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 自由しか無い町

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左は千葉ちゃんのご父君。
私の膝の上に迅ちゃん。
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 5月3日。木。晴れ。紫波町(岩手県)。2399/67キロ。

 

 日の出4時35分。志津川湾は、三陸沖に向かって両側から蟹の鋏のような岬に深く囲まれ、ホテルの露天風呂から、日の出が見える。

 水平線に太陽が顔を出すと同時に、眼下の波打ち際まで、赤い絨毯が、さざ波で綾を作りながら一直線に延びてくる。日の出を待ちわびた漁船が、それを横切る。これも日の出と同時に起きた鴎が、その絨毯に乗って、露天風呂のすぐ下の岩まで飛来した。

 

 千葉ちゃんが育った、栗駒山が遠望できる実家まで案内を受けた。小川、畑、雑木林、まばらな民家、遠く全山雪を頂く栗駒山。

 「私は、この何も無いところで自由気ままに育ちました」と千葉ちゃんが言う。彼は自由しか無い所で育ったのだ。

 

 花巻で泊まる予定だったのだが、今日から三日間花巻の伝統行事「泣き相撲」のため何処も満員。がっくりしていたら、ホテルの人が、私の行き先を尋ねて沿線上の宿泊施設に電話をしてくれる。四軒目でやっとあった。花巻には親切しか無い。

 時間しか無い老人が、自由と親切しか無い東北路を、自転車でぶらぶらする。

 

 何も無い 故郷の春に 胸ひろげ

 

 

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