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Message # 98 is from: cavtot
Time: 97/09/16 16:50:07 Section 29: 旅のお部屋
Subj: 種子島徘徊記(5)

車に乗り込み、衛星組立棟へ移動。
ここは敷地に入る前にゲートがあり、(車は1台でも)人数分のIDカードの認証が必要です。建物に入るときにもIDカードが必要です。中に入り、エレベータに乗ります。組立作業場には直接入ることはできず、通路の窓ガラス越しに見るようになっています。

最初に見たのは、現在アメリカと共同で開発が進められている、熱帯降雨観測衛星の組立調整作業でした。例の金色のシートで覆われた、複雑な形の衛星のまわりで、頭から足まですっぽりと手術服のような白色の作業衣を着たアメリカ人が、数人で作業をしていました。こちら側から見ているかぎり、いったいなんの作業なのか、見当もつきません。共同開発ということですが、まだ日本側の作業は始まっていないみたいです。

この衛星はアメリカで作られ、ここまで運ばれてきました。種子島の代表的な港は西之表港ですが、陸路の短縮できる島間港で陸揚げされました。ロケットや衛星関係はこの港が多用されるとのことです。ロケットは大型トレーラで、人の歩くほどのスピードで丸1日かかって運ばれてくるそうです。それだけに、島間から宇宙センターまでの道路は整備されていますが、それでも2時間かかって通る曲がり角もあるそうです。

もう一つは技術試験衛星が置いてある作業場です。技術試験衛星は、いわゆる宇宙ステーションを実現するために必要な基礎技術を収集するための衛星のようです。たとえばこの衛星は、ドッキング試験のためにチェイサー衛星とターゲット衛星とで構成されていたりします。

この衛星も、やはりキラキラと金色に輝くシートに覆われていました。シートは衛星の温度変化を均一にする機能があるそうです。太陽光の当たるところは百度をこえ、反対側は0度以下になる。それを抑えるそうです。宇宙空間の温度ってマイナス270度ぐらいなんですよね、たしか。
ここで作業していたのは、TOSHIBAのロゴ入りの作業衣を着た人達でした。
この棟でもパチリ。衛星なんかの写真を撮ってもOKなんです。完全に自由にとはいきませんが。

ではいよいよロケット発射塔に cavtot



Message # 99 is from: cavtot
Time: 97/09/16 16:50:41 Section 29: 旅のお部屋
Subj: 種子島徘徊記(6)


宇宙センターのなかでも、誰もが一番気になるロケット発射塔。吉信射点のロケット発射塔は、今日本で一番大型のH−IIロケットを打ち上げるのに使われています。
2kmぐらい離れたロケットの丘からは、海に突き出た吉信崎の上に、ちょうど建設中の骨組みのままになっているノッポビルのような発射塔が、でんと乗っかった恰好に見えます。

ここでも衛星組立棟に行ったように、ゲートでチェックを受けてから発射場へ続く道路を通過しました。

吉信射点には、岬側に高さ50〜60mのロケット発射塔と、そこから陸地側に300mほど離れたところには、発射塔より高いと思われるロケット組立棟と、屋根の中央がとがった、ちょうどモンゴルのパオのようなテント形の発射管制棟があります。
組立棟から発射塔までは、レールとレールの間隔が20mはあると思われる軌道が敷かれていて、軌道の外の両側の道路と共にアスファルト舗装がされています。

ロケット発射塔側から見たロケット組立棟 ロケット発射塔の上から見たロケット組立棟(正面)
その右側にロケット発射移動台がある
左の三角帽子のような建物が発射管制棟


ロケット組立棟の中で、発射台の上に打ち上げ本番となるロケット本体・ブースターロケット・衛星などが打ち上げ時と同じ姿勢で組み立てられ、整備されます。
打ち上げ可能となったロケットは、発射塔までの軌道の上を2時間(?)かけて、台ごと発射塔まで移動します。発射塔に据え付けてから6時間(?記憶が曖昧)かけて燃料を充填するそうです。

でもって燃料充填後、発射が例えば1週間延期になったりすると、また4時間かけて燃料を抜くことになるんだそうです。高圧の液体燃料。万が一破裂などしようものなら、水素と酸素、何が起こるかわからん、ということなんでしょう。

さらに続く…… cavtot



Message # 100 is from: cavtot
Time: 97/09/16 16:53:36 Section 29: 旅のお部屋
Subj: 種子島徘徊記(7)


安全のためヘルメットをかぶり、いよいよエレベータで発射塔に上がります。エレベータの最上階は14階までです。もっと上へは人力で。一般人はここまでです。
14階というと高さにして45mぐらいになるのでしょうか。手すりも床も、鉄骨のみで組み上がっていて、足元からはそのまま真下の地上までが透けてみえます。45mといっても、上下左右まわりがこのスケスケ状態ですから、結構な清涼感(^_^;; が味わえること受けあいです。

ここから見える景色は一言で言って、絶景です。
東向きはツーーーと太平洋の水平線。北から西側一帯は種子島が見渡せます。そして南は竹崎射場へ続く宇宙センターが一望できます。よく晴れた空には、綿をちぎったような積雲がぽっかり浮いています。
説明の女性の方は種子島の人だそうですが、こんなにきれいに見える日(この日は8月29日でした)はあまりないとのことでした。
当然ここでもパチリ、パチリ。
南東(吉信崎先端)方向 北西(ロケット整備棟)方向
南西方向。 J1(以前H1)ロケット発射塔、その右に気象観測塔が見える。右下は工事中のH2A射点。

H−IIロケット1本打ち上げるのに、百億円単位の金額と、多くの時間と人手がかかっています。それだけに、細心の注意を払って打ち上げられます。どこかにほんのちょっとの問題があっても、それが解決するまで、打ち上げは延期です。今回、COMETS打ち上げの延期は、衛星に問題があったのですが。

宇宙センターで最も高い建物は?というと、気象観測塔。これがちょっと変わっていて、地上20mから20mおきに4つの風向風速計が設置されており、掛け算すれば80mになります。打ち上げには気象も重要な要素なんです。

次に発射管制棟の中に入りました。通路からはガラス張りになっていて、管制室を見渡すことができます。ここは、今一番新しい管制室です。使われている機材などは最新のものでしょうが、素人には違いとかはわかりません。が、この建物がロケット爆発の衝撃にも耐えられるよう、外壁のコンクリートは1.2mの厚さがあるそうです。

ちなみに、H−IIロケット打ち上げ前には、半径3km以内の一般人は、住んでいる人も全員退去するそうです。

予定の見学が終わって、また管理棟に戻ってきました。10時から1時間半の予定が、すでに12時をまわっていました。でもあっという間に過ぎてしまいました。説明の方と車を運転していただいた方にお礼を言って引きあげました。

さて、お昼は‥、宇宙センターのゲストハウスと同じ棟にある職員の食堂にしました。職員用ですが一般の人も利用可。ただし、職員でごった返すので一般の人は12時半以降にしましょう。1時近くに入ったら、職員もまばらでした。値段は程々、味は良好、宇宙センターに来たら一度は利用しましょう。
(以上、CMでした) cavtot



Message # 101 is from: cavtot
Time: 97/09/16 16:54:12 Section 29: 旅のお部屋
Subj: 種子島徘徊記(8)


種子島宇宙センターに来て、もっとも手軽に、しかも詳しく宇宙やロケットのことを知ることができるのは、なんといっても宇宙科学技術館でしょう。
宇宙開発に正しい知識と理解を持ってもらうために、また、営利企業などではないということなのか入館料は取られません。でも、展示内容や維持費などを考えると、いずれ有料になるかも。

展示場では、大型ロケットのエンジンや衛星、衛星フェアリング(打ち上げのとき見える、ロケットの先端の尖った部分。この中に衛星が入っている)など、本物のパーツに接する事もできます。エンジンのカットモデルなどは、メカが好きな人にはたまらない展示物でしょう。スカート部分が黒くすすけているところを見ると、燃焼試験などで実際に使われたものなんでしょう。目の前のエンジンが数十tもの推力をだすなんて考えると、結構感動ものです。

ゲーム好きな人には、技術試験衛星VIIをモデルにしたドッキングゲームがおもしろいです。ディスプレイ上で、半周違いで地球を回っているチェイサ衛星とターゲット衛星を加速・減速させて軌道上でドッキングさせるもので、衛星の接近度により周回軌道画面、数百mスケールの画面、ドッキング操作画面と場面がかわります。このゲームはボタンの操作テクニックではなく、宇宙空間での力学的動作にかなった操作をしないと軌道を離れて飛んでいってしまったり、地球に落ちたりします。うまくドッキングに成功すると、得点と順位が表示されます。

また、ロケット打ち上げゲームでは、静止衛星の打ち上げや月への打ち上げなど、いくつかの打ち上げパターンから1つを選び、実在のロケットの性能表をもとに機種を組み合わせ、打ち上げをディスプレイ上で行ないます。設計がまずいと上がらなかったり、加速Gが大きすぎて破壊したりと、本物でおこりうることと同じ結果が出ます。設計から結果までのデータと得点をプリントアウトできます。
他にも国際宇宙ステーションの日本実験モジュールを想定したマニピュレータ操作ゲーム(結果は1分51秒、当日2位の成績)、スペースシャトルのドッキングゲームなどあります。
どれも実際のもの、あるいは計画されているものをシミュレーションする形なので、宇宙技術を実感できました。

天体に関するものもたくさんあって、ハッブル望遠鏡の天体写真や、太陽系の惑星に関する映像やデータがディスプレイで見ることができます。1999年太陽系の惑星が1直線に並び‥‥などというノストラダムスの大予言も、ここで確かめられますよ。

他にも衛星に関するものなど、まだまだたくさんあって全部を紹介しきれません。見ていないものもあります。一つ一つのコーナーをじっくり回っていたら、とても1日では足りません。

1階ロビーに売店があるので、おみやげを買いました。宇宙ペン、マグカップなどの小物、NASDAのテレカや、Tシャツ、宇宙食など、ちょっと変わったものも売っています。でも、欲しかったH−IIロケットやなんかの打ち上げのポスターはなかったです。
テレカと、NASDA STAFFの文字が印刷されたTシャツ、宇宙ペンを買ってきました。
宇宙ペンは無重力でも字が書けるように、窒素ガスが圧入されていて、地球上では上に向けても字が書けます。普通のボールペンではしだいにインクがかすれてきます。
これはまぁ、最近では通販でも売ってますが。
cavtot



Message # 102 is from: cavtot
Time: 97/09/16 16:54:41 Section 29: 旅のお部屋
Subj: 種子島徘徊記(9)

最後に宇宙センターじゃない施設を一つ。

西之表市と中種子町の境の、種子島で一番高い山(282m)に気象庁の種子島レーダがありました。建物の前で記念撮影をしていたら、中から職員の方が出てきて、富山から来たんです、などと話をしているうち、中の設備を見せてもらえることになりました。

レーダは屋上の丸いドームの中で回っています。しかしそれを見ることはできませんでした。(レーダの前で電波を浴びるのは危険だということを聞いたことがあります)
暗い部屋には、このレーダーの送受信機(NECだったか?)や表示用の円形ブラウン管、磁気テープのかかった三菱製ミニコンなどがありました。
レーダの反射波をブラウン管に投影するために暗くなっていて、昔はこれをカメラで撮影したそうです。ブラウン管も今はあまり使われなくなり、代わってミニコンやパソコンで処理をしていて、隣の明室で観測しています。それでも中に入った時には、ブラウン管で見せてもらいました。

で、ここと福岡レーダの観測データとをパソコン上で合成して、九州本土のほぼ全域を測候しています。また、奄美大島のレーダーが離島をカバーしています。
パソコン画面右上にはちょうど福岡上空の雷雲を捉えていました。種子島レーダーは400kmまで観測可能。そして、この福岡あたりが限界とのことでした。

気さくな人達で、いろいろ聞くことができました。2人1組で夜勤を含む1日交代だそうです。重労働じゃないにしても、夜勤を含む1日勤務というのは、結構きついです。

ここへはときおり見学に訪れる人がいるとのことです。

以上、種子島のあちこち見て回った所を紹介しました。

ああ、また行きたいな cavtot



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