4月30日。月。晴れ。南相馬(福島県)。2235/69キロ。
いわきを出て暫く走ったら、広野町。「東北の春を告げる町広野」の看板があった。
小さな丘陵が連なり、右手に太平洋、丘と丘の間には水が張られた田んぼ、種まきを待つ畑が黒く掘り起こされている。
春になれば しがこも解けて ♪
どじょっこだの ふなっこだの ♪
春が来たなと 思うべな ♪
小さな丘には、葉桜寸前の山桜がまだ咲いていた。
春深し 散り遅れたか 爺桜
東北は、春風も少しひんやりする。
6号線を外れ、浜街道を走っていたら、青い目のお嬢さんが、キャンプ道具を満載した自転車で一人走っていた。この道は、私も何処へ出るか少し不安だったのだが、とにかく北へ向かっているからと、なりゆきに任せて走っていた。彼女は道に迷っているようだ。
私は英語を話せない。彼女はたどたどしい日本語を話す。
どうも私に道を尋ねているようだ。
まず行き先の確認。
「Do you go」とか「What point」とか、知っている単語を、文法を無視して繋いだら、なんとか通じたようだ。地図の上に、彼女が目的地を指で示す。
丁度熊川の橋のたもとだったので、現在位置はすぐ分かった。
「We are this point OK?」
彼女がうなずく。
地図の上に磁石を重ね、「ユー マスト ゴー バック」と英語みたいなことを言ったら、これも通じたようだった。
彼女はスイス人。20歳代は間違いなく越えている。これまでヨーロッパ各地を自転車で旅しているとのこと。互いに写真を写し合い、メールアドレスを交換して、北と南に別れた。
青い目も 奥の細道 ペダル踏む
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