている。沖縄最後の晩に、沖縄最高の料理に出会えた。
豆腐チャンブラーと、アーサ汁と、泡盛があったら、一生でも沖縄で暮らせる。
沖縄は アーサに泡盛 島娘
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