聖闘士 星矢

〜Last Chapter The Olympus〜


17話「天貴星グリフォンのミーノス VS
      南風サイクロンのオリッサ!!の巻


 

「貴鬼君!!君は一足先に上の宮に向かいこの状況を他の聖闘士に伝えるんだ!!」
 オリッサはそういうと、再び2人に対して向き合った。そして貴鬼は双児宮を抜け、巨蟹宮へ向かおうとした。
「そうはいくか!!」
 アイアコスはその姿を見て、貴鬼に向かって拳を突き出した。しかし、
「残念だが、君達の相手は私がしよう。」
  そういってオリッサはアイアコスの前にすばやく回ると貴鬼に向けて繰り出された拳を抑えた。さすがの体格だけあってアイアコスの拳は下ろされた。
「そうだったな。まずはお前を片付けるのが先決だな!」
 アイアコスは拳を下ろされたことに若干不満を覚えながらもそうオリッサにいった。
「風闘士か。ヘルメスの申し子といったところか?」
 ミーノスはそういう。さらに続ける。
「オリンポス12神の監視役ヘルメスの申し子がここにこうして出向いてくるとは?何か調べねばならんことがあるのかな?」
 オリッサはそう聞かれて当然といった感じだったが、まるで聞かれることを待っていたかのように軽く笑みを浮かべた。
「フフフ…。まぁいろいろとな。残念だが、それ以上は答えることができん。そういうお前達はこのオリンポスの最終決戦のどさくさにまぎれて何をしようというのだ!!」
 オリッサはそう聞き返した。
「ハハハハ…。そうきたか!当然だな!!なぁに、俺たちの目的はこの12宮の聖闘士の抹殺。ただそれだけが目的だ。邪魔するものは排除するまでだ。」
 ミーノスは淡々と答えた。
「なるほど。それが真の目的とは当然思えんが。そうなら仕方がない。こちらも貴様らを倒さねば目的は達成できん。それではいくとするか!!」
 そう挑発されて、ミーノスとアイアコスはオリッサに対してかまえた。
「望むところだ!!」
 

 先に拳を繰り出したのは、なんとミーノスの方だった。
「食らえ!!

  コズミック マリオネーション!!」

 それを受け、オリッサは身動きが取れなくなる。ミーノスは自らの手と指を器用に動かすとオリッサはそれにあわせてより一層華麗に舞わされた。とてもあのごつい大男の舞とは思えぬほどに。
「ハハハハ。舞え舞え。私の手の内で。」
 しかしそうやすやすとミーノスの技を受け続けるオリッサではなかった。
「くっ!!こんなところで。」
 そういうとオリッサは懇親の力を込めるとミーノスの技に抗った。無駄なはずであった。
 しかし、意図もたやすくミーノスの技は解けた。
「バ、、、ばかな!!そうもたやすく私の技を破るとは!?」
 ミーノスは一瞬たじろぐふりをすると、アイアコスに合図を送った。
「食らえ!!ガルーダフラップ!!」
 アイアコスはそういってミーノスの技が解けかかったところへ技を繰り出した。技の解けかかったところへ、ガルーダフラップを与えても無駄であった。オリッサはミーノスの技を解くと、態勢を整え、ガルーダフラップに対して技を繰り出した。

 

「フローディング・デストラクション!!」

 

オリッサは両手を握り、左後ろから前に何かの念を押し出すように突き出した。その両手の先からは風のようなものが飛んできたかと思えば、それはただの風ではなかった。スコールにも勝る大豪雨と強風であった。
「大いなるガルーダの翼もこの大雨と強風では飛ぶことすら出来まい。」
「くそ!!」
 オリッサの繰り出した技にたじろぐ2人。しだいに暴風雨はその規模を増し、ついには、雨ではなく土砂まみれの洪水が2人に押し寄せた。
「もうだめか!」
 そうアイアコスはいうと、諦めて双児宮のはるか後方へと流されていく。
「ばかな!アイアコス。こんなところでやられる訳にはいかぬぞ!!」
 しかし、もう遅い。アイアコスははるか後方に流され、もはや見えなくなってしまった。
 「では食らえ!!貴様らに引導を渡してくれる!!

 

 フローディング・デストラクション!!」

 

オリッサは再び技を繰り出した。双児宮が水によって埋め尽くされた。
オリッサはその場に胡坐をかいて座り込む。オリッサ自身も水に埋もれてしまったようだが、まったく動じずに洪水が収まるのを待っていた。あたりには何も残されていなかった。
「どうやらおわったようだな。貴鬼君の元へ向かうとするか。」
 そういって、双児宮をあとにしようとした。
「フフフフフ…。」
 笑い声がした。
 そして、ミーノスがどこからともなく現れた。
「残念だが、貴様の技だけでこの私を葬り去ることはできん。」
 ミーノスは体の泥を払うとさらに言葉を続けた。
「残念だが、アイアコスは本当に流されてしまったよ。ゼウスの神衣とともにな!」
 オリッサは自分で気がついたようだが、自らの技でアイアコスを押し流し、双児宮を脱出させてしまったどころかゼウスの神衣まで奪われてしまったのだ。しかしオリッサはほくそえむ。
「なるほど。先ほどのコズミック マリオネーションが意図も容易くほどけたのはそういうわけか?」
 オリッサがそう答えると、ミーノスも小さく笑みを作りながら、
「そういうことだ!!残念だが、貴様ごときにかかわっているヒマは本当はないんだ。」
 ミーノスはそういった。
「だが、ミーノス。ここで一人になってしまっていいのかな?さっきのざまでは到底この私に勝つことは出来ぬぞ。」
 オリッサは淡々と言う。しかしミーノスも黙ってはいない。
「残念だが、我ら冥界3巨頭を甘く見ないでほしいな。先ほどのコズミック マリオネーションが私の全てだと勘違いされては困るな。」
 オリッサはそれを聞いて再び対峙した。
「今度こそしかと受けてみよ!!

 

コズミック マリオネーション!!」

 

 技は再びオリッサに決まる。今度は先ほどよりも強い力でオリッサを締め付ける。そして前とは違う激しいダンスを繰り広げた。
「ワンツー、ワンツー…」

ミーノスはそういいながら手と指を使ってオリッサを躍らせた。
「フフフ・・なかなかよいステップではないか!!」
 ミーノスはそういって、オリッサを挑発する。しかし、オリッサは先ほどと同じように力を込めて技を解こうとしても一向に緩まらない。むしろその締め付けは強くなる一方であった。
「ばかめ。貴様は力馬鹿か!?」
 ミーノスは華麗な指裁きでオリッサを操りながら、いった
「絡まった紐を力ずくで解こうとすれば余計絡まるのは5歳の子供でもわかることだぞ!!」
 そうミーノスは言う。オリッサは今度は大きく息を吐くと、体をあらぬ方向へと捻じ曲げた。予想と反した方向に体を動かすものだから、ミーノスは驚いてしまった。しかし、オリッサは通常曲がるはずのない方向へ体をさらに曲げていくとついにはたこのようになり、ミーノスの技を解いてしまった。
「ば、、ばかな!!」
 ミーノスは愕然とした。
「私の生まれたインドという国には古い習慣がある。ヨーガと称されるものだ。」
 ミーノスは驚く。オリッサは続ける。
「ヨーガを学んだものであれば、君の予想をはるかに反する動きをすることも十分可能になる。」
 しかし、ミーノスはまだ驚きを隠せない。コズミックマリオネーションは実際の糸を用いてかける技ではない。催眠術と同じもので相手の感覚を麻痺させる技だ。
「ヨーガは精神修養だ。催眠術自体もヨーガからすれば似たようなものだ。そうであれば、それを崩すことなど意図も容易いことだな?」
 オリッサはそういうと、構えた。
 「おとなしく地獄に帰りたまえ!!

 

フローディング・デストラクション!!!」

 

オリッサは三度、技を繰り出した。ミーノスはそのあまりの暴風雨に耐えていたが、次第に悪化し滝のように流れる土砂流れはミーノスの体をすぐにでも押し流してしまいそうになった。
「くっ!!さすがの風闘士の技だ!!このままでは、、、」
 ミーノスはそういうと最後の力を振り絞り技を繰り出した。
「食らえ!!グリフォンの一撃!!

 

 グリフォン!!ファング!!!」

 

すばやい爪のようなものの切っ先がオリッサを襲う。しかし、その技を間一髪のところでよけると、オリッサはさらに風雨の強さを増した。
「まだまだやられるわけにはいくまい!!」
 そうミーノスは言うと再びグリフォンファングを繰り出した。
「何度やっても貴様の技は通用しない。」
 オリッサは繰り出されたグリフォンの爪を軽々とよけた。よけたつもりであったが、ほんのわずかな隙でグリフォンの爪はオリッサの左腕をかすっていた。
「ちぃ!!よけ切れなかったか!しかし、その程度の技で何をしようというのだ!?」
  ミーノスは足場のおぼつかない苦しい状況の中でわずかに笑みを浮かべるとオリッサに対し答えた。
「グリフォンファングはただの爪による切裂攻撃ではない!!

 

食らえ!!コズミックマリオネーション!!」

 

ミーノスの技が再び襲う。今度もオリッサはヨーガを使って脱出するはずであった。しかし、
「おかしい、体の力がしだいに抜けていく!どういうことだ!?」
 オリッサは先ほどから気が散ってまともに精神を統一できない。だからいくらヨーガによってコズミックマリオネーションから抜け出そうとしても不可能なのだ。
「ついに、グリフォンの毒にかかったな!?コズミックマリオネーションが精神を操る技であれば、グリフォンファングは精神かく乱のための技。やすやすとこの連携攻撃を抜け出すことはできん!!」
 ミーノスは体の体温をしだいにうばわれなおかつその場から流されそうになりながら、必死でコズミックマリオネーションを続けた。
 オリッサはグリフォンの爪をよけきれなかったことに後悔した。しかしもう遅い。
「こうなれば、さらにこの洪水の威力を上げるしかあるまい。」
 そういうとオリッサはまるでアシュラのように手を広く上げると、語り始めた。
「インドでは毎年のようにサイクロンによる洪水の被害を受ける。多くの死人を出しながらもこれによってうける恩恵も多い。洪水によって運ばれる土砂は大地に恵みを与えるのだ!!そう。大いなる破壊の後には新しい生命の誕生が待っている。そして、その破壊をつかさどる神こそ、インドヒンズーの神『シヴァ』によるものだ。」
 そういうとオリッサは精神の散乱が激しく進展しないうちに最後の技を繰り出した。
「食らえ!!

 

シヴァの一撃!!フローディングディスアスター!!!」


 オリッサの技によってもはや天変地異にも勝るとも劣らぬ氾濫が起こる。ミーノスは最後の一線でついにその禁断のシヴァの一撃によって体温を奪われ、その場に崩れ落ちると洪水によってどこかへ流されてしまった。


「エ、、、、リ、、、、、ス、、、、、さ、、、、。」


 ミーノスの息が耐えるその姿を捉えると、オリッサはシヴァの体勢から戻り、以前のように胡坐をかくとその土砂流れの中に身をおき、洪水が収まるまでしばし待った。

 

「ついに終わったか。それでは私は貴鬼君と合流し、アイアコスから神衣を奪い返すとするか?」
 そうオリッサはつぶやき、双児宮を抜けた。

 

-------白羊宮
 「おかしいな?たしかこの宮には白羊宮の聖闘士貴鬼というものがいるはず。どうしたということか。」
 先ほどのオリッサよりもごついと思える男がそうつぶやいた。それはアルデバランや檄並みの体格を誇る男で、アメリカかメキシコのあたりから来たかのような西洋系の大男であった。体には先ほどのオリッサがまとっていたような、エメラルドグリーンの風衣(ブリーズローブ)をまとっていた。男がそうつぶやいたあと男の後ろから2人の男が現れた。
「本来ならばこの宮でオリッサと合流することになっていたはずだが、」
 後ろにいた男の左の方。色白で金髪、青い目を持つ北方から来たような男。からだは細身の男がそう続けた。すると最後に残っていた黒髪でひょろっとした目つきの悪い猫背の男が白羊宮の奥からわずかに流れる水を指差し、こう答えた。
「見ろ!奥から濁った水が流れ出ている。オリッサは順当に12宮を上り続けている。その証拠だ。」
 その水の後を見て、はじめの2人の男も納得したように笑みを浮かべた。
「そのようだな!!われわれも急ぐとしよう。すでに12宮の火時計は双児宮の火が消え、巨蟹宮の火までくすぶりはじめている。急がねばならんな。」

3人の男はそういうと12宮を進んでいった。

 


冥界3巨頭VS風闘士オリッサの死闘!
双児宮になぜゼウスの神衣が!?

第18話
ヘルメスの申し子たち!!の巻
キミは小宇宙を感じたことがあるか!?
感想どしどしお待ちしています!


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