聖闘士 星矢

〜Last Chapter The Olympus〜


11話「アテナの忘れ物!!の巻」


「なんでなんだよ!オデッセウス!」
いきりたつ貴鬼が言った。
「とにかく、聖域(ここ)を動いちゃだめだ。師一輝から言われている。」
「それじゃ。理由になってないよ!」
 貴鬼が文句を言うが、オデッセウスたちは一行に動かない。すると、
「・・・!」
 オデッセウスの後ろにいたテレゴノスが、何かの気配に気づき、後ろを振り返った。
 貴鬼もその様子に気づいたようで、あわてて走り出す。
「どうやら、きたようだな。」
「ああ、俺が痛手を与えたあのクソ野郎の小宇宙にそっくりだ。」
 オデッセウスとテレゴノスは互いに頷き合う。続いて、やはり師である紫龍に置いていかれた童虎が走り出した。走り出す貴鬼と童虎を見て、オデッセウスは問いかける。
「どこに行く?貴鬼!」
「オデッセウスの兄ちゃん。あんたの言っていることが分かったよ。」

 そういうと、貴鬼と童虎は下の12宮へとかけていく。
それを見て、勢い新たにオデッセウスたちは聖域の入り口に向かって歩き始めた。
「おれたちも負けてはいられない。がんばって12宮を守らねばならないようだな。」
「あぁ。」
 

―――聖域金牛宮付近

 星矢、紫龍、氷河、瞬の4人は、これまでの聖闘士としての戦い、そしてこれから起こるであろう最後の聖戦に思いをはせた。
「しかし、紫龍。お前がこんなに早く、そして俺たちをはげまし、これからの戦いに向かわせるとは思いもしなかったぞ!」
 星矢が、いつもとは少し様子の違う紫龍に声をかけた。紫龍はその言葉を聞くが、別段それに腹を立てる様子も無く、
「何!いろいろとわけがあってな。星矢、よもやお前ほどの男なら気づいてないわけはないと思うが、俺たちの戦いはこれが本当に最後なんだ!俺はそう思う。」
紫龍は星矢に対して、そう答える。
「…。」
氷河は不適な笑みを浮かべながら紫龍の方を軽く見やった。いままであまり口を開かなかった瞬が唐突に紫龍に言った。
「紫龍。僕たち、今回も無事に生きて戻ることが出来るんだろうか?」
「バカなこというな!俺たちは必ず生きて戻ってくる!!そう、前回のハデスとの聖戦のときのようにな!」
星矢が、瞬の不安そうな横顔を見ながら、そう叫んだ。それから一呼吸おいて本来瞬が語り掛けたかった相手が星矢たちに対して答えた。
「フフフ、それは俺にもわからん。たしかにまともに全員生きて帰れるとは考えづらいがな。しかし、俺には生きて戻らねばならぬ理由があるような気がする。しかし、この聖戦に向かわねばならぬ、のうのう生きていてはならぬ理由もあるような気もするんだ。俺はその答えの見えぬ最後の戦いを挑んでいるような気がするんだ。」
「…。」
 氷河は何も答えなかった。しかし、紫龍のその言葉を聞いて思わず笑みを浮かべた。
と、同時に前方から何者かが迫ってきた。それはみるみるうちにこちらに迫って、あっという間に星矢たちとかち合った。
「ばかな!おれたちが戦うのはオリンポスの神殿のはずだ。なぜ聖域にこんなやつらが…。」
 星矢が言うも早いかその男たちは攻撃を仕掛けてきた。
「フヒャヒャヒャ…」
 近づいてくるその男たちは、ショルダがない。右の肩は大きく露出している。そのかわり、右手には自分の体を有に越えるのではないかという大きな斧を持っていた。角の生えた大きなヘルメットをかぶり、足は毛皮でできたブーツをはき具足のようなもので足を保護しているわけではないようだ。男たちは皆非常に大柄で、その姿はまるで、中世に生きた戦士(ウォーリア)のようであった。
ズシャーーーー!
「うわ!」
 星矢が男どもの斧でたたきつけられ吹っ飛ばされる。はやくも金牛宮を抜け、白羊宮にたどり着こうかというさなかに思いも寄らぬアクシデントが舞い込んできた。あわてて、瞬が星矢を抱え上げる。
「大丈夫かい?」
「あいたた… 誰なんだこいつらは?」
 星矢は自分の体よりも、この異常事態に関心があるらしくすぐに起き上がると聖闘士として構える。それに続くかのように紫龍、氷河も体制を整える。
 休む間もなく、戦士たちは攻撃をしかけてくるが、さすがに歴戦の聖闘士である星矢たちは、不意打ちは食らったもののその後はなんの問題もなく、交わしつづけた。そして、星矢が、いつものように天馬座の星を拳で打ち出すと、
「一度にここから立ち去れ!ペガサスりゅう・せぇぇぇ!!」
「お待ちなさい!!」
 そういうと、戦士たちは一斉に攻撃をやめ、その男の前で静止した。男が静かに星矢たちの前に現れる。その男は紫龍と童虎が大滝の前で見た男に他ならなかった。
「また、お前か!」
 紫龍が叫ぶ。
「そう、わめきたてずともよいではないか。ここがお前たちの墓場になるのだからな!」
 男は冷笑を浮かべながら言った。
「残念だが、俺はこんなところで死ぬつもりはないぜ!オリンポスの神だかなんだか知らないが、俺たちがぶっ飛ばしてやるぜ!」
 星矢は今にも先ほど打ち出しかけた流星拳のフォームを持ちながらも、
その男はつま先をそろえるかのようにたち直し、なおも冷笑を続ける。
「それに、いくら俺たちに倒されるとはいえ、名前くらいは知らせたほうがいいんじゃないのか?」
 星矢はお約束のメチャメチャな論法で敵を挑発する。男の後ろにいた戦士たちも怒りが沸騰し、星矢たちに攻撃を仕掛けてきそうであったが、男の大いなる小宇宙によってそうできずにいた。男は先ほどつま先で立ったかと思っていたらフワリと宙に浮いて、大きく両腕、両足を広げた。すると、
「よかろう!世はゼウスの末子、風の神『ヘルメス』。貴様らを手始めに抹殺に来たのだ!」
 あわてて、星矢たちは防御する。しかし、
 間に合わない!!
 ヘルメスはあたりから冷たい風を集めると右の拳をまっすぐに突き出し叫んだ。

「ダイアモンドダスト!!」
 ヘルメスはまるで、中を舞う風のようにその右拳を突き出している。本来星矢たちのほうが高い位置にいるはずだが、ヘルメスが中空に浮いているため、星矢たちは前上方より技を食らった。
 星矢たちはそのあまりの風の勢いと冷たさに簡単にふっとばされ、そして凍結してしまった。
「バカな!」
星矢が言う。ヘルメスはすべて終えたかのように優雅に地面に降りた。そして何かを星矢の後ろに感じながらも、立ち去ろうとした。
「待て!!」
 星矢たちの後ろに間違いなくその技を受け止め、まったく凍傷をうけずに立っている男がいた。氷河だった。
「その技、どこで覚えた?」
 ヘルメスはまるでその男が立ち上がってくるのを待っていたかのように振り返り、そして答える。
「馬鹿め!聖闘士の技はアテナのものではない!」
「!」一同驚く。
「聖闘士が用いる技も、海闘士、冥闘士もすべてオリンポスの神々によって編み出されたものだ。その程度の技で驚いてもらっては困る。」
 それを聞くと氷河は再び不敵な笑みを浮かべ、
「ならば、うけてももらおう!」
 ヘルメスとはまた違う白鳥の美しく優雅な舞を見せた。
「ダイアモンドォ・・・ダストォォォ!!!!」
 美しい氷の結晶が猛吹雪を起こしてヘルメスの体に襲い掛かる。さきほどのヘルメスのわざとは違う。明らかに凍度が違った。
「馬鹿な!聖闘士にこれほどの力があるとは…」
 ヘルメスはダイアモンドダストによって大いに飛ばされ、白羊宮をも超えて、聖域の入り口付近まで吹っ飛ばされた。あわてて、戦士たちもヘルメスの後を追う。星矢たちは彼らの逃走する姿を前に白羊宮を超え、入り口までたどり着いた。入り口まで飛ばされたヘルメスは氷河の絶対なる零度によって完全に凍りつき、ぴくりとも動かない。さらに小宇宙までをもまったく感じないのだ。
 戦士たちが入り口まであとずさると、一人の男が現れ、星矢たちにわびた。
「風の神ヘルメス様を破り、そして我がアレス陣営の戦士『戦闘士』をも破るとは。。。このダイモス。いささか貴行らを馬鹿にしていたようだ。ここで、改めてわびさせてもらう。」
「当然だ!本当の戦いはオリンポスの神殿のはずだ!ヘルメスの命はこのフライング戦闘の代償ということでもらっておいてやるぜ!!」
 星矢は、ダイモスにそう切り返す。そして、
「分かりました。それでは、これからあなた方4人をオリンポスの神殿にお連れいたします。私のあとをついてこられますよう。」
 言うとダイモスは歩き始め、星矢たちもそれを追った。
 そして、姿は見えなくなった。

 

「もういいのか!ヘルメスよ!!」
アレスが聖域のすぐ近くにある森の中から現れた。すると、先ほど氷河が倒したはずのヘルメスの体はなくかわりに朽ち果てたわらが散らばっていた。どこからともなく、ヘルメス本人が現れた。
「もう結構ですよ。いまのところ私の思惑どおりにシナリオは進行しています。」
アレスが、いいかげん待ち飽きたかのように足をトントンとゆする。それを見て、気の早いアレスをなだめるようにヘルメスが言った。
「アレス殿。あせってはなりません。あれがあってはいかな神といえども相当な損害を受けることは目に見えているのです。父王ゼウスと並び称される3界の王の一人、、ハデス様がいともたやすくあの星矢とかいう小僧にひねられたのです。甘く見てはいけません。」
「ヘルメス!おまえの言葉はききあきた。で、策はあるんであろう?」
「もちろんです。星矢たち歴戦の勇者はオリンポスの結界の恐ろしさをしらずに向かってしまったし、ここに残された聖闘士はハデスとの聖戦を終えて誕生したヒヨコか、聖戦に参戦できなかった腰抜けばかり。そしてこの聖域崩しを進められるのは12神きっての勇者アレス殿。もはや、聖域陥落は時間の問題でしょう。」
 それを聞くと、アレスは不適な笑みを浮かべて言った。
「ハハハ…、それをきけば安心だ!このワシと息子のフォボスとで、ものの1時間でのしてくれよう。」
 ヘルメスはそのアレスの姿を見てうなづき立ち去ろうとする。
「それでは、私は、ダイモスに星矢ども抹殺の指令を通達しますゆえ。」
「そうしてくれ!」アレスが答える。そして、戦闘士、フォボスに戦いの檄を飛ばそうとしたそのとき、、、

ボォッ ボボボォッ…ォッッッ…

あの12宮の間に聳え立つ「火時計」が赤あかと灯りだした。
「!」
「残念だが、この12宮は12時間たっぷりかけて、上ってきてもらうよ。そして、一番上には素敵な賞品が待っているんだろうね!」
 そこに現れたのは、星矢たちのあとを追って出た貴鬼に他ならなかった。その身は師ムウ、そして前教皇シオンの纏った黄金の牡羊座の聖衣で覆われていた。いままでのおまけの貴鬼とは考えもつかないほどの神々しいまでの姿であった。
「何!!」
「貴様、アテナの忘れた勺丈のありかを知っているのか?」
あわてて、フォボスがアテナの忘れたあのニケについて口を滑らせてしまった。
「へぇ、あれが大事なんだ!おいらたち残念だけど、ぜんぜん知らなかったんだ。そういうの。」
 貴鬼はヘラヘラと笑った。その場を立ち去ろうとしたヘルメスはフォボスの失敗にやられて頭を抱える。アレスは激怒する。しかし、冷静なヘルメスはこの場は一度退散したほうがいいとアレスに進める。
「ばかな!この聖域入り口にはすでにワシとアポロンたち一派の闘士がゾクゾクと集まってきておるのだ。いまさら引くことはできんぞ!」
ヘルメスはなおもアレスをなだめる。
「とにかく、聖闘士にこのことが知れた以上、アテナに何をされるか分かりません。ここはおとなしく12神であるわれわれは撤退いたしましょう。」
 12神とアテナの契約は人間が12神に勝てばその権利を譲るというもの。そして、アテナからの最大の贈り物つまりアテナが持ち忘れたニケの勺丈は神王であるゼウスの承認済みなのだ、ここでその契約を12神サイドが破ったとあらば、アテナが再び謀反を起こしても誰も止めることはできない。これにはアレスもあきらめるしかなかった。
「フォボス!この責任はお前にとってもらう。ワシは知らん。ここに集まるすべての闘士の統率はお前に任せる故、ことなく静めるのだぞ!」
そういうと、アレスとヘルメスはいずこともなく立ち去った。

「さあ、どうする?キミたち帰れなくなったね。」
 貴鬼が冗談めかして言う。
「馬鹿をいえ!いくら父アレスの加護がなくなったとはいえ、俺だって、神!恐怖の神だ!!行け!!戦闘士ども!!!」
すかさず、貴鬼が両手の人差し指を前に立て、岩を中空に浮かして言った。
「さあ、おまえたちの体にこの岩を当ててやるぞ!」
 クソガキ!!といわんばかりに戦闘士が襲い掛かってくる。
「こりないねえ。   …テレキネシス!」
 岩が戦闘士たちに見事にあたると戦闘士たちはもんどりうってその場に倒れた。
 貴鬼は戦闘士どもに対して者に構えると、マントを翻しつつこう言った。

「ここから先は聖域、そしてこの第一の宮『白羊宮』はこの牡羊座(アリエス)の貴鬼を倒してからでないと進むことはできないよ!!」

 フォボスは戦闘士のやられぶりを見て冷静さをとリ戻す。

「よかろう!このフォボスの今世紀はじめのいけにえは牡羊座、アリエスの貴鬼。ということにしてやろう。」

  二人が身構える。
そして、その後ろにはアレス、ヘルメス、アポロンなどのアテナの事情を事前に知った神の闘士たちが続続と集まりはじめていた。

 こうして、聖闘士と12神たちの戦いの火蓋は切って落とされたのである。 


ついに、始まろうとする最後の戦い!

第12話
激突!!牡羊座・貴鬼VS恐怖の神フォボス!!の巻
キミは小宇宙を感じたことがあるか!?
感想どしどしお待ちしています!


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