聖闘士 星矢

LAST CHAPTER The Olympus


 

第2話 神々の宴!!の巻

 

オリンポス山!

それは、ギリシアの中部に位置する、まさにギリシアの中心!

古くから、神々の住む山として多くのものにあがめられてきた。

神々は、一二人!

主神ゼウスを中心とする神々の長たち。

その中には、アテナの名もあるのだ!!

 

「つきましたよ。」

 リムジンが、ギリシアきっての高峰オリンポス山の上にさらに高くそそり立つ、神殿風の建物の前に停車した。

 ゆっくりとリムジンのドアが開けられる。そして、ドアの前には、怪しげなマントに身を包んだ男が待っていた。

「沙織さま。お待ちしておりました。いや、今回の場合、戦いの神アテナと呼んだほうがよろしいかもしれませんな。フォフォフォ」

マントの男は、沙織の手を引っ張って、屋敷の中に連れて行こうとした。沙織は、すかさず男から手を解き、ラカーィユに向かって尋ねた。

「これは一体どういうことですか。私は、グラード財団の統括として、今回のパーティーに出席するはず。あなた方は一体何者なのです。」

ラカーィユは、まるでわかっていないとでも言いたそうに両手を軽く上げ、

「ですから、今回出席されている方々は、世界でも屈指の財団、企業家の方ばかり。今回はギリシアの12神になぞらえてパーティーをすることは、オリンポスでパーティーをやると言ったときに、もはやわかっていたはず。あなたは、アテナとしてそのパーティーに出席されるのですよ。何かご不満でも?」

「私の思い違いでした。ありがとう。それでは、パーティーに行きましょう。」

沙織はマントの男に連れられ屋敷に向かった。

 

 屋敷の入り口には、「宴の間」と書かれていた。重く頑丈な鋼でできた扉を開けると、そこは、大理石で作られた円上の広間になっていた。さらに、入り口から見て、手前側の東西に、上へとあがる階段がある。階段の上は、ここからではよくわからないが、一二個の客室が用意されているように見える。沙織がきょろきょろとあたりを見まわしていると、マントの男がそれに気づき、

「ここから、左の階段を昇って、一番奥の部屋が、アテナさまの部屋になっております。パーティーの支度が整い次第およびしますので、部屋でしばしお休み下さい。それでは。」

 男はいうと、まるで機械仕掛けの人形のようにまっすぐと、会場の向こうに向かって消えていった。

「私は、右の手前から、5つめのバッカスの部屋です。ここで、お別れですね。あとでまた会いましょう。」

ラカーィユはいうと、右の階段を昇っていった。

 沙織は、階段を昇り、2階の客室の表札を眺める。

 手前から、ヘラ、ポセイドン、アルテミス、アフロディテ、デメテル、アテナと書いてある。一通り、目を通して、自室に向かう。

 自室のかぎは開いており、中のベッドのわきにある、小さなテーブルの上に、この部屋のかぎが置いてあった。沙織は、部屋に入り、部屋のかぎを閉めると、部屋の隅においてある、籐でできた椅子に腰をかけた。

「この宴会で、私はアテナの役を演じる?何かの偶然?いや、そんな偶然あるはずはない。一体このパーティーは何なの?分からない。私のアテナとしての役目は、前回のハーデスとの聖戦で終ったはずでは。」

トントン。誰かが部屋をノックする音が聞こえた。

トントン。再び誰かがドアをノックする。

「はい。」沙織は慌ててそのノックの主に答えた。

「私です。ジュリアンです。」

「ジュリアン?海商王ジュリアン=ソロさんですか?」

沙織は、ふと何かを思い出したように尋ねた。

「そうです。」

「今、かぎを外しますわ。」

沙織は慌ててドアのかぎを外し、扉を開いた。

「お久しぶりです。ミス・サオリ。」

立っていたのは、やはり、海商王ジュリアン=ソロ、その人であった。青い髪、眼を持ち、長身の若者で、体格もしっかりしている。しかし、眉目秀麗、頭脳明晰の人物で、まさに7つの海をまたにかけ財を築いた海商王ソロ家の後継ぎにふさわしかった。

「ジュリアン、あなたが来ているとは聞いていたけど。やはり、あなたは、ポセイドンとしてこの祝賀会に参加しているの?」

沙織が真剣な顔で尋ねると、ジュリアンは照れながら答えた。

「そうなんですよ。あなたにそのように言って戴けるとは光栄です。聞けば、サオリ。あなたは、アテナとして参加されているそうですね。世界きっての財団グラード財団の統括。そして、気高いまでに美しいあなたにこそふさわしい。ハハハハハ」

 ジュリアンは、前回の聖戦のことをまるで、覚えていないかのような口調で言うと、軽快に笑った。

 沙織は、その姿を見て、思わずあきれてしまったが、無理もない。前回の聖戦では、ジュリアンも成長しきっておらず、ほとんどポセイドンの魂に操られていたといっても過言ではないのだ。そのため、実際に、ポセイドンとして君臨していた記憶は完全に消え去っている。それでも、沙織は、何とかこの状況を、克明に伝えたくて、ジュリアンを部屋の中に導き入れた。

「ジュリアン。お話しがあります。中に入って。」

 

「話しというのは、他でもありません。ジュリアン、あなたは、以前、本当のポセイドンであった記憶がありませんか?」

沙織は真剣な面持ちで尋ねた。

「私が本当のポセイドン?」

ジュリアンはまだ以前の記憶が戻っていない。

「ええ、そうです。あなたは、アテナである私と、海底神殿において戦ったのです。」

「あなたがアテナで、私がポセイドン?そして、海底神殿において戦った仲であると?」

ジュリアンは、座っていた籐の椅子から立ちあがり、困ったように答えた。

「まったく訳がわかりません。これは、この祝賀会のアトラクションかなにかですか。私はあなたにそそのかされているとしか思えません。」

 沙織は、話しがほとほと伝わらなくて困った。ポセイドンの魂は、前回の聖戦で、沙織自らがアテナのつぼに封印したのだ。

「何とか思い出してもらえないものでしょうか?」

沙織は、頼みいるようにジュリアンに訴えた。

「そうですか。わかりました。7年前、16歳の時に、一回記憶を失いかけたことがあります。そのときのことは、何か悪夢のような気がして思い出すのをやめていましたが、何かの手がかりになるかもしれません。少し、思い出してみましょう。」

言うと、ジュリアンは、まるで瞑想でもしているかのように静まり、考え始めた。

「紅色の甲冑をまとった美しい女性が、私を深き海に連れていく。そこまでは、私の記憶がある。その後は…、その後は、海岸にのりあげていたのを思い出す。その間は、私の記憶はまるでない。海におぼれ、気を失っていたのだから、当然のような気もしますが。」

沙織は、ジュリアンが考えているのを見守った。

「後少し、そのあと海底神殿にいったのを覚えていませんか。」

「海底神殿?深き海の底。何かがある?何だ?神殿。やはり、先ほどの女性が横にたっている?夢か?この後は…。」

トントン。再びノックをする音がする。

「ジュリアン様は中においででしょうか?」

女性のような高い声がした。

「かぎは開いています。どうぞ、お入りになって。」

「それでは。失礼します。」

 ドアが開き、外から、入ってきた男は、前回のポセイドンとの聖戦で、セイレーンの海闘士を務めたソレントその人であった。

「これは、沙織お嬢さま。お久しぶりです。前回のアレ依頼ですね。」

ソレントはすべてを分かったように、沙織たちの様子を見た。

「沙織お嬢様。今回のことは、私にお任せ下さい。ジュリアン様は、ポセイドンの仮の器。今下手に刺激を与えれば、逆にあなたの敵となって、向ってくるでしょう。それに、今回のこの宴、まだ、そのような神懸りなイベントと決まったわけではありません。聞けば、今回の主神ゼウス役を演じる方も、現在通信衛星とパソコンのネットワークビジネスを中心に世界有数の企業へと成長したミクロソフトの会長ということです。この手の仮装が好きなのかもしれませんよ。ここは、いったん、部屋に戻り、待機させてくさい。私どもも、今日の宴で、披露する演目のリハーサルがありますので、これにて失礼します。」

いうと、ソレントはジュリアンを連れ、部屋に戻ろうとする。

「ソレント、まだ沙織との話しが済んでいないんだが。」

「後の宴で、十分話すことができますよ。それよりも、宴上で、私どもの演奏が恥じをかくようなことがあったら大変です。すぐにお部屋に戻りましょう。」

ジュリアンはばつが悪そうに、自分の部屋に戻っていった。

 

小一時間ほどして、先ほどのマントの男がやってきた。

「宴の準備ができました。1階の席は、この部屋の並びと同じように用意されています。それでは、参りましょう。」

 マントの男と共に、1階に向って階段を降りて行く。その他の客人も、ほぼ同じ時間に呼び出されたらしく、次々と部屋から降りてくる。だまってついていくと、反対から、向ってくるラカーィユと目が合う。ラカーィユもこちらに気づくと、軽くウィンクをして微笑んだ。あっけらかんとしているが、ラカーィユは、今回の宴の真相を知っているのだろうか?先ほどのときの感じからすると、とても気づいているとは思えない。それに、主神ゼウス役を演じる男というのは何者であろう。近頃、流行りのネットワーク関係の会長というが。

 そんなことを考えているうちに、席につく。沙織は、目の前に並ぶ食事を眺めるフリをしながら、ざっと一二人の席を見まわす。ラカーィユ、ジュリアンは座っている。その他、それぞれの担当の者らしき、紳士淑女が座っている。しかし、もっとも上座に位置するゼウスとハーデスの席には、まだ誰も座っていない。不思議がって、眺めていると、隣に座るデメテル役の女性が話し掛けてきた。

「どうかされましたか?」

「いえ、何も。」

デメテル役を演じる女性は、沙織とさほど、年齢も変わらないようであった。

「今回のこの宴、この有名なミクロソフト社の社長が企画した合同コンパ。いわば、成金のお見合い見たいなものなのよ。ジュリアン様をはじめとして、ラカーィユさま。それに、企画のミクロソフトの会長ゼノンさまもなかなかの美男子という噂。私も、レストランの冷凍食品の交易なんていう婆くさい仕事してたけど、金貯めとくといいことってあるのね!ああ、そういえば言い忘れてたわね。私スピカ!よろしく。」

「よろしく」沙織は答えた。

 とても、実際のデメテルとは思えない軽軽しい発言。しかも、宴の招待は合同お見合い、いわゆるねるトンって奴なのだ。とんでもないイベントに参加させられたものだと思い頭を抱えていると、反対に座るラカーィユがニヤニヤとこちらを眺めている。

「これが、ねらいだったのですね。」

「ご名答!」

ラカーィユは、椅子にふんぞりかえりながら、テーブルクロスをクルクルとまわした。

「ラカーィユ。あんたはわたしのものよ。アテナになんか負けないんだから。」

 デメテルのさらに隣に座るアフロディテ役の女性が、ラカーィユに向って尋ねた。

その女性は見たことがある、どころの騒ぎではない。世界でも、ナンバーワンモデルといわれるスーパーモデルのマドーネだ。170センチを上回る身長。スレンダーなボディ。女性であれば誰もがあこがれるスタイルだ。さらに、話しによれば、実際のアフロディテ同様、男性関係が激しいらしく、1ヶ月に3人の男性と付き合った経験もあったようだ。

「アテナ。あなた、ちょっとかわいいからって調子に乗らないことね。今回の祝賀会、ハーデスが参加してないから、男が6人、女性が5人で、男が一人余るのよ。でも、どうせ私のところに言い寄ってくるはずだから、あなたには、私の前に座っているあの不細工な男がお似合いね。」

 マドーネはいうと、丁度反対に座る男を指差した。男はマドーネに見られて、恥ずかしそうに会釈した。

「なあに、勘違いしてんだか。あんたなんか、相手にしてないっていうのに。」

「言いすぎよ。マドーネ。」さすがに、あきれたスピカが言った。

「いいのよ。どうせ、何も言えないんだから。」

マドーネはプイとそっぽを向くと、今度は沙織がアフロディテの前に座る男に話し掛けた。

「あなたは、何をなさっている方なのですか?」

アフロディテの前に座るヘパイストス役の男が答えた。

「私は、ミクロソフト社のCPUとモーターの下請けをやっております。」

「なあんだ。ゼノンの下なんじゃない。結局あんたダメじゃない。」

マドーネは言った。しかし沙織は、

「ミクロソフト社のCPUとモーターを。ミクロソフト社の小型パソコンが普及し、市民レベルの持ち物になったのは、あの小さなCPUとモーターのおかげだと、きいたことがあります。あなたは神話のヘパイストス同様、ゼウスを支える名大工なのですね。」

「もったいないお言葉です。遅れ馳せながら、私はへインと言うものです。どうかお見知りおきを。」へインは答えた。

「おお。なんと心やさしい!やっぱり一番はアテナのミス・サオリだ!」

反対側の男性陣が盛り上がっている。それを見て、マドーネは

「城戸沙織。癪に障る奴ね。」と、悔しがっていた。

 

チリンチリン。ベルの音がする。

「2000年、ミレニアム祝賀会代表ゼノンさま、入場!」

 入り口の扉と丁度反対側に位置する扉が、ギーっと開く。そして中から、一人の男が出てきた。

「これは、みなさま。お集まり戴きなによりです。」

さらに、男は宴上に近づく。沙織はゼノンというその男を目を凝らしてみた。

そこに見た男の顔は、なんと見覚えのあるものだった。

「あなたは…

 ジェミニのサガ!!」


 

突如現れた死んだはずのジェミニのサガ。果たして本人なのか?

第三回 射手座の黄金聖闘士!!の巻

キミは小宇宙を感じたことがあるか!?

感想どしどしお待ちしてます!


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