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 旅は無情

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 3月31日。土。曇り。宗像市神港。566/79キロ。

 

 早めに宿を取ろうと、50キロ走った古賀市の当たりから探すのだが無い。

 福間の厚生年金会館を教えて貰って行ったのだが、満室。近くに宿は無いか尋ねたのだが、「この近くにはありません、宗像まで行けばあるかもしれません」と受け付けの女性はそっけない。

 実は表に出てみると、この通りを少し行くと民宿、旅館が軒を連ねていた。しかし彼女が言ったのを「貴方を泊めてくれる宿はありません」と解釈したら正解だった。

一軒目「お一人のお客さんはお断りしています」

二軒目「満室です」 駐車場も下駄箱もがらがらだよ。

三軒目 奥で気配はするが、出てきてくれない。

仕方ない。宗像市を目指す。

どこまで行っても宿が無い 寂しいな

山頭火のぼやきが聞こえるようだ。

もう六時近い。周りも薄暗い。不安な気持ちで宗像市に入ると、電柱にホテルの広告があった。早速電話したら、泊まれますとのこと。道順も詳しく教えて貰って着いたら、なんと雲をつくような十一階建ての巨大ホテル。こんなところに、神様は私を待つように、素晴らしいホテルを用意してくれていたのだ。

 喜びではずむ気持ちでカウンターへ。

 「予約していますか?」

 「さっき電話で、泊まれるということで伺ったのですが・・・」

 「予約して頂かないと・・・」と言いながら隣のマネージャーらしき男性となにやら目配せしている。気まずい沈黙があって泊まるには泊まれた。

 マネージャーが自転車置き場まで付いて来る。「荷物は全部下ろしてください」と命令するように言う。こちらは少しでも持つものを軽くしたいのだが、手伝ってくれる気配はない。

 「食事は出来ません。レストランは満席です。カップヌードルなら自動販売機で売っています」とのことで、ビールとカップヌードルで夕食を済ませ、風呂に行ったついでにレストランを覗いたらガラガラ。フロントに「レストラン空いてるよ」と言ったら、「さっきまで満席でした」とのこと。

 ここは元々バブル時期に立てられたマンションなのだ。売れ残った部屋でホテルをしているが、不動産屋のハードだけで商売をしているから、ホテル業のソフトが無い。

  値段だけは最高に高かった。朝一食で8400円。

 こちらはそうでなくても貧相なのに、年寄りが疲れると惨めなのだろう。旅人は寂しい。身形で心無い仕打ちを受けると、弘法大師だって仏門の人にあるまじき、無慈悲な報復をしている。

 私も宿は随分泊まったが、こんなのは初めて。福岡は旅情と無縁。明日は少し足を延ばしても、関門海峡を越えよう。

 

 鉢の木の もてなしは夢か 旅枕

 

 

 

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