聖闘士 星矢

〜Last Chapter The Olympus〜


13話「小惑星の反乱!!の巻」


 

「この小石と大きな石は同じもの。」
 意識を取り戻した貴鬼は、白羊宮を後にしようとするフォボスの後姿を見た。
 フォボスのあとには規則正しく戦闘士がついていく。それを突っ伏しながら眺める。そのとき、去り行くフォボスたち一行のある異変に気づいた。
「!?」
 不思議なことにフォボスに続く戦闘士はフォボスを筆頭にじょじょに体格が小さくなっているように見られる。
 それだけではない。威風堂々としたその姿もしだいに後ろへ行くほど小さくなっているのだ。
「なるほど、これはもしかして。」
 貴鬼はなおも、小宇宙を殺しながら、その姿を眺める。そして、
「サイコキネシス!」
 小声でそうしゃべると、一番後ろにつく、とてもアレス配下の戦闘士とは思えない戦士に呪をかけた。
「おまえの主人は神ではない!」
「!?」
 貴鬼の小声のようなテレパシーに一番後ろに立つ戦闘士をそそのかした。一人また一人、貴鬼は戦闘士に呪をかけていく。
「ばかな!?フォボス様はアレス様に認められた大切な恐怖の神のはずだ!!」
 戦闘士はかたくなにその思いを募らせるが、呪をかけていくと貴鬼の信じ込ませた呪はますます真実味を帯びてくるようになる。それは、、、
「フォボス様!」
「!?なんだ!?」
フォボスの直下に立つ大変体格のいい戦闘士がフォボスに声をかける。
「フォボス様。ここより先金牛宮に行く必要はありません。」
「どういうことだ!」
 フォボス直下の男はさらに続けた。
「はい。それは、あなたがこのオレにすぐに殺されるからだ!!」
 言うが速いかフォボス直下の男、その他にもフォボスに近ければ近い戦闘士ほど、闘士を剥き出しに、フォボスに向かって行く。
 とっさのことにひるむフォボス。しかし、それはアレスに認められた恐怖の神である。すかさず体制を整えると向かってきた戦闘士に技を繰り出す。
「貴様らにこのワシが倒せると思っているのか!

    フィアー ・ ファイヤー!!        」

 しかし、手前の男はそうそうたやすくやられなかった。フォボス直下の男、そしてその後ろに2トップのように並ぶ2人の男が3人でフォボスの技を受け止める。そして、その後ろからは、そんな戦闘士とフォボスの戦いをあざ笑うかのように、フォボスにとどめをさそうとする。
 力のない後方の戦闘士では到底フォボスにとどめをさすことはできなかった。しかし、多対一の戦闘ではいかなフォボスといえども、かなりの苦戦を強いる。後ろの戦闘士が倒れれば前で防御に徹していた力のある戦闘士がフォボスに攻撃を繰り出す。
「貴様らぁ!!

        メテオ・インパクト!!」

 戦闘士はなおも戦い続ける。フォボスは少しまた少しと傷を負っていく。そして、最後にフォボスは己の持つ最大の技を繰り出すにまで至った。
「アレス様直伝の技!!貴様らに見せてやろう!!

         アルティメットストライク!!     」

  その究極、前回のアテナエクスクラメーションをしのぐのではと思える技は、白羊宮の上で激しい爆発を起こし、すべての戦闘士を一網打尽にした。
「はぁはぁ…。」
 フォボスの顔に一筋の汗が流れる。それは明らかにすべてを超越した神の顔ではない。一人の人間そのものであった。
 倒れていた貴鬼はほくそえむとすばやく立ち上がり、フォボスのいる白羊宮裏に向かっていった。
「やはり、あんたは人間だったんだね。」
 その言葉を聴いて、フォボスの顔が青ざめる。
「正確には人間であった。…というのが正しい。そうでしょう。」
「…。」
 フォボスはあまりの事態に唖然としていた。しかし、この事件が貴鬼の念力による単なる幻惑であったとは考えづらい。いかな黄金聖闘士といえどもその中心に位置するフォボスを無視してここまでの念力が通用するはずがない。ある局面から戦闘士は能動的にフォボスへと向かっていったのだ。
「そう。おいらがあてたげよう。キミたちアレスの生き方を。」
 貴鬼はフォボスを前に話を始める。
「フォボス、そしてダイモスの二人はもともとはここに倒れている戦闘士の一人に過ぎなかったのさ。そして、キミは血みどろの戦いの果てに勝利をつかむ。その報酬としてといってはなんだが、キミはアレスから信任あついフォボスという神の座をもらったのさ。」
 貴鬼は、汗をぬぐうフォボスを横目にさらに続けた。
「そして、キミはそのことを分かっていた。いつしかキミを倒し新たなフォボスへと変わろうとするものがいることを。」
 フォボスはしだいに息を取り戻す。そして冷静に貴鬼の話を聴き始めた。
「星ですらいつかは死ぬ。それと同じように今キミは神から一人の人間へと戻る。フォボスはどこかへ消え、また再びどこかに現れる。
 それは、いつしか小惑星から火星の衛星へと変わっていった小惑星とまったくいっしょのことさ。」
「しかし、おれは負けるわけにはいかない!」
 フォボスであった抜け殻は、再び貴鬼へとファイティングポーズを傾ける。
「食らえ!!メテオストライク!!」
 貴鬼は小さな隕石の塊を軽々とクリスタルウォールで防ぐと再び技を繰り出した。

「スターダスト・レボリューション!!」

「ぐわ〜!!」
 フォボスの抜け殻はその場に倒れる。貴鬼は倒した男に黄金聖闘士の大きなマントをかぶせると言った。
「アレスの戦闘の精神。この貴鬼がしっかりと見届けたよ。」
 そういうと、貴鬼はその場に倒れ再び永い眠りについた。そこにはかつてほどの大きな小宇宙は残されていなかった。

 

 

聖域入り口
「すでに12宮の火時計がともっているな。」
「気が付いたか。ラダマンティス。」
「馬鹿を言うな!前回はこのオレの命令でここ12宮の黄金聖闘士どもをのしてやった。」
 そこには、3人の男がやってきていた。そう、彼らこそ冥界の3巨頭「ミーノス」「アイアコス」「ラダマンティス」の3人であった。
 アイアコスがrタダマンティスに問うた。
「他の冥闘士はまだ到着していないのか?」
「いや、そこまではありえないのではないか?いかにエリス神の導きがあるとはいえ、実力のない冥闘士はよみがえらない。」
「それもそうだ。」
 アイアコスはラダマンティスの言葉に納得したが、
「これからの冥界の命運は俺たちにかかっているといっても過言ではない。まずはすばやくこの12宮を突破し、アテナの勺丈を奪わねばならない。まずは、それを勤めよう。」
 白羊宮を通過する。
「ん?白羊宮を通過したようだ。ここは無人の宮であったか?」
ラダマンティスが聞くと、
「何。12宮は前回のハデス様との聖戦でほとんど壊滅狂態のはず。生き残った星矢どもも今はオリンポスの神殿に行ってしまっていないはず。陥落は目の前だ。」
 ミーノスがそういうと、ラダマンティスは何か不信な顔をしながらも、白羊宮を後にした。


 3巨頭がようやく通り過ぎた頃、完全に小宇宙を消していた貴鬼が目を覚ました。
「しまった!思わず寝てしまったか!?」
 貴鬼が後悔してももう遅い。貴鬼はあわてて白羊宮を後に金牛宮へと向かおうとした。
「大急ぎ〜!!」
 駆け出そうとしたが、何かにぶち当たった。それは大きな男だった。
「ちょっとまった。ここらへんに冥界の使者がやってこなかったか?」
 貴鬼はあまりのことにわけが分かってなかったが、どうやらこの男は寝過ごした間に通り過ぎていった何者かを追跡しているようであった。
「待て!!おいらがここで寝過ごしている間に何があったかは知らないが、キミはおいらたち聖闘士の味方なのか敵なのか?それがはっきりしないうちはここを通すわけにはいかないよ。」
 貴鬼がそういうと男は答えた。
「敵でもある。しかし、いまはキミが追っている抜かれてしまった3人を追いかけるという意味では味方かもしれんな。」
「どういうことだ!!」
 貴鬼はなおも困惑する。ここを上り詰めようとするものはすべて敵であるはずだが、自らが倒したフォボスと先ほど通り過ぎていった3人とになんの差があるというのだ。
「まあ、いい。では味方であるということは少なくとも見せておこう。」
 大男は、白羊宮の下から遅れてやってきた冥界の雑兵どもに向かって勢いよく拳を振り出した。

「グレートラリアート!!」

 冥界の雑兵たちは見事に倒れていく。貴鬼はあまりのことによく分からなかったが、少なくとも現時点では到底戦いにはなりそうもないので、金牛宮に向かい様子をみることにした。

 

---金牛宮
 冥界の3巨頭が到着する頃。金牛宮にも、一人の男が姿をあらわした。
「星矢。俺たちは今までお前らにばかり任せてきたが、おれだってアテナの聖闘士だ。ここでやってくるオリンポスの敵どもを必ずや倒して見せるぞ!!」
 大柄な男。そして、金牛宮に牡牛の形をして収まるタウラスの聖衣の前に立ち、それに念を入れてみる。
「だめだ。このオレではこの聖衣を纏うことはできない。星矢たちと一体何が違うっていうんだ!!」
 男が失望に駆られていると、すぐに後ろから人の気配がし始める。
「どうやら、到着したようだな。」
 冥界の3巨頭が到着した。
「だれかと思えば、」と、アイアコス。
「冥界にも来れずに星矢の姉を護っていたひよっこか。」とミーノス。
「そこをどけ!!怪我したくなければな!!」
 最後にラダマンティスが言うと、冥界の3巨頭は足はやにそこを立ち去ろうとする。
 しかし、
「ここは通さない。かつてこの金牛宮を護ったアルデバランの名にかけてな。」
 そこにたっていた男は、アルデバランではなかった。それは青銅聖闘士の檄だった。
「ほう。この俺たちと青銅聖闘士がやりあうのか?」
「おもしろいだろう。こてんぱんにのしてくれる。」
 ラダマンティスはマントを投げ捨てると、檄に向かった。
「おれだって、星矢たちと同じだってことを教えてやるぜ!!」
 こうして、金牛宮でも再び戦いの幕が切って落とされた。

 


檄に勝ち目はあるのか!?

第14話
大熊座
VS天猛星・ラダマンティス!!の巻
キミは小宇宙を感じたことがあるか!?
感想どしどしお待ちしています!


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