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 放浪の原点

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 4月6日。金。曇り。呉。934/50キロ。

 

 呉への道筋、広島で西本さんに会った。中国へも何度かご一緒した気心のしれた囲碁友達である。彼が会うなり「けんさん、少し疲れていませんか」という。

 日本列島に異常寒波が襲来し、日中でも寒暖の差が激しく、少し体調をおかしくしていた。

 

 以前近所の社で、偶然に見つけてのだが、スッタニパータという最も古い経典の書付があった。落書きのような何気ない書付の中で、心に留まったのは、次の一節である。

 

 犀の角(40章)

 仲間の中におれば、休むにも、立つにも、行くにも、旅するにもつねにひとに呼びかけられる。他人に従属しない独立自由をめざして犀の角のようにただ独り歩め。

 

 (全章は長いので、以下大意を抄訳筆者)
子を欲するなかれ

況や友をや

犀の角のように独り歩め

愛しきものと別れることを厭いながらも

犀の角のようにただ独り歩め

 

2000年前の自由人が、いみじくも言っている。実は仲間も疲れる存在なのだ。独り放浪するというわがままこそ、人生最高の贅沢かもしれない。

心優しい西本さんは、ひたすら私に独りになる時間を作ってくれた。「今日は、早く休んだほうがいいですよ」と、呉まで車で先回りして、宿を手配してくれていたのである。KURE HANKYU HOTELは、乞食坊主は門前払いをくらいそうな高級ホテルだった。お心に甘えて二時チェックイン。死んだように寝る。お陰で疲れは完全に取れた。目の充血が無くなっている。

 

 三界の 首枷を解き 旅へ逃げ

 

 

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