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 自転車の町

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 豊富町の看板
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 5月16日。水。晴れ。豊富。3185/85キロ。

 

 音威子府から稚内までは、途中多少のアップダウンはあっても、天塩川沿いになだらかな下りである。歩道は途切れることもあるが、交通量も少ないから特に問題はない。

 

 30キロほど走ったら、丁度昼時中川道の駅に着いた。天塩川を挟んで数本の吊橋の向こうに市街地が見える。ここは、札幌の棋友阿鬼三角さんが少年期を過ごした町だ。「中川なら、宿の心配はないよ」と言ってくれていたのだが、あまりにも早い。

 まあ食ってから考えようと、カツ丼を注文したら、豚一頭分の肉が入った超大盛りだった。北海道は「でっかいどう」

満腹になったら眠くなった。建物の裏に、干草が寝床のようになっていた。頭上真上の北国の太陽は、長閑に日差しも優しい。靴を脱ぎベルトを緩めて横になったら、心地よいまどろみ。うとうととしたら一時だった。

 豊富までは50キロ。道路と天気は申し分ないが、距離は厳しい。私は性懲りもなく、また前進に賭けた。

 

 5時前、豊富着。心配した宿は、国道沿いにすぐあった。ここは「自転車健康都市宣言の町」。

 宿の若奥さんが、「私も自転車は好きです。一緒に行こうかしら」と言う。宗谷岬まで付き合って呉れるのかと、すっかりその気になったら、どうも冷やかしのようだ。

 年寄りの純情を弄ぶのは罪悪ですよ。聖書も戒めている。

 「汝揶揄するなかれ。冷やかしの心もて年寄りに接したるは、すでに揶揄の罪を犯したるなり」

 

 冷やかしの 夜風に足を よろめかし

 

 

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