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 色即是食う

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 4号線に東京からの距離が、綺麗に555.5キロと並んだ。

 ここは丁度、石川啄木の生地渋谷村。

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 5月6日。曇り後雨。福地(青森県)。2574/65キロ。

 

 ホテルの従業員の方が、麓の家に帰る車に私の自転車を積んで、4号線の沿線まで送って下さった。昨日あんなに苦労して登った坂道が、嘘みたいに簡単に通り過ぎた。

 

 天気予報は、夕方から雨。少し先を急ぐ。

 コンビニ弁当を道端に広げて昼食。今日は、サンドウィッチに揚げパン、パック牛乳。一番幸せなひとときだ。

 岩手県が生んだ天才、宮沢賢治の詩「雨にも負けず」を冒涜するつもりはないが、私は子供の頃この詩を見て、けしからんと思っていた。

 「一日四合の玄米と、少々の味噌と、それに野菜があれば・・・」

 これだけあったら、誰だって文句は言わない。それ以上望むのは贅沢だと。当時終戦後の満州で栄養失調だった私は、十段足らずの家の前の階段を一息で登れなかったから、食うことしか頭になかった。「色即是空」という言葉を始めて耳にしたときも、「しきそくぜ食う」だと思っていた。

 格差社会が問題になっている。しかし、「食う」という絶対レベルは満たされているのか。

 

 「民は食を以って天と為す」。食うというレベルを満たされた人達を次に悩ませたのは、「民は乏しきを憂うるに非ず、等しからざるを憂う」である。即ち格差。

 我が家も、食える程度の金はあったが、使う才能はあっても、稼ぐ才能が無い人の存在が、大蔵大臣を悩ませた。

 夫婦喧嘩の種は、いつも金だった。

 色即是空。合掌。

 

 働いて 食うていつしか 古希が過ぎ

 

 

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