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 同行二人

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 4月27日。金。晴れ。水戸。2051/86キロ。

 

 86キロは、今回の旅行では最長走行記録である。総行程も2000キロを越えた。残りは東北600キロと、北海道700キロ。大分先が見えてきた。

 

 東京を背にして、水戸街道6号線の里程表の数字がどんどん増える。

 柏を出て暫くしたら、やはり自転車で前になったり後ろになったりする、60年配の男性と一緒になった。彼が道端に立ち止まって、軽犯罪現行犯の現場にさしかかったとき、私もお付き合いして「どこまで行くの?」ということから、会話になった。東京を今朝5時に出発して、9時間かけて鉾石の自宅まで帰宅途中だという。

 「電車なら、すぐでしょう?」

 「そりゃ、電車ならすぐだけど・・・」と、彼が間接的に私の疑問に答えてくれた。東京で失業対策の仕事をしているとのこと。65歳になると、地元では仕事はない。東京の仕事も精々月に5日。月に二回ほどこうして自転車で70キロの道のりを往復する。賃金と電車賃は聞かなかったが、彼の自転車は私のように道楽ではないのだ。

 私も心無いことを尋ねたものだ。泣き笑いの表情を浮かべている男に、心で詫びる。

 

 私はかつて、東京で仕事をしたがすぐ辞めた。今にして思えば、高等学校を中退したという挫折感は「つっぱり」になっていた。都会は、そんな若者の蟷螂の斧を、簡単にへし折った。

 紆余曲折があって、足摺岬で亡くなった妻と知り合う。借金もぐれの呑んだくれが、三度目の挫折を味会わなくて済んだのは、彼女のお陰だ。

 私は電電公社の採用試験を、二度受けた。

 東京からはじき出された男。東京にしがみつかざるを得ない男。

 二人の老人が自転車で、東京を背に、太陽も背にして、水戸街道を北上する。

 振り返えりゃ 釈迦の手のうち 遍路道

 

 

 

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