聖闘士 星矢

〜Last Chapter The Olympus〜


18話「ヘルメスの申し子たち!!の巻


 

「ミーノス。。。ミーノスよ、、、」
 どこからともなく声が聞こえる。オリッサとの死闘で、その究極の技「フローディングディスアスター」によってミーノスは倒された。そして、12宮のいずこともなく流されてしまった。ミーノスの体は冷たく冷え、まさに屍と同様であった。しかし、聖闘士を倒すということ。そしてそれに隠された目的を達することなく半ばで息絶えることはミーノスにはあまりにも無念であった。その強い想いは小宇宙として12宮のある一角に淀んでいた。双児宮の外れ、巨蟹宮と双児宮の間に位置するその小さな一角は、蟹座のデスマスク、双子座のサガが使う技を象徴するかのように、異次元を思わせるかのごとく不可思議な場所であった。
 星空が見える。ミーノスの屍が横たわるそのうらびれた草むらの一角からは満面の星空が見えた。もしそこに誰かがいたらそのあまりの宇宙の近さに感嘆の声を上げたに違いない。
 ふと、星空の一角がひずむ。そのひずみの中心には大きな星雲が見えていたが、その星雲もたちまちのうちに大きく、望遠鏡から覗いたかのように見えるとそのまま、そのひずみの中から一人の女性が現れた。
 金色に美しく輝く髪。青い瞳。細く白くそして端正なその顔立ちにはまだ少女の面影が残る女であった。また死人のように透き通る肌を持つかと思えば、青白いその唇にはうっすらと紅のように紅い口紅が引かれていた。そして、その右手には何かの装飾が施された美しい短剣が握られていた。
「ミーノスよ。わが僕、ミーノスよ。何ゆえこのような場所で命を落としたのだ。」
 女は、ミーノスに対して語りかけた。答えない。当然である。ミーノスの生命はオリッサの技によって絶たれてしまったのだから。
 女がミーノスの背中を持ち上げると草むらの一角に座らせた。そしてそのままミーノスの体を抱きかかえようとした。華奢な女性の力で冥衣を纏った冥闘士を持ち上げられるはずはないが、体はすんなりと持ち上げられた。そして、
「我がいとしいミーノスよ。再度私のために蘇りなさい。そして今度こそ、アテナの、あの憎らしいアテナの尺杖を取り返してくるのです。」
 そういうと、抱きかかえられた体はふわりと浮き上がった。そして、女の青い目が一瞬赤く光ったかと思うと、ミーノスの体は強くのけぞり、そして地面にばったりと落ちた。
「…。」
 ミーノスの体に生命が吹き込まれた。地面に打ち付けられると、ミーノスの左胸からははっきりと心臓の音が聞こえていた。
「…ん…んん…。」
 ミーノスは目を覚ます。そして、そばに立つ女を見つめた。そして、驚いたかのようにその女に問いかけた。
「エリー!エリーじゃないか!!どうしたんだ!!こんなところで。」
 唐突に呼び止められた女はそのミーノスの反応に驚いたが、女性もまた先ほどとは様子が違っていた。青白かった顔には生気が宿り、青くそして怪しげな紅をつけられた唇は淡いピンクに変わっていた。そして、健気にミーノスの傍に近づき、ミーノスの腕に抱きついた。
「兄様。聞いて、私、この大きな神殿の奥に忘れ物をしてしまったの。でも、あそこにいる殿方たちが私をいじめて返してくれないの?お兄様取替えしてきてくださらない?」
 エリーと呼ばれたその女はそうミーノスに頼むとミーノスは軽く笑いながら答えた。
「なんだ。エリー。またお前、近所の男の子にいじめられているのかい?仕方がない。この俺が取り返してきてあげよう。」
 ミーノスはそういうと、再び12宮へと向かっていった。
しばらくすると、女は再び先ほどの青白い肌、そして紅い口紅へと変わっていた。そして、女が現れたその草むらには先ほどの空間のひずみが突然現れ、そこから何人もの冥闘士が現れた。最後に天哭星ハーピーのバレンタインが現れると、集まった冥闘士たちに向かって叫んだ。
「行け!お前達!!ミーノス様、アイアコス様のあとに続くのだ!!そして、大地をエリス様の下へ!!!」
 そういうと、冥闘士たちは12宮へと向かっていった。

 

―――――金牛宮付近
「しかし、金牛宮まで来たって言うのに人っ子一人いないなぁ、ノエル!」
 風衣を着た大男は、近くにいた金髪の青年の方に語りかけた。すると、予期せぬひょろっとした猫背の男の方から答えは返ってきた。
「順調にことがすすんでいる証拠だぞ。ヒヒヒヒ。」
 大男はそれを聞くと、すぐに答えた。
「やい、チョンヤン!俺はノエルに聞いたんだぜ!なんでお前が答えるんだよ。」
 するとすぐにノエルと呼ばれていた男がそれに割って入った。
「アロルド。別にいいじゃないか。実際そのとおりだと思うが…。」
 大男は、
「そうか、まあ、そうだろうな。それにしてもお前の無口はよくねえよ。」
 とそんなこんな言っているうちに、早くも双児宮に到着してしまった。
「おいおい、だべってるだけで双児宮についちまったな。」
「用心してかかれ。ここから上は小宇宙の密度が高い。かなりの闘士が集まってきている証拠だ。」
 「そのようでやんすね。気をつけるでやんすよ。」
 3人はそういって、双児宮に足を踏み入れた。
「!?」
 3人は一斉に驚いた。目の前に少女が倒れている。そして、片手には短剣が握られていた。
「なんでこんなところに少女が…」
 アロルドはつぶやいた。それは後ろに続く2人も同様に思った。
 さらに近づく。近づくとそれは先ほどのエリーと呼ばれていた少女だった。ノエルは慌てて少女に近づくと、額を触った。
{ひどい熱だ!!こんなところまで誰を追ってきたのか知らんが急いでどこかで休ませないと。。。}
「そのようだな。しかもひどい汗だ。よほど何かにうなされているのか?」
 アロルドは言った。
「おたくら〜。あったでやんすよ。」
 チョンヤンは、双児宮に備え付けられている黄金聖闘士用の小さな宿泊室を指差した・
「おお、ありがたい。」
 そういうと、ノエルは急いで双児宮の宿泊室のベットへと少女を運んだ。
「…んん……」
 しばらくして少女が意識を取り戻す。
「どうやら、気がついたみたいだ。」
 ノエルはそれを見て安心したが、
「…兄様を…、ううん、ミーノス様をたす…け…て…」
 突然少女が何かをつぶやいた。
「誰だ!?ミーノスとは?」
 アロルドがいう。
「昔、ギリシアの神話に出てきたミーノス王と同じ名だな。」
 そうチョンヤンがいう。
「おそらく、冥界の大判官のことだな。冥闘士がすでにここ12宮にきているということか?」
 ノエルはそう分析した。
「えっ!?冥闘士がなんでこんなところに?ハデス一派は前回のアテナとの聖戦でやぶれたんじゃ…」
 アロルドはわけのわからないことを言う。
「おいおい、勘弁してくれよ。冥闘士は争いの女神エリスの封印が解けたことで、復活してきてるでやんすよ。」
 チョンヤンはあきれたように答えた。
「そのとおりだアロルド。今回の目的は聖闘士の抹殺が真の目的ではない。アテナの尺丈をエリスにわたさぬことが目的。そうヘルメス様に言われているだろう。」
 ノエルはそう付け加えた。
「そうだったな。争いの女神がアテナの尺丈を持ったらば大変なことになる。」
 アロルドは思い出したようにいう。
「そうだ。しかしこの行動は内密なものだ。決して他の12神には知られてはならぬ。」
 ノエルは続ける。
「今回の争いのにおいをエリスに向けた本人が12神の中にいるということは…」
 ノエルはふいとエリーの方を向くと、その額に流れる汗を自らだしたハンカチでぬぐってやるとこう答えた。
「そのミーノス殿はどこにいるんだい?」
「ミーノス様は私のお庭に。すぐそこに、、、出て行ったの。。。たすけて…」
 とよくわからないことを言うと再び双児宮のベッドで意識を失ってしまった。そして、さっきまでかたくなに離さなかった短剣がコロンとベッドの下におちた。
「なんだこの短剣は?」
 アロルドがそれを拾い上げる。
「大事にしていたようでやんすね。

 チョンヤンがいう。
「しかし、変な気をおこされては困る。ここはわれわれが預かっておこう。」
 ノエルはそういうと、再びエリーの方を見た。

「ミーノス。とりあえずはわれわれの敵らしいことはわかってしまった。しかし、この少女が気がかりだ。とりあえずはミーノスという男を捜すのがさきだろう。」
 ノエルは自らが羽織っていたマントを翻し、ノエルにかけると他の2人を促し部屋からでていった。

 

―――――巨蟹宮
冥界3巨頭のアイアコスは金牛宮、双児宮においてその2人を失ってしまった。そもそも、アイアコスがここ巨蟹宮までたどり着いたのもオリッサの技を利用したミーノスの機転の産物であったが、そのミーノスのためにもここはなんとしても12宮を上り詰めねばならぬ。
「まだ、巨蟹宮か。しかもやっとのこと。。。チィ!」
 アイアコスは舌打ちした。12宮のうちようやく4番目の宮にたどり着くのである。ほかの冥闘士がぞくぞくと来たとしても、冥界3巨頭が倒せなければ全滅といっても過言ではない。
「ばかな。あれほどハデス様との聖戦で壊滅状態になった聖闘士のどこにこんな力が…。」
 考えれば考えるほど情けなくなってくる。
 そうこう想いにふけっているうちに巨蟹宮に足を踏み入れていた。そして、中にはやはり聖闘士が潜んでいた。もはや泣きっ面に蜂といった惨事だが、アイアコスとてこんあところでやられるわけにはいかない。
「おい!やってきたぞ!!」
「戦う相手が来たようだな!」
「血が騒ぐぜ!!」
「せいぜい楽しませてくれよ。」
 やけに威勢のいい男達はあの一輝がデスクイーンで育てたアルゴルの4戦士だった。
「誰だ!!お前達は!?」
 アイアコスがアルゴルの4戦士に尋ねた。
「それはこっちの台詞だな。」
 オデッセウスはそういった。
「ばかな。お前達になど名乗る名はない。」
 アイアコスはそういう。激昂してしまっては相手のペースに乗せられるだけ。ここは冷静に対処しようと心がけた。しかしアルゴルの戦士は意図も容易く名乗り始めた。
「しゃあねぇな。俺は竜骨座のオデッセウス!」
「私は船尾座のテレマコス!」
「俺は帆座のテレゴノス!!」
「俺は羅針盤座のエウリュロコス!!」
 そしてすぐさま戦闘態勢に入る。そして、
「食らえ!!クリムゾンズブリーズ!!」
 オデッセウスがいの一番に技を繰り出す。しかし、アイアコスは生り立てのひよっこお聖闘士に負けるはずがない。
「ばかめ!その程度の技でこの冥界3巨頭が倒せると思っているのか!?」
 そして軽く手を広げると、


「  ガルーダ フラァァァップ!!」


技を繰り出した。アルゴルの聖闘士は簡単にふっ飛ばされると、地面に倒れた。
「これでいいのだ!!このとおりにいかなければな。」
 そうアイアコスは言うと、巨蟹宮を去ろうとした。しかし、
「待て!!まだ終わっちゃいないぞ!!」
 その中で一人、テレマコスのみが立ち上がった。
 そして、
「他の奴らと違い私は冷静な方でね。」
そしてそれを見ると、
「なるほど。お前だけはかわいがってやろう…」
 アイアコスはそういうと、テレマコスに対して戦闘姿勢を見せた。

 

「食らえ!!

       ギャラクティカイリュージョン!!」
 


エリーとミーノスの関係は?
テレマコスに待ち受ける試練とは!?

第19話
船尾座テレマコスVS天雄星ガルーダのアイアコス!!の巻
キミは小宇宙を感じたことがあるか!?
感想どしどしお待ちしています!


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